トルクコンバータ

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トルクコンバータとは、エンジンの駆動力を液体を通じて伝達する装置である。「トルコン」とも略される。本項では主に自動車における自動クラッチ的な用途に着目し、鉄道車両などの液体変速機としての用途は当該項目を参照されたい。

概要[編集]

トルクコンバータは流体継手という技術の発展型である。液体を満たした容器の中にインペラが向き合うように配置されており、入力側のポンプインペラが回転することで液体が撹拌され、出力側のタービンランナーへ動力を伝達するという仕組みは流体継手とほぼ同様である。しかし、流体継手には回転差がある場合にトルクの伝達が行われない(または伝達力が半減する)という欠点があった。そこでステータと呼ばれる液体の流れを整える部品を追加し、ポンプインペラの回転をアシストすることでその欠点を改善したものがトルクコンバータである。また、この構造によりトルク増幅作用が発生するようになる。

トルクコンバータは自動車用のオートマチックトランスミッション(AT)のクラッチ機構として長らく主役となって利用されていたものである。これは液体を介して動力を伝達するため、クラッチ操作をせずとも滑らかな発進ができること、初期のCVTなどに使用された電磁粉体クラッチなどに比べてラフな扱いでもそれなりに長寿命であることなどの利点がATのクラッチとして非常に都合がよかったためである。そのため、主流がステップATからCVTに移行して久しい2020年代においてもなおトルクコンバータはクラッチ機構として一線を走り続けている。

ロックアップ[編集]

トルクコンバータはマニュアルトランスミッション(MT)のような乾式クラッチで動力を伝達するタイプに比べ、伝達効率が落ちるという欠点がある。また、入力側の出力が高すぎたりオイルが高温になると十分なトルクを伝達できなくなる(俗にいうトルコンが滑るという現象)というデメリット抱えており、これらの改善を目指してトルクコンバータに搭載されたのがロックアップ機構である。ロックアップ機構はエンジン側と変速機側をMTのように直結する機構であり、流体による損失や温度による伝達力の変化が格段に少なくなる技術である。ロックアップ機構が採用されだした当初はロックアップによるショック(乗員に伝わる衝撃)が大きかったものの、電子制御の進化や大容量のダンパーの採用などによりショックの軽減化やロックアップ可能領域の拡大によりMT並みかそれ以上の燃費効率を実現できるようになっている。

クリープ現象[編集]

トルクコンバータはその原理上、動力の伝達を完全に切ることはできない。そのため、ギアレンジが前進可能なポジションで制動をやめるとスロットルを操作しなくても車が発進してしまう。これがクリープ現象である。詳細は当該記事を参照されたい。トルクコンバータはトルク増幅機能を有していることからそれがない流体継手よりもクリープの力が強いともいわれている。なお、現代ではトランスミッション全体の制御によりトルクコンバータを有する自動車でもクリープ現象を無くすことが可能であるといわれている。

関連項目[編集]