東海地震

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東海地震(とうかいじしん)は、南海トラフ沿いで想定されている大規模地震(以下、「南海トラフ地震」という)のひとつで、駿河湾から静岡県の内陸部を想定震源域とするマグニチュード8クラスの地震である。この地域では、1854年の安政東海地震の発生から現在まで160年以上にわたり大規模地震が発生しておらず、さらに、駿河湾地域では御前崎の沈降や湾をはさんだ距離の縮みなど地殻のひずみの蓄積が認められていることから、「東海地震はいつ発生してもおかしくない」と考えられてきた。

なお、南海トラフ地震は、概ね100~150年間隔で繰り返し発生しており、前回の南海トラフ地震(昭和東南海地震昭和南海地震)の発生から70年以上が経過した現在では、東海地震に限らず、南海トラフ全域で大規模地震発生の切迫性が高まっている。

東海地震の予知[編集]

地震の予知とは、地震の発生時期、場所、規模(マグニチュード)を地震の発生前に精度よく予測することである。従来の科学的知見では、地震の予知は実用段階ではなく未だ研究段階にあると考えられてきた一方、東海地震については日本で唯一直前予知の可能性がある地震と考えられてきた。

その理由として、東海地震については、その発生場所と規模が特定され、時期的にいつ起きてもおかしくない状況にあると考えられてきたことに加え、前兆現象を伴う可能性があること、精度の高い観測・監視体制が震源域直上に整備できたこと、観測された変化が前兆現象かどうかを科学的に判断するための考え方として、「前兆すべり(プレスリップ)モデル」があらかじめ明確化されていたことが挙げられる。

「前兆すべり(プレスリップ)」とは、震源域(プレート境界の強く固着している領域)の一部が地震の発生前に剥がれ、ゆっくりとすべり動き始めるとされる現象である。東海地震については、地震の前兆現象が現れる機構を説明するモデルとして、「前兆すべり(プレスリップ)モデル」が最も合理的と考えられてきた。

これまで想定されていた東海地震の発生に至る過程は、以下のとおりである。

  1. フィリピン海プレートの沈み込みにより、陸側のプレートが引きずられ、地下ではひずみが蓄積する。
  2. 東海地震の前には、この固着していた領域の一部でゆっくりとした「前兆すべり(プレスリップ)」が始まる。
  3. ゆっくりとしたすべりが急激なすべりに進展して、東海地震が発生する。

大規模地震対策特別措置法と地震防災対策強化地域[編集]

昭和53年に施行された「大規模地震対策特別措置法」では、マグニチュード8クラスの大規模地震については想定震源域周辺に観測網を展開することにより、前兆となる地殻変動を地震発生前に検知できる可能性があるとする当時の科学的知見を踏まえ、切迫する大規模地震に対して、直前予知に対応した防災体制の整備強化を図ることとされた。

この法律に基づき、昭和54年には、中央防災会議によって、特に切迫性が指摘されていた東海地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあり、地震防災に関する対策を強化する必要がある地域が「地震防災対策強化地域」(以下、「強化地域」という)に指定された。この強化地域は、平成13年度に東海地震の想定震源域が見直されたことに伴い、平成14年に指定が拡大され、現在は1都7県157市町村が指定されている。

東海地震に関連する情報[編集]

気象業務法では、大規模地震対策特別措置法に基づく地震防災対策強化地域に係る大規模な地震が発生するおそれがあると認められる場合には、気象庁長官は発生のおそれがあると認める地震に関する情報を直ちに内閣総理大臣に報告することとされている。

気象庁では、これまで、東海地震を予知するために東海地域及びその周辺において気象庁が整備した地震計、地殻岩石ひずみ計の観測データのほか、関係機関の協力を得て、地震、地殻変動、地下水等の観測データも活用し、東海地震の前兆現象の監視を行ってきた。

さらに、地殻変動や地震などの観測データに異常が現れた場合には、地震防災対策強化地域判定会を開催してデータの検討を行い、観測された異常が東海地震に結びつく前兆現象と関連するかどうかの検討結果を「東海地震に関連する情報」により発表してきた。

なお、平成29年11月1日から南海トラフ全域で地震発生の可能性を評価した結果を知らせる「南海トラフ地震に関連する情報」の運用が開始され、これに伴い、現在、東海地震のみに着目した「東海地震に関連する情報」の発表は行われていない。

出典[編集]