雇用保険事業

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雇用保険事業(こようほけんじぎょう)とは、雇用保険の目的を達成するために行われる事業である。雇用保険法第3条で規定される。具体的には、失業等給付と二事業である。

目的[編集]

失業等給付の目的は、労働者失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進することである。

二事業の目的は、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることである。

事業に要する経費[編集]

雇用保険料は、労働者と事業主が双方で負担している。失業等給付においては、労働者と事業主の双方が負担する雇用保険料が使用されるが、失業等給付のうちの求職者給付においては、これに加えて国庫負担金(税金)も使われる(雇用保険法第66条第1項)。

二事業においては、事業主からの要望も取り入れて雇用保険の目的と合致する各種事業を行っている。そのため、この事業には事業主が負担する雇用保険料のみが使われ、労働者の負担分は使われない。また、二事業に要する経費に国庫負担金は使われないが、事務の執行に要する経費については、予算の範囲内において国庫が負担する(雇用保険法第66条第6項)。

失業等給付[編集]

詳細は、雇用保険#失業等給付を参照のこと。

二事業[編集]

雇用保険法で定められている二事業は、雇用保険法第3条により「雇用安定事業」及び「能力開発事業」(雇用保険二事業)とされている。かつては、雇用福祉事業も規定されていたが、「雇用保険法等の一部を改正する法律」(平成19年4月23日法律第30号)により廃止された。

雇用安定事業[編集]

雇用保険法第62条に、被保険者、被保険者であった者及び被保険者になろうとする者に関し、失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大その他雇用の安定を図るため、雇用安定事業を行うと定められている。具体的には、助成金の補助などである。なお、政府は雇用安定事業の一部を、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に行わせるものとしている。

能力開発事業[編集]

雇用保険法第63条の第1項から第7項において、次のように能力開発事業が規定されている。

  1. 認定職業訓練その他の事業主等が行う職業訓練の振興に必要な助成、援助、経費の補助等。
  2. 公共職業能力開発施設、及び職業能力開発総合大学校の設置、運営、経費の補助等。
  3. 求職者や退職予定者に対して再就職に必要な知識や技能の講習・訓練の実施。
  4. 教育訓練のための有給休暇を従業員に与える事業主に対する助成や援助。
  5. 職業訓練(事業主が行うものを除く)や講習を受ける労働者やその事業主に対する助成。
  6. 技能検定の実施に要する経費の負担や必要な助成。
  7. 労働者の能力の開発及び向上のために必要な事業(ただし厚生労働省令で定めるもの)の実施。

政府は、これらの事業の一部を独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に行わせるものとする。

雇用福祉事業(廃止)[編集]

雇用保険法第64条に規定されていたが、「雇用保険法等の一部を改正する法律」(平成19年4月23日法律第30号)により廃止され、第64条は削除された。かつては、雇用福祉事業として勤労者福祉施設2005年(平成17年)度までに全ての施設が譲渡または廃止)、雇用促進住宅(「独立行政法人整理合理化計画」(平成19年12月24日、閣議決定)において平成33年度までに地方公共団体や民間等への譲渡等を完了させることとされた。)が整備された。

失業政策について[編集]

国家による社会政策[編集]

産業革命以降における失業問題は大きな社会問題であり、イギリスにおいては救貧法の伝統にもとづき、労働問題解決のための多くの試行錯誤が行われてきた。

その中できわめて生活の厳しい人の中で希望者を施設に入院させ、公費で救済する政策をとったが、人間として自立できなければ施設の入院者が減らないことが大問題となった。

そのためイギリス政府は、人間としての最低限の生活を国家が保障するナショナル・ミニマムとして、労働者の生活と権利を守るための1833年の工場法成立にも伴い、失業対策として各種事業を行ってきたが、その一連の社会政策が、フランスやドイツをはじめとする世界各国に大きな影響を与えた。

雇用保険事業もそれらの政策の影響が多く見られ、特に労働問題において失業等給付を行う救貧のほか、各種防貧事業を実施することにより失業予防をすることが主な目的となっている。

公共の福祉と市民生活の保障[編集]

公共の福祉の実現をめざすナショナル・ミニマムは、イギリスの救貧法の伝統にもとづくものであるが、日本国憲法第25条における国民の生存権を保障する「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」という条文にも、その影響が強く見られる。公民でもある市民生活を守ることは国家のみならず、都市共同体の基盤である市民自治等を守るという見地からも、近代国家においてきわめて重要な施策の一つである。

参考文献[編集]

  • 宮本盛太郎著 『来日したイギリス人 -ウェッブ夫妻、L・ディキンソン、B・ラッセル-』 木鐸社、1989年
  • ビク・ジョージ/ポール・ワイディング著 美馬孝人/白沢久一訳
    「イデオロギーと社会福祉」 勁草書房 1989年
  • 田中豊治著 『ヴェーバー都市論の射程』 岩波書店 1986年

関連項目[編集]

外部リンク[編集]