遅延始球式

遅延始球式（ちえんしきゅうしき）は、2019年4月27日、楽天生命パーク宮城で行われたパシフィック・リーグ公式戦東北楽天ゴールデンイーグルス（楽天）対千葉ロッテマリーンズ（ロッテ）の始球式で発生したトラブルの俗称である。

概要

この始球式に登板した鈴木奈々（所属事務所による紹介ページ）が、試合開始に備えて守備位置等についている選手を顧みず、なかなか投球動作に入らない、モーションを途中でやめるなどの行為のために試合開始時間を4分ほど遅らせることとなり、始球式のスポンサー・太子食品工業（公式サイト、本社 : 青森県）が謝罪メッセージを出した。

グラウンド上で

このときの始球式は、監督同士によるメンバー交換後から試合開始までのわずかな時間に行われる、日本における通例のものであった。楽天球団からの事前のプレスリリースにも、始球式は「［試合開始13:00］12:58頃」と明記されていた。

始球式が行われた時点のグラウンド上は、試合開始に備えて、楽天の選手は守備について待機しており、さらにロッテの一番打者・荻野貴司（日本野球機構サイト）が打席に立っていた。楽天球団から「限られた時間なのでスムーズに行きましょう」との申し送りもされていた中、準備の遅れた鈴木はマウンドに登場するのも予定より2分程度遅れ、マウンド上でも「待って、待って!」などと叫んだり、モーションに入りながら投球しないという行為を繰り返した。この間、焦らされた場内DJから「お願い致します」とアナウンスされ、スタンドからは罵声が飛び交った。そして、グラウンド上の選手のうち、特に投球を待ち受ける打席の荻野（投球に対して空振りする慣習がある）と捕手・嶋基宏（日本野球機構サイト）は、鈴木がマウンド上で叫んだりしている間、これにつきあわされ続けた形となった。なお、この時の仙台市の天候は小雨が降り注ぎ、気温も7度だったというが、地面が濡れたところで、投球後にまっさらなマウンドに両手と両膝をつくという、楽天の先発投手に配慮を欠いた行為ととられても仕方ないこともした。

選手は真剣勝負を控え、ファンはプレーボールを待ち構えている状況下におけるグラウンド上の主役は選手、ということへの最低限の意識を欠いていたことが示され、試合開始も4分ほど遅れた。そして楽天、ロッテの面々の誰もが水を差されてしまった。

この試合は、入場者 24,956、試合開始13時4分、試合終了16時50分、ロッテが6-5で勝利した。上記の選手のうち、荻野と嶋はフル出場し、荻野4打数1安打、嶋3打数1安打（ともに打点、本塁打はない）であり、楽天先発投手美馬学（日本野球機構サイト）は、投球イニング5、打者26人に対して被安打7、与四死球4、自責点5であった。

「謝罪」と擁護論

太子食品工業がスポンサーとして鈴木を起用したのは同社商品のイメージキャラクターを務めていたことと関係し、イメージキャラクターには、この商品を同社が同年3月1日から発売するのにあわせて起用されたものである。

同社は上記のとおり、試合が開催された4月27日中に謝罪した。しかし、鈴木側は、直後に発表されたコメントでも「緊張」のせいにして謝罪せず、こうした姿勢を問題視する声も上がった。

この鈴木のコメントは次のとおり。

初めての始球式ですごく緊張しちゃいました。

昨日お友達に教えてもらった時はちゃんと届いたのですが、力が入りすぎちゃいました。

旦那様も野球部出身でキャッチボールを教えてもらったので、家に帰ったら愛のキャッチボールをしてもう一度リベンジしたいです！ — 

その後、鈴木が5月4日に出演したテレビ番組・田村淳の訊きたい放題!（番組公式ページ）（TOKYO MX-公式サイト-のバラエティ番組）において、司会の田村淳がこの件を話題とし、「こんなに鈴木さんを追い込む日本社会の方がおかしいと思うよ。よっぽど来たんでしょ?　いろんなコメントが」と日本社会を非難するなど、共演者らが擁護の声を口々にする中、鈴木は涙ぐんだ。こうして、本件始球式があった宮城県が放送エリアに含まれない、他地方のローカル放送によるバラエティ番組（上記番組公式ページ）の視聴者に向かっての行為をもって、ファンや選手への謝罪とした（鈴木が公の場で泣き顔をした他の事例）。

この番組で鈴木と共演した古谷経衡は番組内での擁護とともに次のツイートを行っている。

1分だか4分だか知らんが、始球式が伸びた事が、ひとりの女性をあんなに追い込むまで炎上させる出来事か？じゃあ「2年で2％の物価上昇達成」は7年たった今でも未達成だけど？普天間基地返還「7年以内実行」は、もう20年以上経ってますけど？本当にこの国のクレーマー達はどうかしてる。鈴木奈々断固擁護 — “古谷経衡＠4/12『日本型リア充の研究』発売” (2019年5月4日). 2019年6月19日確認。

鈴木側が謝罪としたテレビ番組では、上記5月4日の次の回である5月11日に、鈴木も出演している中、田村がやはりこの件を取り上げ、謝罪としていることとは裏腹に、この回の共演者らによる鈴木への擁護・正当化が繰り返された。

ここまでの一連の経緯については、メディアからも鈴木への擁護論もあり、朝日新聞社はAERAで、「怖すぎる“ガチ切れキャラ”」なるものと結び付け、「その時の動画を見ると、鈴木の行動はそこまで非難されるようなものでなかったのかもしれない」などと論じ、上記、太子食品工業からの謝罪について「スポンサーが先に謝罪してしまった」などとしている。

古坂大魔王による始球式

同年5月16日、東京ドームで「楽天スーパーナイター」として行われたパシフィック・リーグ公式戦・楽天対北海道日本ハムファイターズにおいて、古坂大魔王が始球式を務めた。古坂大魔王は、「イーグルス大好き芸人」との紹介を受けて登場し、上記始球式の件を受け、投球前に「今日のテーマは試合を遅らせないこと」「ノット、鈴木奈々」とあいさつ。速やかにマウンドに上って投球した。

外部リンク

• “どこで!? いつ!? どうやって!? 投げそうで投げない始球式”. パ・リーグTV（動画） (2019年4月26日). 2019年6月19日確認。