クリスマスツリー (ドラッグレース)

クリスマスツリーとは、現代のドラッグレース（スタートラインでの停止状態から、既定の距離を走り切るまでのタイムを競う短距離競技）で、スタート合図に使う専用の電子制御信号機システム。競技車両が走る2つの車線を挟むように設置され、1車線に対して7つのライトと、光電管センサーによって構成される。

灯火は上から2つの黄色灯、3つの橙灯、1つの緑灯、1つの赤灯、以上の合計7つで構成される。これを2車線分に設置するので、合計14灯。光電管センサーはスタートラインとその後方15cmもしくは7インチの地点に設置される。

スタート合図

ドラッグレーサーが準備を終えると、まずスタートライン後方の光電管センサーを超える。この時、通過がシステムに検知され、ここで一番上の黄色灯「プレ・ステージ・ライト」が点灯する。そのままスタートラインに進むと、また光電管センサーで検知され、二番目の黄色灯「ステージ・ライト」が点灯、準備完了となる。

両車がスタートラインに進み準備完了となると、続いてスタート信号シーケンスに移る。これは、スターターと呼ばれるスタッフが指示する場合と、スタートライン検知で自動的に行われる場合がある。レースのスタート合図となる点灯方法はレースによっていくつかの種類がある。

標準的なものは、0.5秒ごとに橙灯が1つずつ点灯し、さらに0.5秒後に緑灯が点灯、スタート合図となる。これをストックスタートとも呼ぶ。

プロスタートの場合は、すべての橙灯が0.4秒間点灯し、その後すぐに緑灯が点灯、スタート合図となる。一部の競技では橙灯点灯時間が0.5秒となる、「ハイブリッド・ツリー」や「.500 プロスタート」と呼ばれる点灯方法を採用している。

緑灯が点灯するとレース開始である。点灯前にスタートしてしまった場合、光電管センサーで検知され、カウントダウンを中止、赤灯が点灯、この時点でフライングとして仮失格となる。ヘッズアップスタートでは、仮に双方のドライバーがフライングした場合でも、先に発進したドライバーのみが仮失格を受ける。スタート時間がずれるスタッガードスタートでは、少々複雑となる。

歴史

発祥

クリスマスツリーの発明者が誰であるかは今日でもはっきりしない。全米ホットロッド協会(NHRA)の公式誌「National Dragstar」によれば、Oilver Riley氏が1962年にNHRAのフィールドディレクターにこのシステムの提案を行った、という新聞記事が存在する。

携帯式のスタート灯の提案は、車の研究開発の安全性向上のために行われていた。車の安全な追い越しのための研究上、ドラッグレースのようなレースを行った際には、旗手が車のすぐ前に立つことになり危険であったり、スタートタイミングにバラつきがあるなどの問題があった。これを改善するためのシステムとして、1963年にクリスマスツリーと同様のシステムが開発されている。

このシステムの原型と言われているものに、Wilfred H. "W.H." David, Jr.氏によるものがある。1950年代にクリスマスツリーという名前のシステムについての権利をOilver Riley氏に売却している。

変遷

クリスマスツリーシステムは1963年、enwp:Lucas Oil Racewayで初めて使われた。これは橙灯を5灯設け、光電管センサーによるステージ・ライトはなかった。これが追加されたのは1964年にロサンゼルスで開催されたウィンターナショナルでのことである。橙灯は5灯で、0.5秒ごとに点灯していた。

1971年には、プロスタートモードが採用されて、5灯ある橙灯のうち一番下が点灯し、0.4秒後に緑灯が点灯、スタートとなるものだった。しかし、これには視認性の問題があった。

橙灯が3灯となるのは1984年の最初のオーバーホールでのことである。プロスタートモードでは、橙灯の点灯が全灯同時となった。

続いての重大な変更は2003年、白熱電球の代わりにLEDを採用したことが挙げられる。車両から伝わる振動によってフィラメントが損傷することが多く、球切れとなることが度々あったが、これを改善するとともに、反応時間の改善にもつながった。

2011年には橙灯の代わりに青を使うものや、赤灯の点灯方式の変更がされているものなども登場している。