園頭広周
園頭 広周(そのがしら ひろちか、1918年2月20日[1][2] - 1999年[3][4]2月20日)は、日本の宗教家[2]。本名園頭勇[1]。生長の家の要職、GLA西日本本部長を経て、GLA系諸教団の一つ国際正法協会(こくさいしょうほうきょうかい)の創始者兼会長。国際正法協会は、いわゆる「新新宗教」「第三次宗教ブーム」の代表的な団体の一つとして知られている[5][6]。GLAから派生した集団のなかでは比較的大きく、1000人以上の会員を有していた[7][8]。
経歴[編集]
鹿児島市生まれ、鹿児島商卒[1]。キリスト教の洗礼を受けているが、すぐに脱会している[4]。1940年6月陸軍中尉の時に谷口雅春の『生命の實相』を読み、戦場で「宇宙即我」の体験をしたとされる[9][10]。陸軍大尉で終戦を迎え、その後本格的に宗教家としての人生を歩んだ[1]。生長の家に入会し、1952年に生長の家地方講師、1955年に本部講師を務め、時局対策宗教者会議事務局長、国民会議委員を兼任したが[1]、1972年に脱退した[9][4]。1973年3月にGLA教祖の高橋信次と出会いGLAに入会、GLA西日本本部長を務めていたが、1976年に信次の死去に伴い二代目教祖として就任した高橋佳子新体制の方針転換を受けて[8][11][4]、1978年に同団体を脱退した[9][1]。高橋信次の教えを正しく受け継ぐとして、同年9月に正法会を設立[9]、初代会長に就任[1]。同時に正法出版社を設立、社長に就任した。1987年にアメリカ・ロサンゼルスにあるニューエイジ系のアガシャ教会を訪問し、海外での布教のため正法会を国際正法協会に改称した[12][13]。同協会の教えは、ニューエイジとの共通性が指摘されている[13]。
1999年2月20日に3年に及ぶ闘病生活の末、逝去した。園頭の病死後、国際正法協会は解散[11][4]、当該協会の出版部門である正法出版社の解散に伴い、著作群は全て絶版となっている。
事績[編集]
概要[編集]
著書『現代の釈尊高橋信次師とともに』にみられるように、主として、師であった高橋信次の弟子としての視点からの評伝を上梓、その紹介につとめた。一方で、教義上の問題点から、大川隆法と宗教法人幸福の科学、池田大作と宗教法人創価学会等を批判した。また、高橋信次の予言どおり、アメリカの「アガシャ教会」と交流し(これはアガシャ教会側においても、アガシャの霊が予言していたとされた)、高橋信次によれば9次元宇宙界の指導霊であるとされたアガシャによる予言を書物として問うた(『二十一世紀まで生き延びれるか‐アガシア、高橋信次先生の予言』)。さらに、翻訳をつとめた(『アガシャの講義録(1)』等)。その他、『「天台小止観」の解説』等、仏教関連の著作を著した。
高橋信次の説との相違点[編集]
師である高橋信次がベーシック(基礎)を、それをもとに自身(園頭広周)がアドバンス(応用)を説く、とし、高橋信次の説を応用することにつとめたが、高橋信次の在世当時の説との相違点も見られる。すなわち
- 信次の説による、魂の1本体5分身説[14]に対する「六人全て男という人は女としての修行を全て終えた人、六人全て女という人は男としての修行を全て終えた人」とする説。
- 『古事記』、『日本書紀』等を引用した「女は受動性、男は能動性の生き物である」とする性理論に基づく、家庭生活一般のあり方を説いた説。この説に関連して、高橋信次の説について言及すると、仏教の女性観について読者から問われた際、女性は、子供を生む役割から、あの世の4次元と感応しやすい性質を持っており、結果として、感情にとらわれやすい傾向はあるとされた。また、子供を生み育てる役割等、前世からの習慣によって保守的となる傾向は確かにあるとされた(『心の対話』173-175ページ参照)。ただし、男女は肉体的には平等とはいえないが、心は平等であるとし、真実は、男女の性別に関係なく、均等に与えられているとした(高橋信次『人間・釈迦』)。この点は、園頭広周においても同様である。ただ、同氏においては、男女のあり方を細部にわたって規定していることから、信次と敷衍の仕方が異なるいうことである(高橋信次は上記のように男女各々の傾向性を、あくまで観察上指摘したにとどまり、そこから男女各々の対社会的なあり方を普遍妥当的に規定しているわけではないといえる)。
※男女の役割について園頭広周が詳しく説いた背景には、1990年代当時、ジェンダーフリーや男女共同参画といった、性差を無視した男女平等論がさかんに言われていたということがある。特にジェンダーフリーについては、日教組が中心となって、児童向けに教材を作り、その普及に奔走していた。また、日教組の教員の中には、自身がこの考えに感化されて、息子にスカートを穿かせて学校に登校させてみたり、トイレも男女同じでよいとする極端な意見を主張する者もいた。これらの問題は高橋信次存命の1970年頃には、ウーマン・リブ運動など海外ではその兆候は見られたが、日本においては特にクローズアップされなかったため、高橋信次は詳しく説く必要が無かった。
男女の役割についての高橋信次・園頭広周両氏の説の違いは、つまるところ時代背景の違いにある。よって、高橋信次が詳しく説かなかったからといって園頭広周の説が高橋信次の説く「神理」と相反するというわけではない。これは、「師である高橋信次師がベーシック(基礎)を、それをもとに自身(園頭広周)がアドバンス(応用)を説く」と言っていた通りのことで、単なる応用に過ぎない。ただ、人によってはそれが相違点に見えることもあったようである。
著書[編集]
単著[編集]
- 『現代の釈尊高橋信次師とともに』正法会出版部、1984年1月、ISBN 4915582019(改訂新版、正法出版社、1993年10月、ISBN 4915582280)
- 『正法と現代宗教 - 現代の釈尊高橋信次師とともに 2』正法会出版部、1984年1月、ISBN 4915582027
- 『正法と人生の原点 - 現代の釈尊高橋信次師とともに 3』正法会出版部、1985年4月、ISBN 4915582035(改訂新版、正法出版社、1991年4月、ISBN 4915582221)
- 『正法と結婚の原理 - 現代の釈尊高橋信次師とともに 4』正法会出版部、1986年5月、ISBN 4915582043
- 『舎利子が語る真説般若心経講義 - 現代の釈尊高橋信次師とともに 5』正法出版社、1986年1月、ISBN 4915582051
- 『仏陀をめぐる女性たち 女の不朽の生き方を求める - 現代の釈尊高橋信次師とともに 6』正法出版社、1986年1月、ISBN 491558206X(改訂新版、正法出版社、1996年5月、ISBN 4915582558)
- 『宇宙即我に至る道(上)いかにして「宇宙即我」を体験したか - 現代の釈尊高橋信次師とともに 7』正法出版社、1987年1月、ISBN 4915582078
- 『宇宙即我に至る道(下)坐禅の作法の原点「天台小止観」の解説 - 現代の釈尊高橋信次師とともに 8』正法出版社、1987年1月、ISBN 4915582086
- 『高橋信次先生講演・著作解説集(1) - 現代の釈尊高橋信次師とともに 9』正法出版社、1996年2月、ISBN 4915582094
- 『大宇宙の神理 「心行」の解説 - 現代の釈尊高橋信次師とともに 10』正法出版社、1988年2月、ISBN 4915582116
- 『大宇宙の神理 「心行」の解説 - 現代の釈尊高橋信次師とともに 11』正法出版社、1988年8月、ISBN 4915582124
- 『二十一世紀の宗教 生命科学と生命哲学 ひかりシリーズ 1』正法出版社、1988年4月、ISBN-10: 4915582108
- 『二十一世紀まで生き延びれるか アガシア、高橋信次先生の予言 ひかりシリーズ 2』正法出版社、1988年9月、ISBN 4915582132
- 『園頭広周書簡集 高橋信次師の記録 宗教指導者の条件(上)』正法出版社、1989年1月、ISBN-10: 4915582159
- 『園頭広周書簡集 高橋信次師の記録 宗教指導者の条件(下)』正法出版社、1996年5月、ISBN-10: 4915582167
- 『高橋信次師のことば』、正法出版社、1989年10月、ISBN 4915582175(改訂新版、正法出版社、1995年10月、ISBN 491558237X)
- 『「大川隆法」はこう読め 正法からみた「幸福の科学」』正法出版社、1991年10月、ISBN 4915582248
- 『「大川隆法」はこう読め(続)』正法出版社、1991年11月、ISBN 4915582256
- 『大川隆法は仏陀ではない 幸福瞑想への警告』正法出版社、1991年12月、ISBN 4915582264
- 『高橋信次師こそ真の仏陀であった』(東明社)1991年12月、ISBN 4809500470
- 『人生の目的と使命―高橋信次先生随聞記』正法出版社、1993年4月、ISBN 4915582345
- 『女性読本―真の女性への目覚め (2)』正法出版社、1993年4月、ISBN 4915582329
- 『正法入門―高橋信次師講演集』正法出版社、1994年8月、ISBN 4915582418
- 『正法と経営―人間主義経営学』正法出版社、1995年6月、ISBN 4915582469
共著[編集]
- 『母を憶う』(正法出版社)前田久吉(著)、園頭広周(著)1988年、ISBN-10: 4915582140
- 『正法と高橋信次師 (1)』正法出版社、園頭広周(編集)、花田成鑑(編集)1994年6月、ISBN-10: 4915582388
- 『正法と高橋信次師 (2)』正法出版社、園頭広周(編集)、花田成鑑(編集)1994年12月、ISBN-10: 4915582426
- 『正法と高橋信次師 (3)』正法出版社、園頭広周(編集)、花田成鑑(編集)1995年5月、ISBN-10: 4915582450
編著[編集]
- 『正法入門―高橋信次師講演集』正法出版社、1990年6月、ISBN-10: 4915582191(改訂新版、正法出版社、1994年7月、ISBN-10: 491558240X)
翻訳[編集]
- 『大いなる創造のために 前進にそなえて 詩集私的日記 アガシヤ・ブックス』正法出版社、ゲーリー・サルバット(著)、園頭広周(翻訳)1991年1月、ISBN 4915582205(改訂新版、正法出版社、1991年2月、ISBN 4915582213)
- 『アガシャの講義録(1)』正法出版社、1996年1月、ウィリアム・アイゼン(著)、園頭広周(翻訳)ISBN-10: 4915582531
註[編集]
- ↑ a b c d e f g 日外アソシーエツ編集部編『日記書簡集解題目録 2 (政治家・思想家)』日外アソシエーツ、1998年、262頁
- ↑ a b 日外アソシエーツ編集部編『新訂増補 人物レファレンス事典 昭和(戦後)・平成編 せ~わ』日外アソシエーツ、2003年、1391頁
- ↑ 井上順孝『人はなぜ「新宗教」に魅かれるのか?』三笠書房、2009年、312頁
- ↑ a b c d e 島田裕巳監修『現代にっぽん新宗教百科』柏書房、2011年、85-86頁
- ↑ 「内藤国夫の連続報告 人はいま、なぜ新宗教に走るか「2」 日本聖道教団 善隣会 正法会 神声天眼学会 ふだん着の教祖サマかく語りき--荒行、超能力、教義と第三次宗教ブームを支える四人の教祖の爆発エネルギーを捉えた」『現代』21巻3号、講談社、1987年3月、160-177頁
- ↑ 井上順孝ほか編『新宗教事典』弘文堂、1990年、37頁
- ↑ 沼田健哉『現代日本の新宗教――情報化社会における神々の再生』創元社、1988年、101頁
- ↑ a b 井上順孝ほか編『新宗教事典』弘文堂、1990年、89頁
- ↑ a b c d 井上順孝ほか編『新宗教教団・人物事典』弘文堂、1996年、76-77頁
- ↑ 園頭広周『宇宙即我に至る道(上)』正法出版社、1987年
- ↑ a b 島田裕巳『日本の10大新宗教』幻冬舎新書、2007年、200頁
- ↑ 園頭広周編『正法入門――高橋信次講演集』正法出版社、1990年、215頁
- ↑ a b 渡邉典子「「心理学主義化」する新新宗教の教説 : GLA を事例に」『一神教世界』同志社大学一神教学際研究センター、2011年、52頁
- ↑ 信次によれば、人の魂は1人の本体と5人の分身からなるとされ、その組成には
- 1.男本体1、男分身5
- 2.女本体1、女分身5
- 3-1.男本体1、男分身2、女分身3
- 3-2.女本体1、女分身2、男分身3
関連文献[編集]
- 紀田順一郎ほか編『新現代日本執筆者大事典 第3巻 す~は』日外アソシエーツ、1992年、104頁
- ジェイムス・クレンショー『アガシャの霊界通信』上下 西村一郎訳、正法出版社、1992年
- 菅田正昭『古神道は甦る』たま出版、1985年/橘出版、1994年
- 生長の家本部編『生長の家四拾年史』日本教文社、1969年
- 谷口雅春『私の日本憲法論』日本教文社、1980年
- 渡邉典子「現代宗教の変容 : 「草創期GLA」を事例として」『応用社会学研究』57巻、2015年、52頁、119-131頁
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- インターネット宗教 正法(2011年2月2日のアーカイブ) - 国際正法協会とは別組織
- 正法 - 国際正法協会とは別組織