岩屑なだれ
岩屑なだれ(がんせつなだれ)とは、 火山噴火や地震などによって火山体が大規模に崩壊し (山体崩壊)、斜面を高速で流下する現象のことである[1]。海や湖になだれ込んだ場合は津波が発生することもあり、火砕流と並んで最も危険な火山現象の1つである[1]。
概要[編集]
北海道駒ヶ岳は、江戸時代以降昭和初期に至るまで、4回の大噴火を繰り返してきた。古文書に記録の残っている大噴火のうち規模が最も大きかったのは1640年(寛永17年)の噴火で、7月31日にしきりと激しい山鳴りがした後、山頂部が一部崩壊し、岩屑なだれが発生した[1]。東側に流下した岩屑なだれは、内浦湾(噴火湾)になだれ込んだため大津波が発生し、沿岸で700人以上の死者が出た。津波の高さは対岸の有珠地区で7.5mにも達したことが判っている。その後、活動は多量の軽石を空高く噴き上げる噴火へと移り、火砕流・火砕サージも発生した。この激しい噴火は8月2日まで続いた後急速に衰え、約70日後に静穏に戻った[1]。噴火に伴う岩屑なだれ堆積物は、「クルミ坂岩屑なだれ堆積できまざき物」と呼ばれ、東麓には「出来澗崎」という地名の岬を形成し、南麓では折戸川をせき止めて周辺に多数の小山のような地形(流れ山)を残している[1]。このような活動は有史以前にも何度かあり、次第に山麓の湖沼を形成していったものと推定されている。現在、年間240万人もの観光客が訪れる大沼・小沼などの風光明媚な山麓湖沼群の姿は、過去に発生した激しい噴火活動の名残りである[1]。
岩屑なだれ・山体崩壊は非常に稀な火山現象であるが、過去の事例としては 1741年に渡島大島(津波により2000人以上が死亡した「寛保津波」)、1792 年に雲仙眉山(眉山崩壊による津波で15000人以上が死亡した「島原大変肥後迷惑」)、1888年に磐梯山(1888年の磐梯山噴火)、最近では1980年に北米のセント・ヘレンズ山(その瞬間が初めて映像に残された)などで発生し大きな被害を及ぼしている[1]。