液体変速機
液体変速機 (えきたいへんそくき)とは、機関軸と駆動軸の両軸間に液体を密閉する個所や羽根車を設ける構造の変速機。
概要[編集]
管に油を密閉し、その中にある機関軸と駆動軸の両軸に羽根車を設置して羽根車の角度を変えることによって速度や力の大きさを変えることのできる変速機である。
内燃機関ではエンジン回転数がゼロであるとトルクもゼロになってしまい、駆動側が停止している場合はギヤを落としクラッチを用いてトルクを駆動速度に合わせて調整しなければならない。これには発動機側で発電機を回し駆動側でモーターを用いるなどして調整したりすることもできるが(電気式)、それはそれで機構が複雑になる。そこで、流体の圧力などを用いて発動機側から駆動側に動力を伝える機構が液体変速機であり、トルクコンバーター(トルコン)とも呼ばれる。
鉄道車両[編集]
ディーゼル機関車や気動車には、初期にはクラッチ操作を人力で行う機械式を採用していたが、導入当時は総括制御ができなかった[注 1]。
そのため、ディーゼルエンジンで発電機を回転し、その電力で直流電動機を駆動する電気式が登場したが、重量が嵩み、価格も高くなる欠点があった。
そこで登場したのが液体変速機を使用する液体式であった。1950年代に本格的に採用した日本国有鉄道では、許容される軸重が小さいこともあって蒸気機関車を駆逐して急速に普及し、1983年に国鉄DF50形ディーゼル機関車の引退によって日本国有鉄道のディーゼル車両は全て液体式に統一された。
国鉄末期には、直噴式機関の技術確立で旅客用気動車は進化したが、機関車はDE50を最後にディーゼル機関車の増備が抑えられて、大出力機関に対応する液体変速機の製造技術が絶えてしまった。
国鉄分割民営化直後、重量の嵩まない誘導電動機で鉄道車両を運行する技術が確立して電気式が見直され、機関車は新製のJR貨物DF200形ディーゼル機関車が電気式となり、以降も電気式ディーゼル機関車が増備の中心となった。旅客用気動車も2000年代後半以降は電動機駆動のハイブリッド気動車の新製が中心となった。
欠点[編集]
管に欠陥があると油漏れするので製造時や保守点検の際には高い工作度が必要なこと、速度や力が大きいと油温が上昇すること、大出力機関に対応する液体変速機が存在しないことがあげられる。
関連項目[編集]
注[編集]
- ↑ 後年、欧州では総括制御のできる機械式気動車の技術が確立したが、日本に導入されることはなかった。