金環皆既日食

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金環皆既日食(きんかんかいきにっしょく)とは、一つの日食金環日食皆既日食の両方が見られるもののこと。これは世界単位で見たときの話であり、一つの地点で見られるのは金環日食か皆既日食かのどちらかである。 金環と皆既の中間のベイリービーズが見られる日食という意味ではない。 そのような日食は、「壊れた金環日食」(broken annular eclipse)と呼ばれる。 「壊れた金環日食」が金環食帯から皆既食帯に移り変わる場所で見られることから、そのような誤解が生まれた。 「金環皆既日食」の意味が以上のようなものであることは、「天体位置表」やその他の日食予報を見ればわかる。

原理[編集]

視直径太陽のそれより大きいと皆既日食、小さいと金環日食になるが、まれに、日食中に太陽と月の視直径が変化し、金環日食だったのが皆既日食に、皆既日食だったのが金環日食になってしまうことがある。十数年に一度しか発生しない。

金環皆既日食の実例[編集]

1986年から2035年の50年間に起こる金環皆既日食は、以下の通りである。 このように、大部分は海上で見られるので、実際に「壊れた金環日食」が見られることは少ない。 1987年3月29日のガボン日食は、そのような貴重な機会であった。 日本では、1948年5月9日の礼文島日食で見られた。

年月日 UT 最大皆既継続時間 見られる場所
1986 10 3 19h05.3m 0.2秒 グリーンランド
1987 3 29 12h48.9m 7.7秒 南大西洋,ガボン
2005 4 8 20h35.7m 42.0秒 南太平洋
2013 11 3 12h46.3m 99.6秒 アフリカ中部,北大西洋
2023 4 20 04h16.5m 76.3秒 インド洋, 西太平洋
2031 11 14 21h05.9m 66.4秒 太平洋

観測[編集]

ふつう、金環皆既日食は金環日食で始まる。このとき日食が見られる地域は朝で、太陽も月も高度が低く、ほんのわずかに南中したときより地球から離れ、視直径が小さくなる。しかし、太陽は月よりはるかに遠くにあり、月の視直径の減少のほうが大きいので、月より太陽の視直径が大きくなるのだ。しかし、非常に微妙なところであり、複雑な位置関係によって、最初から皆既日食の金環皆既日食も存在する。これは最後も同じである。もちろん、最初から皆既日食、最後まで皆既日食の金環皆既日食は存在しない。それはただの皆既日食だからだ。さて、皆既日食で始まった金環皆既日食は、太陽と月の高度が高くなるにつれて、どちらも視直径が大きくなっていく。先に述べた理由により、月の視直径の増し方が太陽より大きくなり、ついには太陽と月の視直径が全く同じになる。この点を遷移点という。ここからは皆既日食となる。なお、遷移点では最大食時の食分がきっかり1で、皆既日食の継続時間は0[1]、本影食帯の太さは0になる。皆既日食となると、本影食を迎える。ここからは太陽と月の視直径は減少に転じ、再び遷移点を迎える。ただし、先に述べたように、皆既日食で終わるものもある。ここからは再び金環日食となる。そして、日没を迎え、金環皆既日食は終了となる。

金環皆既日食のときは、月と太陽の視直径にほとんど差がないので、皆既日食や金環日食は長くても1分半ほどしか続かない。

出典[編集]

  • 「天体位置表」、(海上保安庁)
  • 「理科年表」、(丸善)
  • 「天文観測年表」、 (地人書館)
  • 「天文年鑑」、(誠文堂新光社)
  • "Fifty Year Canon of Solar Eclipse:1986-2035", Fred Espenak, NASA
  1. 実際には、月の表面には凸凹があるので、全周ベイリービーズ状態の金環日食が数十秒見られる。