エルニーニョ・ラニーニャ
「エルニーニョ現象(El Niño[1])」とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象のことである。逆に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象は「ラニーニャ現象(La Niña[2])」と呼ばれ、それぞれ数年おきに発生する。エルニーニョ現象やラニーニャ現象は、日本を含め世界中の異常な天候の要因となり得ると考えられている[3]。「エルニーニョ」は「幼子キリスト」もしくは「男の子」の意である(クリスマスの頃に発生することが多いことから[1])のに対し、「ラニーニャ」は「女の子」の意である[4]。
平常時の状態[編集]
太平洋の熱帯域では、貿易風と呼ばれる東風が常に吹いているため、海面付近の暖かい海水が太平洋の西側に吹き寄せられている。西部のインドネシア近海では海面下数百メートルまでの表層に暖かい海水が蓄積し、東部の南米沖では、この東風と地球の自転の効果によって深いところから冷たい海水が海面近くに湧き上っている。このため、海面水温は太平洋赤道域の西部で高く、東部で低くなっている。海面水温の高い太平洋西部では、海面からの蒸発が盛んで、大気中に大量の水蒸気が供給され、上空で積乱雲が盛んに発生する[3]。
エルニーニョ現象時の状態[編集]
エルニーニョ現象が発生している時には、東風が平常時よりも弱くなり、西部に溜まっていた暖かい海水が東方へ広がるとともに、東部では冷たい水の湧き上りが弱まっている。このため、太平洋赤道域の中部から東部では、海面水温が平常時よりも高くなっている。エルニーニョ現象発生時は、積乱雲が盛んに発生する海域が平常時より東へ移る[3]。
ラニーニャ現象時の状態[編集]
ラニーニャ現象が発生している時には、東風が平常時よりも強くなり、西部に暖かい海水がより厚く蓄積する一方、東部では冷たい水の湧き上がりが平常時より強くなる。このため、太平洋赤道域の中部から東部では、海面水温が平常時よりも低くなっている。ラニーニャ現象発生時は、インドネシア近海の海上では積乱雲がいっそう盛んに発生する[3]。
エルニーニョ・南方振動[編集]
南太平洋東部で海面気圧が平年より高い時は、インドネシア付近で平年より低く、南太平洋東部で平年より低い時は、インドネシア付近で平年より高くなるというシ−ソ−のような変動をしており、南方振動と呼ばれている。南方振動は、貿易風の強弱に関わることから、エルニーニョ・ラニーニャ現象と連動して変動する。このため、南方振動とエルニーニョ・ラニーニャ現象を大気と海洋の一連の変動として見るとき、エルニ−ニョ・南方振動(ENSO)という言葉がよく使われている[3]。