ウィリアム・デリア
ウィリアム・デリア(英語:William D'Elia、1946年6月24日[1] - )は、ペンシルベニア州のマフィア。ブファリーノ・ファミリーのボス。別名はビッグ・ビリー(Big Billy)。ラッセル・ブファリーノの甥[2]。
経歴[編集]
ペンシルベニア州スクラントン出身[3]。ブファリーノ・ファミリーのボス、ラッセル・ブファリーノの指導を受けた[2]。彼の運転手を務めたとされる[4]。1988年の上院の委員会の報告書『組織犯罪――ヴァラキから25年』によると、当時ファミリーのボスはブファリーノ、アンダーボスはジェームズ・オスティッコ、コンシリエーレはエドワード・シャンドラで、ブファリーノは収監されていた。ファミリーの事業の責任はシャンドラ、カポレジームのアンソニー・F・グアルニエリ、ブファリーノと定期的に連絡を取り合い、ファミリーの会議では彼の使者の役割を果たすデリアが分担していた[5]。ペンシルベニア犯罪委員会の1990年度の報告書によると、デリアはソルジャーでありながら重要な役割を担っていた。また少なくとも1年前から固形廃棄物の仲介ビジネスに携わっており、ギャンブルにも積極的に取り組んでいた[6]。
1994年にブファリーノの死去に伴い、アンダーボスからボスに昇格した[2]。1993年と1994年にフィラデルフィア・ファミリーのボス、ジョン・スタンファとの会合を録音され、当局の注目を集めた[7]。2001年にフィラデルフィアの元ボスで情報提供者のラルフ・ナターレが陪審員にデリアがピッツトンに拠点を置くブファリーノ・ファミリーを率いていたと語った[8]。ナターレはデリアがフィラデルフィアの内部紛争の解決を助けていたと指摘した[4]。
2006年5月31日[2]、偽の会社や融資、コンサルティング契約を作って合法的な所得に見せかけることによって、麻薬取引で得た数十万ドルの金をマネーロンダリングした罪で起訴された[9]。その5ヵ月後、この事件の証人の殺害を手配しようとした罪で起訴された。起訴状によると、デリアは2006年8月に情報提供者に証人の写真を渡し、その男を殺す合図を待つように言ったとされる[9]。この情報提供者はマネーロンダリングの共謀者で、盗聴器をつけてデリアとの会話を録音していた[8]。殺人教唆を含む18の訴因で起訴されていたが、2007年3月に有罪を認めたときにほとんどの起訴が取り下げられ、2008年1月にマネーロンダリングの罪で10ヶ月の禁固刑を言い渡された[8]。2008年3月28日にマネーロンダリングの共謀と証人への脅迫の罪を認め[9]、2008年11月17日に9年の禁固刑を言い渡された[8]。ペンシルベニア州ゲーミング委員会にデリアとの交遊関係について虚偽の証言をしたとしてカジノ経営者を偽証罪で起訴したドーフィン郡地方検事局への協力と引き替えに減刑を受けられる司法取引を検察と行っていた[8]。2013年2月に仮釈放された[10][11]。
ペンシルベニア犯罪委員会の元調査官ジェームズ・カナヴィーは、2011年にシティズンズ・ボイス紙で、ブファリーノ・ファミリーが今も存在するとは思わないと語っている[12]。
人物[編集]
1972年にラッセル・ブファリーノは、自分とデリアとフランク・シーランのためにダイヤモンドで縁どられた3ドル金貨付きの指輪を3つ作った[2]。2004年に刊行されたノンフィクション『I Heard You Paint Houses』の初版では、存命の人物への配慮でデリアの名は伏せられ、指輪を貰ったのはブファリーノのアンダーボスだと記されている[13]。2016年に刊行された増補版でデリアの名が明かされた。『I Heard You Paint Houses』を原作とした2019年の映画『アイリッシュマン』では、ブファリーノとシーラン、フィラデルフィア・ファミリーのボスのアンジェロ・ブルーノが指輪を持っている[12]。
出典[編集]
- ↑ William D'Elia State of New Jersey Division of Gaming Enforcement
- ↑ a b c d e チャールズ・ブラント著、高橋知子訳『アイリッシュマン 下』ハヤカワ文庫NF、2019年、213-214頁
- ↑ Machi, Mario. “American Mafia. Northeast PA”. 2022年8月1日確認。
- ↑ a b “THE AMERICAN MAFIA - Crime Bosses of Pittson”. 2013年1月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月20日確認。
- ↑ 『Organized Crime: 25 Years After Valachi』Congressional Information Service、1988年
- ↑ “Organized Crime in Pennsylvania: A Decade of Change, 1990 Report(PDF)”. Pennsylvania Crime Commission (1991年4月). 2022年8月24日確認。
- ↑ Deitche, Scott. “The Pittston Family”. 2012年3月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月20日確認。
- ↑ a b c d e "Reputed mobster gets 9 years in prison" The Daily Item、2008年11月24日
- ↑ a b c William D'Elia pleads guilty in Scranton Pennlive、2008年3月28日
- ↑ 『アイリッシュマン 下』299頁
- ↑ Bureau of Prisons Inmate Locator Federal Bureau of Prisons
- ↑ a b Bufalino Crime Family Now & Then: Does it Exist Today? heavy.、2020年1月26日
- ↑ チャールズ・ブラント著、高橋知子訳『アイリッシュマン 上』ハヤカワ文庫NF、2019年、34頁
外部リンク[編集]
- jawp:en:William D'Elia
- History of the Bufalino Crime Family - La Cosa Nostra Database
- Mafia boss William D’Elia on the move - MAFIA TODAY