情報処理技術者試験

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情報処理技術者試験(じょうほうしょりぎじゅつしゃしけん)は、情報処理に関する日本の資格試験である。一つの試験区分ではなく、複数の試験区分の総称である。

概要[編集]

経済産業省所管の独立行政法人、情報処理推進機構(IPA)が認定する国家試験である。1970年(昭和45年)より実施されている。

名称に「技術者」が含まれてはいるものの、想定する受験者層はシステム開発者だけでなく、運用管理が専門のエンジニアや、区分によっては非エンジニア(一般の利用者)や学生(大学生、高校生など)を含めた、ITにかかわる全ての人を対象にしている。

国家試験ではあるものの、医師や電気工事士、危険物取扱者などと異なり、合格しても特にこれといった独占業務(特定の資格を持っていなければ就けない職業)は無い。しかし、ITエンジニア(一部の区分はこれに限らないが)として必要な知識、技能を客観的に測定するのには有能な試験ではある。
また、情報処理技術者試験の合格者は区分に応じて、大学での単位認定の対象になったり、入学試験(主に推薦、AO)で優遇されたり、公務員採用試験で加点対象となる場合があるなど、特典が大きい資格試験でもある。特に公共機関(警察を含む)の技術系の職種の場合は、情報処理技術者試験の合格者しか採用しないケースもしばしば存在する(ただし公務員採用試験の勉強は別途必要である。)。

冒頭にもある通り、複数の試験区分が存在する。それぞれの区分に4段階のスキルレベル(階級)が設定されており、スキルレベル1は最も難易度が低く、逆に最高難易度の区分はスキルレベル4に設定されている。また、スキルレベル4の区分は特に高度情報処理技術者試験(高度試験)と総称される。

どの区分も受験資格は特にないため、スキルレベル1やスキルレベル2を飛ばして、いきなりスキルレベル3や高度試験を受験しても構わない。

出題範囲[編集]

コンピュータシステム(ハードウェア・ソフトウェアなど)、セキュリティ、データベース、ネットワーク、開発技術などIT全般から出題される。特にセキュリティはどの区分でも重点分野となっており、午前科目での出題比率が高くなっている他、区分によっては午後科目の必須解答問題となっている。

ITの試験ではあるが、プロジェクトの企画や工数管理、システムの運用管理などについて問われるマネジメント分野や、経営戦略や企業活動、法務などのビジネス系の内容が問われるストラテジ分野も出題される。

また、午前科目で数学に関する問題(確率、統計、線形代数など)が出題される区分もある。

基本情報技術者試験では午後科目でプログラミングに関する問題が出題される。言語はC言語JavaPython、アセンブラ(CASL)、表計算ソフトの5つ用意されており、この中から1つ選択して解答する。かつてはCOBOLも選択可能だった。

この試験は国家試験であるため、特定企業の製品に関する問題を出題することができない。そのため、出題されるソフトウェア(データベース管理システム、表計算ソフトなど)は全て架空のものである。

形式[編集]

スキルレベル1のITパスポート試験では4択問題のみが課される。試験時間は120分、問題数は100問。

スキルレベル2以上の区分では午前科目と午後科目がある。
午前科目はITパスポート試験のような4択問題(マークシート使用)となっている。基本情報技術者試験と応用情報技術者試験は試験時間150分、問題数80問。情報セキュリティマネジメント試験は試験時間90分、問題数50問。
午後科目は長文形式の大問を複数解く形式となっている。基本情報技術者試験ではセキュリティ、アルゴリズム、プログラミングの3問が必須解答で、残りは選択問題を数問解答する。応用情報技術者試験ではセキュリティが必須解答で、残りは10問中4問を選択して解答する。情報セキュリティマネジメント試験では3問全てが必須問題である。
午後はスキルレベル2の区分ではマークシート方式(多肢選択式)だが、スキルレベル3以上の区分では記述式となる。

スキルレベル4の区分(高度試験)では、午前I、午前II、午後I、午後IIの4科目が課される。
午前Iは高度試験全区分の共通問題(試験時間50分、問題数30問)が出題される。午前IIはそれぞれの区分の重点分野に特化した問題(試験時間40分、問題数25問)が出題される。午前Iは内容は浅いが範囲が広い、午前IIは範囲は狭いが内容は深い、という感じである。
午後I、午後IIはそれぞれの区分の実務を意識した出題となっている。午後Iでは2つの大問を選択して解答する(試験時間90分)。午後IIでは大規模な大問を1つ選択して解答する(試験時間120分)。午後Iと午後IIの違いは、午後Iでは1つの大問には1つのテーマしかないのに対し、午後IIでは1つの大問の中に複数のテーマが存在することである。
システムアーキテクト試験やプロジェクトマネージャ試験など一部の区分では、午後IIで自分の実務経験をもとにした小論文の作成が課される。そのため、学生や実務未経験者の合格はほぼ不可能とされる。

合格基準[編集]

合格基準は全科目で(100点満点中)60点以上獲得すること、となっている。例外として午後IIの小論文のみ、A・B・C・Dの4ランクで採点され、Aランクのみが合格となる。
スキルレベル3以下の区分は午前、午後ともに基準点を上回れば合格。応用情報技術者試験では午前で不合格だった(59点以下の)場合は午後は採点されない。
高度試験では午前I、午前II、午後I、午後IIの順番に採点されるが、途中1科目でも基準点を下回ったものがあった場合はその時点で採点中止となる。4科目全てで合格点を取った場合のみ合格となる。

ITパスポート試験では総合得点(1000点満点中)600点以上で原則合格となるが、分野ごとの足切りがあり、テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系の3分野のうち、1つでも得点率が30%を下回った科目がある場合は不合格となる。

科目免除[編集]

基本情報技術者試験の午前、高度試験の午前Iには免除制度がある。

基本情報技術者試験

詳細は「基本情報技術者試験#科目免除」を参照

一部の学校の情報系の学科ではIPAが認定した講座を受講した後、修了試験を受験して合格することで、午前科目が1年間(2回分)免除される。

高度情報処理技術者試験

高度試験の午前Iの免除制度の利用条件は以下の通りである。いずれかを満たせば午前Iの受験を免除することができる。

  • 過去2年以内に応用情報技術者試験に合格していること。
  • 過去2年以内にいずれかの高度試験の区分に合格していること。
  • 過去2年以内にいずれかの高度試験の午前Iで60点以上獲得していること。

スケジュール[編集]

応用情報技術者試験は春期(4月第3日曜日)と秋期(10月第3日曜日)の年2回実施される。

高度試験の原則として春期または秋期の年1回のみ実施される(区分によってどちらか異なる。)。ただし、情報処理安全確保支援士試験(旧・情報セキュリティスペシャリスト試験)のみ例外で春期と秋期の年2回実施される。

ITパスポート試験はCBT方式(会場のパソコン上で受験するタイプの試験)で随時実施されている。

基本情報技術者試験と情報セキュリティマネジメント試験は2019年(令和元年)秋期までは応用情報技術者試験などと同様に年2回の筆記試験として実施されていたが、2020年(令和2年)度以降は随時実施のCBT方式に移行している。

試験区分[編集]

スキルレベル1[編集]

ITパスポート試験
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詳細は「ITパスポート試験」を参照

ITエンジニア向けの試験ではなく、一般利用者を含む全ての社会人や学生を対象とした入門編の区分。
ITの知識だけでなく基本的なビジネスの知識も問われるため、新社会人の教科書と呼ばれることも多い。企業によっては新入社員に対する教育・研修のカリキュラムに取り入れている。
入門編ではあるが合格率は40〜50%程度であり、民間検定を含めた一般利用者向けのコンピューターの試験としては難易度は高めの部類に入る。また、ビジネスの知識が問われるためか、高校生の合格率は30%台と低い。


スキルレベル2[編集]

基本情報技術者試験
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詳細は「基本情報技術者試験」を参照

昔は第二種情報処理技術者試験と呼ばれていた。
主に新人のプログラマーやシステムエンジニア、Webデザイナーなどを対象とした試験。ITパスポート試験が新社会人のパスポートならば、基本情報技術者試験はIT業界のパスポートという位置付けである。
大学生の受験者も多く、情報系学科だけでなく、文学部や経営学部など文系の大学生も受験する。商業高校や工業高校でも受験を推奨するところがある。
年間の受験者数は10万人を超え、情報処理技術者試験で最も人気の高い区分である。また、情報処理の資格試験全体で見ても知名度、人気がとても高いものとなっている。
階級としては下から2番目に位置するが、それでも合格率は20%台であり、ITエンジニアならともかく、一般利用者から見たら難関試験である。
午後のアルゴリズムとプログラミングは必須問題であり、配点も大きい。他の区分ではプログラミングは課されないか、選択問題となっており回避が可能なため、基本情報技術者試験はプログラミングに特化した区分であると言える。


情報セキュリティマネジメント試験
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詳細は「情報セキュリティマネジメント試験」を参照

2016年(平成28年)度春期に新設された区分。
ITパスポート試験と同様に一般利用者を対象とした区分。主にセキュリティの運用管理についてのスキルが問われる。
基本情報技術者試験と同じスキルレベル2の試験であるが、難易度は基本情報技術者試験よりやや低くなっている。というのも情報セキュリティマネジメント試験は出題範囲が狭く、数学や開発に関する問題があまり出題されないためである。
しかし合格率は年々低下しており、初回こそ80%を超えていたものの、近年では50%程度まで下がっている。それでも十分高いが。

スキルレベル3[編集]

応用情報技術者試験
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昔は第一種情報処理技術者試験ソフトウェア開発技術者試験などと呼ばれていた。
主に新人のエンジニアや学生が受験する基本情報技術者試験と異なり、応用情報技術者試験はベテランの受験者が多いため、相対的に難易度が高くなっている。
基本情報技術者試験と異なり午前免除制度が無く、午後が記述式になるのが特徴。多くのIT企業では応用情報技術者試験に合格できるかどうかが一人前のエンジニアであるかどうかの判断基準となっている。また、応用情報技術者試験の合格者は、弁理士国家試験や中小企業診断士国家試験の科目免除の特典が得られるなど、メリットが大きい。
ただし、応用情報技術者試験の午後はセキュリティのみが必須解答であり、それ以外はアルゴリズムを含め全てが選択問題である。また、選択問題をマネジメントやビジネスに関する問題で固めることもできるため、文系の受験者ならむしろ基本情報技術者試験より簡単に感じる場合もあるとか。


スキルレベル4[編集]

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スキルレベル4の区分は高度情報処理技術者試験(高度試験)と総称される。一時期はテクニカルエンジニアとも呼ばれていた。
いずれの区分もそれぞれの重点分野の専門家のための試験であり、非常に難易度が高い。
一部の例外を除き、どの区分も年1回しか実施されない。


ネットワークスペシャリスト試験

ネットワークエンジニアのための区分。セキュリティ技術についての知識も要求される。
昔はオンライン情報処理技術者試験と呼ばれていた。


データベーススペシャリスト試験

データベースエンジニアのための区分。データベース技術やSQLは勿論のこと、セキュリティの知識も要求される。


エンベデッドシステムスペシャリスト試験

家電製品や自動車などの組み込みシステムに特化した区分。
昔はマイコン応用システムエンジニア試験と呼ばれていた。


システムアーキテクト試験

システム設計に特化した試験で、開発者向けの区分としては最高峰に位置付けられている。小論文が課される。
昔は特種情報処理技術者試験アプリケーションエンジニア試験などと呼ばれており、高度試験の中では最も歴史が長い区分である。


プロジェクトマネージャ試験

プロジェクトの企画に特化した区分。エンジニア向けの試験というより、むしろ管理職・リーダー向けの試験である。
この区分でも小論文が課される。


ITストラテジスト試験

経営戦略や企業活動などストラテジ分野に特化した区分。エンジニア向けの試験というより、コンサルタントや企業の幹部候補向けの試験。この区分でも小論文が課される。
IT系で最難関の資格と言われることが多く、資格試験全体で見ても医師国家試験、司法試験、公認会計士試験などと肩を並べるレベルと名高い。
昔はシステムアナリスト試験と呼ばれていた。


ITサービスマネージャ試験

システムの運用管理に特化した試験。小論文が課される。
昔はシステム運用管理エンジニア試験と呼ばれた。


システム監査技術者試験

第三者の立場から企業内部の情報システムをチェックする立場の人、所謂、システム監査人のための区分。
これもやはりエンジニア向けの試験というよりは、経営や法務などのビジネス知識が要求される区分。小論文も課される。
ITストラテジストと並び、情報処理技術者試験で最難関の区分と言われることが多い。


情報処理安全確保支援士[編集]

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2017年(平成29年)度春期に誕生した新しい国家資格。別名、登録情報セキュリティスペシャリスト。サイバーセキュリティの専門家。
前身はスキルレベル4の情報セキュリティスペシャリスト試験で、これを登録制の国家資格(免許)に昇格させた上で新設された。
IT系では唯一の名称独占資格で、医師や弁護士などと同様に、この資格を持っていない者が勝手に情報処理安全確保支援士を名乗ると、処罰の対象になる。
高度試験の中で唯一、春期と秋期の年2回試験が実施されることで有名。


過去の区分[編集]

初級システムアドミニストレータ試験
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通称初級シスアド。現在のITパスポート試験の前身にあたる、一般利用者向けの区分だった。
ITパスポート試験と異なるのは、午前と午後の2部構成だった点である。合格率は30%程度で、ITパスポート試験よりは難易度がやや高かった。
2009年(平成21年)春期の実施を最後に廃止された。

関連項目[編集]

関連外部リンク[編集]