井手上慎一周回誤認事件

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本項では、1981年12月30日笠松競馬場で行われた第10回東海ゴールドカップで、ダイサンフジタカ号に騎乗した愛知県競馬組合所属の騎手・井手上慎一が周回を誤認した事象について記述する。

背景[編集]

東海ゴールドカップは、笠松競馬場で毎年年末年始に行われる競馬重賞競走であり、2019年現在は東海地区のグレードでSPIに格付けされている。1981年当時の施行距離は笠松競馬場最長の2500メートルで、ゴール板を3度通過・コースを2周してゴールすることとなっていた。スタート地点が同じで周回数の1周少ない1400メートル戦が存在していた。

東海地区における1年を締めくくるグランプリレースで、当時の1着賞金は1300万円と現在の5倍以上の賞金を誇る一大レースであった。笠松競馬場には2万8千人を超える観衆が詰めかけたと言われている。有力候補であった愛知ヒカリデュール(翌年JRAに移籍しチャレンジカップ有馬記念を勝つ)が右前肢の跛行で発走当日に出走を取り消し、本命不在でのレースとなった。1番人気に押し出されたのが、この事件の主役となるダイサンフジタカで、東海菊花賞3着からの参戦であった。この馬もまた後に中央へ転出し当時の800万下条件(現・2勝クラス)を勝つ馬であり、岐阜日日新聞(現・岐阜新聞)本紙予想では「昨今の充実度がすごい。東海菊花賞を3着した実力が爆発しそう」と能力を評価されている。

出走馬と枠順[編集]

1981年12月30日 笠松競馬第9競走 サラブレッド系特別オープン 第10回東海ゴールドカップ 馬場:良

枠番 馬番 競走馬名 斤量 騎手 調教師 オッズ(人気)
1 1 リュウアラナス 7 仙道光男 (笠松) (2人?)
2 2 [愛]シナノセイダイ 牡4 [愛]坂本敏美 [愛]安達小八
3 3 ヒミノチカラ 牡5 川原正一
4 4 ダイサンフジタカ 牡6 [愛]井手上慎一 (1人)
5 5 リードシャダイ 牡7 松原義夫 山嶋昇 (3人?)
6 6 ホウゾウキット 牡4 町野良隆 古賀土生
7 7 マッハレンジャー 牡7 安藤光彰 鷲見昌勇
8 8 [愛]ヒカリデュール 牡5 [愛]田中敏和 [愛]野島豊 出走取消
9 サンローレオー 牡6 52 安藤勝己 吉田秋好
  • 馬齢は何れも旧表記(数え年・現行表記に+1歳)。
  • [愛]は愛知(名古屋)所属。3号馬・4号馬は東海地区所属であることは確かだが笠松・名古屋どちらに所属していたかは不詳。
  • ハンデキャップ戦。負担斤量は9号馬を除き不詳。
  • オッズ・人気は4号馬の1番人気を除き不詳(2・3番人気は推定)。

レース展開[編集]

1周目の第4コーナーを回って2度目のホームストレッチに差し掛かり、ゴール板を過ぎたところでダイサンフジタカの鞍上・井手上の手が止まり手綱を緩めた。井手上は1400メートル戦と勘違いしたものと思われる。

減速したダイサンフジタカは後続に次々と抜かれ、レースに戻った時には既に余力はなかった。勝ったのはヒカリデュールと同枠の人気薄サンローレオーで、2着ヒミノチカラ、3着シナノセイダイ。結局ダイサンフジタカは5着で入線した。単勝式複勝式枠番号二連勝単式の3通りしか馬券発売のなかった時代にあって、枠連「3 - 8」の払戻金4970円はかなりの高配当であった。

暴動とその後の対応[編集]

本命馬が不可解な減速で着外に沈み、的中馬券「3 - 8」のオッズが投票締切直前に大口購入された、との風説を流布した観客がいたことなどから本競走に対する八百長疑惑がかけられ、続く最終10レースの終了時にはファン200人以上が管理事務所を取り囲んで説明を求めた。地方競馬全国協会の公正委員は「スピードを落としたのは井手上騎手のミスによるもので、地方競馬実施規則によるレース後の審議対象『落馬、走路妨害、着順』に該当しないのでレースは成立する」と結論づけたがファンは納得せず、一部は窓ガラスを割ったりゴミを燃やしたりするなど暴徒化。投げられた石で観客1人が負傷し、従業員約100人が競馬場内に缶詰めにされた。岐阜県警察機動隊や羽島警察署の警官150人が鎮圧に向かうも怒りは収まらず、最終的に深夜になっても居座った約100人は場外に強制排除され、この際警察官に暴行を働いた1人は公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕された。

井手上は笠松競馬場での無期限出場停止、名古屋競馬場での10日間の出場停止処分を課された。後に笠松での出場停止も解除されている。

参考文献[編集]