アポロ型小惑星

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アポロ型小惑星(あぽろがたしょうわくせい)とは、天体力学の分野で使われる用語で、軌道長半径が1au以上で、近日点距離が1.017au以下の軌道を持つ小惑星のことである。これは、地球に衝突する可能性のある天体であることを意味する。

この名前は、最初に見つかったこの型の小惑星(1862)Apolloにちなんで名づけられた。

同様に、

  • アテン型: 軌道長半径が1au以下で、近日点距離が0.983au以上の軌道を持つ小惑星
  • アモール型: 近日点距離が1.017au以上1.30au以下の軌道を持つ小惑星
  • アティラ型: 遠日点距離が0.983au以下の軌道を持つ小惑星

である。

天体力学の分野では、「型」の他に「群」と「族」という分類があり、 「群」とは、

  1. 同じ軌道を回る天体 (流星群、彗星群、隕石群、衛星群)
  2. 大惑星と共鳴軌道にある天体 (トロヤ群、ヒルダ群、トゥーレ群)

「族」とは、

固有軌道要素の特徴から同一の天体から分裂したと考えられる天体 (エオス族、フローラ族、テミス族など)

という意味で、この「群」と「族」以外の特定の軌道の特徴を持つ天体を総称して「型」と呼ぶ。

土星海王星の間の軌道長半径を持つ(2060)キロンなどの天体には、ギリシャ神話のケンタウルス族の名前が付けられており、上記の定義に従って「ケンタウルス型天体」と呼ぶが、誤って「ケンタウルス族天体」と呼ばれることがある。しかし、小惑星の「族」としての性質はないので、これは完全な誤用である。また、海王星と2:3の共鳴軌道にある天体Plutinoは、上記の定義に従えば「冥王星群」となり、「冥王星族」と呼ぶのは誤りである。

なお、隕石や惑星間塵の分野では、上記の「群」、「族」、「型」の使い分けにこだわらず、緩い意味で一括して「グループ」と呼ばれる。すなわち、この分野では「アポログループ」という言い方をする。例えば『月と小惑星』(恒星社、1979年)では、天体力学者の古在由秀は「アポロ型」と書き、隕石学者の武田弘は「アポログループ」と書いている。「アポロ群」という呼び方は、この意味での"group"という英語を専門外の訳者が誤って「群」と訳したことに発端する誤訳が広まったものである。英語の辞書を邦訳した天文学の辞書や、その分野のプロではない人が書いている天文雑誌やウィキペディアなどは、このような不適切な表記が多いので注意。