ドラッグレース
ドラッグレース(Drag race)とはモータースポーツの一種であり、主に1/4マイル(およそ402m)の直線で行われる競技である。クラスによっては1000馬力を超えるマシンもあり、バーンナウトやNOSの白煙など見た目にも派手なアメリカ発祥のモータースポーツである。日本ではゼロヨンという名で知られている。
なお、よく勘違いされるが、空気抵抗や引っ張るという意味のドラッグ(Drag)であり、薬物のドラッグ(Drug)ではない。
概要[編集]
アメリカ発祥のレースであり、もともとは公道で行われていたストリートレースに起源をもつレースとされている。
スタートラインからゴールラインまでの速さを競う競技であるものの、スタート時の駆け引きやシグナルが変わってからスタートまでの反射神経、とんでもない出力のマシンをコントロールする技術と度胸など、短い競技時間に様々な要素が濃縮されているモータースポーツである。そのため、その見た目の派手さだけではなく競技性に惹かれて夢中になる愛好者も多いという。
使用される車両は市販車やそれをベースに改造したチューニングカーだけでなく、ドラッグレース用に製作された専用競技車両まで幅広いものである。また、バイクにおけるドラッグレースも行われている。イベントなどでは二輪対四輪やカテゴリ違いでレースを行うなど、興行色の強いものも多い。
コースは二つのレーンを有する直線コースであり、スタート地点のレーンの間にクリスマスツリーと呼ばれるスタートシグナルが設置される。
コースにはドラッグバイトという粘着力のある液体が撒かれる。タイヤのグリップを向上させるという性能の他、路面を保護するという効果があるらしい[1]。一方でその粘着性の強さから靴が脱げてしまうこともある。
コースの長さは1/4マイルが基本であるが、トップカテゴリは安全面から1,000フィート(およそ304.8m)で行われている。
競技[編集]
基本的には1対1で行われ、勝ち抜きのトーナメント戦で行われる。レースの流れはクラスや競技団体によって違いがあるものの、概ねコースイン、ステージング、スタートの順で行われる。
コースイン[編集]
競技車両を走行レーンに移動させるフェーズである。コースインした車両はバーンナウト(バーンアウトとも)を行いタイヤを加熱させる。バーンナウト時は激しい白煙が立ち上がり、その音と見た目で観客も大いに盛り上がる瞬間である。なお、クラスによってはバーンアウトせずそのまま次のステージングに進むこともある。
ステージング[編集]
スタート地点にはそれぞれのレーンに2本のラインが引かれており、レーン後方からプレステージラインとステージラインとされる。このラインに沿うように光電管センサが設置されており、タイヤがセンサをまたぐとシグナル上部にあるプレステージライトとステージライトがそれぞれ点灯する。なお、このプレステージラインとステージラインの間隔は6インチ、およそ15cmとなっている。
プレステージラインに進む順番はないが、どちらかがプレステージライトを点灯させた場合はもう一方もプレステージライトを点灯させるのがマナーとされている。両者がプレステージライトを点灯させたのち、じわじわとステージラインに進みステージライトを点灯させることになる。
スタート[編集]
プレステージライトとステージライトが点灯したということは両車スタートの準備ができたということである。この状態になった後はカウントダウンが始まるが、ストックスタートとプロスタートでライトの点灯が変わる。
ストックスタート(スポーツマンスタートとも)は縦に3つ並ぶイエローシグナルが上から下に順番に点灯していき、最後にスタートシグナルであるグリーンシグナルが点灯しスタートする。点灯のタイミングは0.5秒の等間隔である。
プロスタートはイエローシグナルが全点灯しその0.4秒後にグリーンシグナルが点灯しスタートとなる。
どちらのスタートにしてもグリーンシグナル点灯前に車両が動いた場合はフライングとなり失格となるほか、グリーンシグナル点灯後に一定時間(ストックで0.5秒、プロで0.4秒)以下でスタートした場合にもフライングの判定となり、レッドシグナルが点灯する。フライングは失格となり、走行タイムは計測されなくなる[2]。
なお、プロスタートの0.4秒は人間の反射反応速度に基づく時間となっている。
グリーンシグナルから車両が動くまでの時間はR.T(リアクションタイム)、車両が動き出してからゴールラインを通過するまでの時間はE.T(エリミネーションタイム)とされ、それぞれ別に計測される。一方、E.Tが相手より早くてもスタートに手間取りR.Tが極端に遅かった場合などゴールラインに相手より遅く到達した場合は負けとなることが一般的である。
トップカテゴリは早すぎて通常のブレーキでは減速しきれないこともあり、パラシュート(ドラッグシュート)を搭載している車両もある。
日本におけるドラッグレース[編集]
1970~80年代の日本において、青山ゼロヨンと呼ばれる違法レースが日本におけるドラッグレースの始まりとされている。東京都内の青山通り(国道246号)における交差点の間隔がおよそ400mであり、整備も進んでいた道路であったことからゼロヨンに最適であったとされる[3]。現代のように地域を超えて情報が伝わりにくい時代でありながら、伝聞などで全国から腕自慢・車自慢の若者やギャラリーも多く集まり、土曜の夜などはさながら祭り状態であったといわれている。当然ながら周辺住民からの苦情や警察による一斉検挙もあり、青山ゼロヨンはほぼ壊滅状態。若者は次第に東名高速道路に場を移していったとされている。また、全国の同様のスポット[注 1]でもゼロヨンが開催され、その都度行政による対策(検挙やゼロヨンができないような道路にするなど)が執られていった。こういった違法レースに興じるものはゼロヨン族と呼ばれ、峠の走り屋、高速道路のルーレット族などと並んで社会問題化していた。
公道を使用した違法レースが社会問題化する一方、サーキットなどで合法的にゼロヨンを行う者も現れ始めた。1984年にはJAF公認レースが開催され、そのタイムはチューニングの一つの指標ともなった。1980年代末には日本ドラッグレース協会が発足し、日本で本格的なドラッグレースが開催されるようになっていった。現在でもサーキットで行われるレースが日本各地で行われており、チューニング愛好家やアメ車愛好家などが多数参加する一つのイベントにもなっている。
関連項目[編集]
注釈[編集]
- ↑ 明石の二見やいわきの小名浜、福岡の箱崎ふ頭など