アラブ
アラブは、アラビア半島および周辺を指す地域名であり、そこに暮らす民族のことである。
概要[編集]
広義のアラブは、アラビア半島とアフリカのサハラ砂漠以北に相当する一帯である。アラブ首長国連邦、サウジアラビア、エジプトといった国を含む。狭義のアラブは、アラビア半島、特にルブアルハリ砂漠の一帯を指す。古代には、アラブは人口の希薄なルブアルハリ砂漠の遊牧民を指したが、遊牧民出身のムハンマドが起こしたイスラム教が広範囲に広がった影響で、現在はセム系諸語を話すイスラム教徒全体がアラブ人と呼ばれる様になった。
人口で見ると、エジプトがアラブで最大の国となる。一方、経済規模でみると、産油地であるサウジアラビアがアラブ最大の国である。
なお、イラン、トルコ、パキスタンなどはアラブに含めない。イスラム教が主流の国ではあるが、いずれもアラビア語と大きく異なる言語が母語であり、アラブ人を自称していない。一方で、イスラエルの主要民族であるユダヤ人は、アラビア語と近縁のヘブライ語が母語であるが、イスラム教を信仰していないため、アラブ民族には含まれない。
地理[編集]
多くは砂漠地帯で、サハラ砂漠やルブアルハリ砂漠が広がっている。所々に点在するオアシスに都市が発達している。バグダッド、リヤド、ハルツーム、カイロ、アンマンが主要都市。
気候[編集]
ほとんどが砂漠気候(BW)。イスラム教の聖地メッカの場合、夏は日本よりもはるかに暑く、冬も仙台の夏並に暑い。
歴史[編集]
アラビア半島周辺で古代より人口が多かったのは、メソポタミア文明が起こったイラク、その西のパレスチナ、および半島南端のイエメンあたりであった。アラブとは、パレスチナから見て南側、イエメンから見て北側の遊牧民を指しており、現在よりずっと狭い概念であった。
7世紀になると、メッカにムハンマドが登場、イスラム教を創始した。イスラム教団は急速に拡大し、アフリカからアラビア半島に至る大国を築き上げた。イスラム教の経典が、メッカ周辺の言語であるアラビア語で書かれたこともあり、中近東全体のセム系言語を話す民族がアラブに同化され、以降エジプト、パレスチナ、イラクなどを含む中東全体の人々がアラブ人を自称する様になった。
8世紀にはウマイヤ朝、9世紀にはアッバース朝と、アラブの統一王朝がアラブ世界全体を支配したものの、その後は分裂期に入る。10世紀にはイラン系のブワイフ朝が、イラクやエジプトを支配した。紅海沿岸はその後、ファーティマ朝、セルジューク朝、アイユーブ朝、マムルーク朝、オスマン帝国と支配者が変わっていき、オスマン帝国がアラブの大部分を再び支配する様になるも、近代になると数多くの国に分裂した。