弁理士
弁理士(べんりし,英:patent attorney(米国)/chartered patent agent(英国))は、産業財産権およびそれに関する業を独占的に行う、知的財産権の専門家である国家資格および国家資格者である。
概要[編集]
弁理士法によれば、「弁理士の使命」(第1条)「弁理士は、知的財産に関する専門家として、知的財産権の適正な保護及び利用の促進その他の知的財産に係る制度の適正な運用に寄与し、もって経済及び産業の発展に資すること」とされている。弁理士になるには弁理士試験に合格し、実務修習を修了することで、弁理士となる資格を得ることができる。修習終了後登録申請して、登録されれば弁理士となる。
独占業務[編集]
弁理士には弁理士法に定める独占業務がある。
- ①申請代行
- 特許、実用新案、意匠、商標に関する特許庁に対する申請代行業務
- ②売買契約等の代理,仲裁事件の手続代理
- 特許、実用新案等に関する仲裁事件の手続についての代理及び特許、実用新案等に関する権利若しくは技術上の秘密の売買契約等の代理業務
- ③知的財産訴訟の補佐人
- ④業務範囲の拡大
日本の弁理士試験[編集]
受験者数[編集]
受験者数は年々減少傾向にある。令和元年度の受験者数は3,488人、平成30年度の受験者数は3,587人、平成29年度の受験者数は3,912人であった。
- 短答式試験
- 令和2年度では受験者2,259人中、411人が合格し、合格率は18.2%であった。
- 論文式試験
- 令和二年度論文式試験の合格者数は265人、合格率は25.0%であった。
- 口述試験
- 令和二年度口述試験の合格者数は278人、合格率は98.6%。
試験科目[編集]
日本の弁理士試験には短答式試験(1次)、論文式試験(2次)、口述式試験(3次)の3段階の試験がある。順番に受けることになっている。
- 短答式試験
- 日程:毎年5月に1次試験の短答式試験が行われる。
- 受験地:東京、大阪、仙台、名古屋、福岡の5会場
- 特許法・実用新案法、意匠法、商標法、条約、著作権法、不正競争防止法。
- 短答式試験に1度合格すると2年間は短答式試験が免除になる。
- 論文式試験
- 日程:毎年7月に2次試験の論文式試験が行われる。
- 受験地:東京、大阪
- 必須科目と選択科目について各1日づつで行う
- 必須科目3科目:特許法・実用新案法、意匠法、商標法
- 選択科目
- 理工Ⅰ(機械・応用力学):材料力学、流体力学、熱力学、土質工学
- 理工Ⅱ(数学・物理):基礎物理学、電磁気学、回路理論
- 理工Ⅲ(化学):物理化学、有機化学、無機化学
- 理工Ⅳ(生物):生物学一般、生物化学
- 理工Ⅴ(情報):情報理論、計算機工学
- 法律:(弁理士の業務に関する法律) 民法
- 論文式試験の必須科目に一度合格すると、翌年と翌々年の2年間、論文式試験の必須科目が免除される
- 論文式試験の選択科目は一度合格すると永続的に免除される。
- 口述式試験
- 日程:10月中旬~下旬
- 受験地:東京
海外資格[編集]
米国[編集]
アメリカの場合は2種類の資格がある。第一は米国特許商標庁への代理手続き業務を行える「パテント・エージェント」。第二は代理手続き業務に加え、弁護士として訴訟代理業務まで行うことができる「パテント・アトーニー」である。パテント・エージェントは、理工系大学を卒業していなければならない。
英国[編集]
英国では日本や他の欧州諸国と同様に弁理士制度は弁護士制度と別個の資格として存在する。英国においては、特許の代理人(Patent Attorney)と商標の代理人(Trade mark attorney)とに分けられている。 英国の公認弁理士協会(Chartered Institute of Patent Attorneys)は特許代理人(Patent Attorney)で構成する団体である。
資格者団体[編集]
日本弁理士会は、「弁理士及び特許業務法人の使命及び職責に鑑み、その品位を保持し、 弁理士及び特許業務法人の業務の改善進歩を図るため、会員の指導、連絡及び監督を 行うことを目的とする(弁理士法第56条)。研修を通した会員の能力研鑚と向上、 知的財産権制度の研究と普及活動など多様な活動を行う。
- 公式ページ。
脚注[編集]
- 注釈