ITパスポート試験

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ITパスポート試験(アイティーパスポートしけん、:Information Technology Passport Examination)は、情報処理に関する日本の資格試験の一つ。通称iパス(アイパス)。略称はIP。
経済産業省所管の独立行政法人、情報処理推進機構(IPA)が実施する国家試験である。

概要[編集]

情報処理技術者試験の区分の一つ。2009年(平成21年)4月に第1回の試験が実施されている。
IPAが設定した情報処理技術者試験制度において、最も階級の低いスキルレベル1に相当する区分である。情報処理技術者試験にはITパスポート以外にも多くのの区分が存在し、ITパスポートの1つ上の階級のスキルレベル2の試験としては基本情報技術者試験情報セキュリティマネジメント試験が、さらにもう1つ上の階級のスキルレベル3の試験としては応用情報技術者試験が存在する。

この試験はITエンジニア向けではなく、一般利用者を含む全ての社会人や学生を対象とした入門編という位置付けである。

コンピュータシステムやセキュリティ、ネットワーク、データベースなどのITの知識だけでなく、マネジメントや経営戦略、企業活動、法務といった基本的なビジネスの知識も問われるため、新社会人の教科書と呼ばれることも多く、近年では新入社員に対する教育・研修のカリキュラムに取り入れている企業も存在する。

また、大学生(主に文系)や高校生(主に商業科、工業科の生徒)の受験者も多い。

初期は他の試験区分と同様に、春期(4月第3日曜日)と秋期(10月第3日曜日)の年2回の筆記試験として実施されていたが、現在はCBT方式といって、試験会場に設置されているパソコン上で受験するタイプの試験に移行している。移行後は随時実施となっており、毎月実施される。
一応従来通りの年2回の筆記試験も用意されてはいるが、身体障害者のみを対象として実施されるため、健常者の受験は不可能である。

難易度[編集]

情報処理技術者試験の中では最も簡単な区分であり、国家資格全体で見ても自動車の運転免許などと並び比較的簡単な部類に入ると言われている。

かつては初級システムアドミニストレータ試験(初級シスアド)という試験が実施されており、今のITパスポート試験と似たような立ち位置の一般利用者向けの区分として有名だったが、ITパスポート試験はこの初級シスアドよりもさらに難易度が下がっていると言われている。
※初級シスアドの合格率は30%程度。初級シスアドは2009年(平成21年)4月の実施を最後に廃止された。

が、それでも合格率は40〜50%程度であり、IT関係者ならともかく、今までITに触れる機会がほとんどなかったような素人が、学校の定期試験のように一夜漬けないし数日程度の勉強で乗り切れるほど甘い試験ではないため、合格したければそれなりの努力は必要である。
特に高校生の合格率は30%台と低い。これはITパスポート試験では高校生には馴染みの薄いビジネス知識が問われることが理由と思われる。

ちなみに民間の各種パソコン検定を含めた一般利用者向けのコンピュータの資格試験の中では、むしろ難易度は高い方である。民間検定では文部科学省後援の情報活用試験(J検)1級や、ICTプロフィシエンシー検定試験(P検)2級、日商PC検定試験2級などがITパスポート試験と同じくらいの難易度と言われている。

評価[編集]

ITパスポートは国家資格なので、持っていると得する場面も多い。IT業界以外なら履歴書にも堂々と書けるし、情報システムの利用者側の職種(事務職など)であれば、就職活動でも十分アピールポイントになり得る。

文系の大学生の場合、日商簿記やTOEIC(英語)などと並び、オススメされることの多い資格の一つでもある。

他にもITパスポート試験の合格者には、以下のような特典が与えられることもある。

  • 一部の自治体や公共機関では、公務員採用試験での優遇措置がとられる。
  • 大学によっては入学試験での優遇や、単位認定の対象となる。
  • 企業によっては資格手当の対象になる。

ただし、ITパスポートはあくまで一般利用者向けの資格という位置付けなので、プログラマーやシステム開発者(エンジニア)を目指す場合は評価対象になりにくい。IT業界を志望するのであれば難易度は上がるが基本情報技術者の資格が欲しいところである。

出題範囲[編集]

テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系の3分野がある。
内容自体は(あくまで他の区分と比較するならば)深くはないが、範囲はとても広いので、覚えることは結構多い。

テクノロジ系[編集]

情報数学、コンピュータシステム(ハードウェア・ソフトウェア)、セキュリティ、ネットワーク、データベース、アプリケーション(表計算ソフト)など幅広い領域から出題される理系っぽい分野。
最近はセキュリティに関する出題が多い。
あくまで一般利用者向けの試験なのでそんなに難しいことは問われないはず、なのだが、これでも今までITに触れる機会が少なかった素人にとっては覚えるべき内容は結構多い。

マネジメント系[編集]

仕事の基本について問われる分野。他の2分野と比べるとやや地味か。
この分野で問われる内容は以下の通り。

  • プロジェクトマネジメント(プロジェクトの企画、工数管理など)
  • サービスマネジメント(情報サービスの品質管理、運用管理)
  • システム監査(第三者による情報システムの評価)
  • 開発技術(IT企業での業務内容について)

ストラテジ系[編集]

主にビジネス知識について問われる分野。
社会経験に乏しい高校生にとっては一番の鬼門。ITエンジニアでもここはある程度勉強しないと点数が取れない分野である。
strategy(戦術)の英単語が表す通り、経営戦略をはじめとして、企業活動、簿記・会計、法務など幅広い内容が問われる。
覚えるべき用語も多いため、経済や社会に関するニュース番組や新聞記事は見ておいた方が良い。

形式[編集]

他の区分でいう午前科目に相当する4択問題のみが出題される。問題数は100問(全問必須解答)。試験時間は120分。

分野ごとの内訳としてはテクノロジ系が45問、マネジメント系が20問、ストラテジ系が35問である。全部で100問出題されるが、採点されるのは92問で、残りの8問は採点されないダミー問題である(どれがダミー問題なのかは受験者には明かされない。)。

他の区分の午後科目に相当する長文問題は無い。(前身の初級シスアドには午後科目があった。)

合格基準[編集]

総合得点(1000点満点中)600点以上で原則合格となる。

ただし、この試験には足切り制度という罠がある。テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系の3分野のうち、1つでも得点率が30%を下回った分野があった場合は、仮に総合得点が600点以上だったとしても不合格となってしまう。
そのため、「苦手な分野を捨てて得意分野に全力投球する」といった偏った勉強法だと痛い目にあう可能性があるので注意しよう。

関連外部リンク[編集]