木村まき

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木村 まき(きむら まき、1949年[1] - 2023年7月下旬頃[2])は、横浜事件元被告人の木村亨の妻で、横浜事件の元再審請求人。旧姓は松坂(まつざか)[1][3]

経歴[編集]

岩手県一関市出身。出版社などに勤務[4]。最初の就職先で3年間働いた後、日本エディタースクールの昼間部に1年通い[5]、ジャーナリズムを学ぶ[6]木村亨と出会ったとき都内の医療系出版社[7]の編集者だった[8]。社会運動に関わる中[4]、1989年冬に横浜事件の第一次再審請求に取り組んでいた木村と出会う[8]。まきは出会った場について「中野で幅広く市民活動をしていた庄幸司郎さんという方がいらっしゃいました。その人の主催する「望年会」があるというので行ってみると、「横浜事件を生きて」という映像の試写会を兼ねた催しだったんです」と語っている[5]。木村と名刺を交換し、電話で連絡を取るようになった。さらに母親の作った手料理を木村のアパートに届けたり[8]、各地の講演に同行したりするようになり[7]、1992年3月に結婚した。34歳の年の差婚だった。まきは「結婚は私の方から言い出し、木村さんは認めてくれました」[9]「再審への道を開いてくれた森川金寿弁護士が結婚の後押しをしてくれたんです」と語っている[8]。亨の最初の妻の正子は1984年に病死している[1]

横浜事件の第一次再審請求、第二次再審請求は棄却された。1998年7月に亨が死去した後、第三次再審請求人の1人となって運動を引き継いだ[4][6]。1998年8月に横浜事件の元被告人3名(決定前に全員死亡)および元被告人の遺族5名が第三次再審請求を行った。2003年4月に横浜地裁再審開始を決定。2006年2月に再審公判で免訴の判決を言い渡し、2008年3月に最高裁で確定した。2002年3月に小野康人の遺族が第四次再審請求を行った。2008年10月に横浜地裁が再審開始を決定。2009年3月に再審公判で第三次再審と同様に免訴の判決を言い渡したが、刑事補償手続での名誉回復に言及した。2009年4月に第四次再審請求の元被告人遺族が、2009年5月に第三次再審請求の元被告人遺族が刑事補償の請求を行い、2010年2月に横浜地裁は刑事補償を決定した。ただし、まきは決定に無罪や人権という言葉がないこと、事件の判決原本・訴訟記録を保管していなかったことなどから刑事補償決定に厳しい評価を下している[10]

2012年12月に平舘道子とともに計1億3800万円の国家賠償請求訴訟を東京地裁に提訴した。2016年6月に東京地裁は請求を棄却[5][8]。2018年10月に東京高裁は控訴を棄却。遺族側はこれを不服として11月に上告したが、東京高裁の「上告提起通知書」送達から50日以内に「上告理由書」を高裁に提出する必要があったにもかかわらず、弁護団のミスで提出期限が過ぎたため、2019年1月に東京高裁は上告を却下し、敗訴が確定した[11]

2023年7月下旬頃に74歳で死去[2]。2023年8月14日に東京都清瀬市の自宅マンション室内で倒れているところを発見され[9]警視庁が死亡を確認した[6]。「ポストに新聞がたまっている」と管理人から連絡があり、永田浩三(武蔵大学教授、「横浜事件と言論の不自由展」実行委員会共同代表)らが自宅に駆けつけたところ、既に死後数日以上が経過した状態だった[4]熱中症だった可能性がある[4][9]

著書[編集]

  • 『横浜事件 木村亨全発言』(木村亨著、松坂まき編、インパクト出版会、2002年)
  • 『空にまんまるの月』(西田書店、2008年)

ビデオ作品[編集]

制作[編集]

  • 『人権ひとすじ─木村亨さんを偲ぶ』(1998年/20分/木村まき)[12]

出演[編集]

  • 『国は嘘をつく─木村まき 横浜事件を生きる』(2017年/17分/武蔵大学永田ゼミ)[12]

出典[編集]

  1. a b c 横浜事件―木村亨全発言 紀伊國屋書店
  2. a b (惜別)木村まきさん 「横浜事件」元被告・木村亨さんの妻 朝日新聞デジタル、2024年2月17日
  3. 空にまんまるの月 紀伊國屋書店
  4. a b c d e 「過去を問うより今迫る危機に声を上げた人」横浜事件の元再審請求人、木村まきさんを悼む 12月、都内で偲ぶ企画展 東京新聞、2023年11月12日
  5. a b c ニュースペーパー2017年5月 フォーラム平和・人権・環境、2017年5月1日
  6. a b c 「横浜事件」元被告木村亨さんの妻、木村まきさん死去 元再審請求人 朝日新聞デジタル、2023年8月25日
  7. a b 元「横浜事件」再審請求人 木村まきさん=8月14日に死亡確認・74歳 毎日新聞、2023年11月6日
  8. a b c d e 共謀罪で言論弾圧再び!? 治安維持法時代の凄惨な「横浜事件」を振り返る 週刊女性2017年4月25日号
  9. a b c 「年の差」夫婦が命がけで訴えたこと〜横浜事件の木村まきさんを偲ぶ●田中洋一メールマガジン「歩く見る聞く 99」(2023年12月28日号)より レイバーネット日本、2023年12月30日
  10. 村田和宏「横浜事件再審からみえるものPDF」『現代法学』第36号、2019年2月
  11. 横浜事件の国賠訴訟、「弁護団のミス」で上告却下 日本経済新聞、2019年1月22日
  12. a b 7/21一7/29「横浜事件と言論の不自由展」を開催 レイバーネット日本、2018年7月16日

関連文献[編集]

  • 横浜事件第三次再審請求弁護団編『資料集成横浜事件と再審裁判――治安維持法との終わりなき闘い』(インパクト出版会、2016年)
  • 向井嘉之、金澤敏子、西村央『国家権力による虚構――歴史の歯ぎしりが聞こえる 「泊・横浜事件」と「大逆事件」』(能登印刷出版部、2024年)

外部リンク[編集]