仁義なき戦い 完結篇
仁義なき戦い 完結篇(じんぎなきたたかい かんけつへん)は、”広島ヤクザ戦争”を描いたノンフィクション『仁義なき戦い』を映画化した日本映画の作品である。映画「仁義なき戦い」シリーズ五部作の第五作である。1974年に公開された実録もの映画である。
概要[編集]
三つ巴えの抗争[編集]
警察の頂上作戦により終結したと見えた抗争は、服役していた幹部が出所して新たな段階を迎え、大友組は勢力を回復した。広島のやくざ社会は山守組、打本会、大友組の三つ巴えの対立となった。やくざ組織は警察の目を欺くため山守義雄を会長に据え、武田組、江田組、早川組(元打本会)、大友紙、呉の槙原組、さらに徳山、福山など近郊都市の組織まで大同団結させた政治結社「天政会」を作り上げた。武田明は武田組々長と二代目天政会々長を兼任し、副会長に大友組々長の大友勝利、理事長に武田組若頭の松村保、幹事長に早川組々長の早川英男、理事に江田組々長の江田省一を就任させた。1966年春、天政会々長二代目の武田明は、警察の取締りに対し会の再建強化を図るが、反主流派の大友、早川らの反発に直面する。広島一の大組織となった政治結社天政会であるが、暴力団組織から脱して世間のイメージアップを図ろうとする武田・松村派と、あくまでヤクザ路線を貫こうとする大友・早川派が反目し合うこととなり、内部分裂に直面する。
天政会の内部抗争[編集]
天政会に圧迫されていた呉の市岡組々長の市岡輝吉(広能昌三の兄弟分)は、天政会の動きに即応し、天政会参与・杉田佐吉を襲撃し射殺してしまう。大友は市岡組の犯行と察し、杉田の葬儀に顔を出した市岡を激しく責め立てる。しかし揉め事を避けようとする武田は松村と共にその場を収める。これらの不穏な動きを知った広島県警は、天政会内部の不穏な動きを察知し、天政会本部の強制捜査に踏み切り、会長の武田は逮捕されることが濃厚となる。武田は自身の逮捕に備え、武田不在時の会長代行を務める三代目会長候補に同会の理事長で自身の側近である松村を推薦する。天政会壊滅に向け首脳を順次検挙した。武田は再逮捕の前に先手を打ち、腹心の若頭・天政会理事長の松村保を三代目候補に推薦する。早川と結託した大友は会長候補に立候補するが、武田派の根回しによりて次期会長候補は松村と決定する。間もなく武田が逮捕され、松村が会長代行として権威を振るいはじめた。大友、早川らは激しく反発し、松村の殺害を企てるが失敗する。広能組は若頭・氏家厚司を中心に天政会の横暴に耐え、広能の帰りを待っていたが、広能に先んじて出所した広能の舎弟・市岡輝吉はそのような広能組の弱腰を非難する。市岡は天政会を刺激して内部紛争を勃発させ、天政会を瓦解させようと目論んでいた。網走刑務所に服役中の広能昌三を市岡が訪問し天政会の現状を伝え、広能が広島を制覇するチャンスが到来したと伝える。
天政会の解散[編集]
市岡は、親しい早川英男を介して、大友勝利と兄弟分の盃を交し、広島進出への足掛りとし、松村組の縄張りに組員を送り込んだ。松村は市岡を殺害し、政治結社としての天政会を解散させて傘下各組を解散し、自分の直属組織とした。1970年6月、武田は出所し再び会長に復帰した。出所した武田は3ヶ月後に出所を控えた広能への対処に頭を悩ませ、天政会から政治結社の看板を下ろした松村を叱責する。勢力を張る槙原組に対して、広能組は市岡輝吉の報復もできなかった。しかし1970年6月30日、大友を失った早川は山守と手を組み、槇原を次期会長に据えようとするが、広能の出所を前に手柄を立てようとする広能組の若衆が呉市の繁華街で広能組組員の清元が槙原組々長槙原政吉を射殺したため計画は頓挫した。
広能の引退[編集]
1970年9月18日。広能昌三は七年振り刑務所をに出所した。武田は広能に天政会との関係を修復するよう説得する。松村は秘かに広能に面会し、武田の引退を告げ、広能に引退を勧告する。広能は引退を拒否する。1970年11月18日、天政会三代目就任が決まった松村は挨拶回りのため江田省一を伴って関西を訪れる途中、反対派の襲撃を受け、江田は即死し、松村は重傷を負った。1970年11月24日、松村は重体であったが、広島県警や医師の警告を無視して、襲名披露を強行する。広能は若頭の氏家を伴い式に参列し、後継者として指名するとともに、松村に組員たちの今後を依頼した。広能組が天政会の傘下に入ることになり、槙原組は孤立した。組長を射殺されて進退窮まった槙原組々員たちは、広能組々員を襲撃した。広能ははるかに年齢が下の若者の死と、遺族の悲しみの姿を目にし、長年の極道人生から足を洗う決意を固めた。
脚本の変更[編集]
本作では脚本がこれまでの笠原和夫から高田宏治に変更されたことが特徴である。脚本を担当していた笠原和夫は第四部で物語は終了していると主張し、執筆しなかった。前作までは第一次広島抗争と第二次広島抗争を描いていたが、本作は天政会の内紛と世代交代がテーマの第三次広島抗争を描いている。
基本事項[編集]
- 題名:仁義なき戦い 代理戦争
- 配給:東映
- 監督:深作欣二
- 企画:日下部五朗
- 脚本:高田宏治
- 原作:飯干晃一
- 撮影:吉田貞次 東映京都撮影所
- 美術:鈴木孝俊
- 音楽:津島利章
- 録音:溝口正義
- 照明:中山治雄
- 編集:宮本信太郎
- 助監督:土橋亨
- スチル:木村武司
- 進行:上田正直
- 上映時間:97分
- 色彩:カラー、シネマスコープ
- 公開年:1974年6月29日
配役[編集]
呉・広能組[編集]
- 広能昌三:菅原文太 - 広能組組長。
- 氏家厚司:伊吹吾郎 - 広能組若衆頭。
- 佐伯明夫:桜木健一 - 広能組若衆。
- 村田静子:中原早苗 - 佐伯の姉。
- 清元忠:寺田誠 - 広能組若衆。
- 水本登:野口貴史 - 広能組若衆。
- 弓野修:司裕介 - 広能組若衆。
- 関谷徹:松本泰郎 - 広能組若衆。
- 岩見益夫:大木晤郎 - 広能組若衆。
天政会[編集]
武田組[編集]
- 松村保:北大路欣也 - 天政会理事長。武田組若頭。
- 藤村勇吉:広瀬義宣 - 武田組組員
- 丸山勝:成瀬正孝 - 武田組組員
- 友田孝:沢美鶴 - 武田組組員
- 時正夫:鳥井敏彦 - 武田組組員
- 織田英士:西田良 - 武田組若衆。
大友組[編集]
槇原組[編集]
市岡組[編集]
- 市岡輝吉:松方弘樹 - 市岡組組長。広能の舎弟。
- 神戸泰男:唐沢民賢 - 市岡組組員
- 宗方良三:白川浩三郎 - 市岡組組員
- 野地進一:片桐竜次 - 市岡組組員
- 遠井銀之助: 松田利夫 - 市岡組組員
- 末長博:池田謙治 - 市岡組組員
- 国松吉郎: 岡賢治 - 市岡組組員
- 寿美子:藤浩子 - 市岡の女。
早川組[編集]
- 早川英男:織本順吉 - 天政会幹事長。早川組組長。
- 久保田市松:高並功 - 早川組若衆頭。
- 加賀亮助:八名信夫 - 早川組若衆頭補佐。
- 楠田時夫:藤沢徹夫 - 早川組組員
- 近藤新一:阿波地大輔 - 早川組組員
- 大久保憲一:内田朝雄 - 呉の長老。
- かおる:野川由美子 -杉田の娘。
- 江里:賀川雪絵 - ホステス。
- 光子:橘真紀 - 山守の女。
- 常岡元次:岩尾正隆
- 杉田佐吉:鈴木康弘
- 河野幸二郎:天津敏
- 平手君郎:鈴木瑞穂 - 刑事。