日勤教育
日勤教育(にっきんきょういく)とは、旧国鉄→JR各社や一部の私鉄、その他鉄道に限らない運輸業における社内教育制度の俗称である。
概要[編集]
名前の由来は本来は日を跨いで勤務する運転手や車掌といった乗務員を日跨ぎの勤務から外し、朝出勤して夕方に退勤する日勤勤務に変更して再教育を施すため。JR各社における日勤教育のルーツは国鉄末期に国鉄労働組合(国労)の組合員を長年携わっていた業務から無関係の業務[注 1]や閑職へ当人の意思を無視した配置転換を行って国鉄に居づらくし、自ら退職するか国労を脱退するように仕向けた隔離政策にあるとされる。
JRにおける日勤教育の対象となるのは事故やミスを起こした乗務員で、再発防止を目的としていた。
日勤教育という言葉が世間的に知られるようになったのは2005年に発生したJR福知山線脱線事故で、事故を起こしたJR西日本では日勤教育の中で
- 事故の直接的な原因とは無関係のレポートや作文を書かせる
- 就業規則を書き写しさせる
- 乗務区での雑用(掃除・草むしり)
- 複数の管理者が当該社員を個室で取り囲んで暴言を浴びせる
など精神論的な教育を行っていた。基準や教育内容も明確化されておらず、再発防止よりも個人の責任を追求する懲罰的要素が強かった。福知山線事故後、航空・鉄道事故調査委員会が懲罰的な再教育がこのような重大事故につながったと指摘したこともあって少なくともJR西日本では再教育の内容を見直して実践的なものに改め、直接事故に繋がらないミスは処分対象にしないといった事を行い、日勤教育の件数は減少した。
鉄道以外における日勤教育[編集]
上記はJR西日本における例だが、鉄道以外の運輸業を営む企業・団体でも日勤教育を行っている事例は存在するとされる。
書籍『タクシー裏物語 現役ドライバーが明かすタクシーの謎』(著者:伊勢正義)によると、東京都内のある大手タクシー会社では過失事故を起こした乗務員、交通違反を繰り返した乗務員、免許停止になった乗務員、乗客からクレームを受けた乗務員を対象に営業所のトップである所長の判断で行われる。教育の一環とされているが見せしめの要素が強く、期間も不定で1日で終わる場合もあれば1ヶ月近く続くこともある。内容もかつてのJR西日本のそれに近く、当該乗務員を乗務から外して所長と係長が対象の乗務員を大声で怒鳴りつける、反省文を書かせる、営業所の片隅で1日じっとさせるなどの行為が行われていたという。この本の初版が出たのは2010年のことだが、今も行っているのだろうか……。
注[編集]
- ↑ 保線作業員として長年勤務していた職員をホーム上の立ち食いそば屋の調理員へ配置転換