あの日々をもういちど

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あの日々をもういちど』(あのひびをもういちど)は、健速による日本ライトノベル作品。イラストはが担当。ホビージャパンHJ文庫刊。

アダルトゲームシナリオライターとして活動している著者の小説デビュー作である。

ストーリー[編集]

江戸幕府が開かれ、戦国の世が終わりを告げようとしていた慶長12年(1607年)。村を荒らす黒海山荒れ野のとの戦いで劣勢を強いられた剣士・水際流は鬼を倒すだけの武装を整えるまでの間、神社に伝わる名刀・白來光芳(びゃくらいみつよし)の力で自分もろとも鬼を封印するよう妹の茅乃と侍大将・吉岡又衛門に命じ、そのまま鬼と共に封印された。しかし、その封印は流が考えていた数年の間に解かれることは無く月日は過ぎ去って行った。

そして400年後、世は平成となり19年目の2007年5月5日。水際神社の宮司水際孝治は鬼の封印が経年劣化により間もなく壊れることを悟り、先手を打って厚生労働省特殊病害獣対策担当官の高杉幸一と共に封印を解いて鬼を蘇らせ、400年前には想像も付かなかった近代兵器の力で撃退する。自ら封印を望んだ時には、鬼を倒すだけの武装を整えるまでせいぜい5年ぐらいだろうと考えていた流は400年の歳月が経ったことを茅乃の末裔である春乃に聞かされ、自分が封印された頃との光景の変わりようと自慢の剣術も近代兵器の前には無力であることに茫然自失となってしまう。

鬼が倒され、夏祭りが近付いたある日。400年後の世界で生きる目的を失い、ただ惰性に流されるまま日々を過ごす流の前にかつて流が姉同然に慕っていた妖狐夕凪が現れる。しかし、夕凪が現世に蘇った理由は400年前に人間と超常種の争いで父を殺めた流への復讐を成し遂げるためであった。

登場人物[編集]

過去[編集]

水際 流(みぎわ ながれ)
両親を亡くし、孤児となった所を水際神社に引き取られた青年。数え年で18歳。その剣術は誉れ高く、神社に伝わる名刀・白來光芳を継承している。人間と超常種の融和を望んでいたが、地域の支配権確立を目論んで人間と超常種の対立を煽った領主の策謀に乗せられ、妖狐の長に一閃を浴びせて殺めてしまう。その直後に人里へ降り立ち、村を荒らして甚大な被害をもたらした黒海山荒れ野の鬼を倒す為、鬼を倒せるだけの武装が整うまで自らを鬼と共に封印するよう妹の茅乃と侍大将・吉岡に命じる。だが、封印が解かれたのは400年後のことであった。
茅乃を始め、既に自分を知る者もおらず、自慢の剣術も近代兵器の前には全く無力ではないかと自信を喪失し、ただ日々を過ごしていた中、かつて姉同然に慕っていた夕凪と再会する。
夕凪(ゆうなぎ)
妖狐の娘。人間よりも長い寿命を持つ妖狐族は超常種の中でも人間と共存を望んでおり、その中で夕凪と流は実の姉弟のような関係であった。ところが、人間の領主が領内における支配権確立のために人間との交流を望まない妖狐と結託して両者の対立を煽り、その争いは夕凪の父である妖狐の長が流の一閃によって討たれたことで終わりを告げる。以後、父の仇となった流の命を執拗に狙い続けるが、流が黒海山荒れ野の鬼と共に封印されたことを知り自らも本懐を遂げるべく永い眠りに就き、400年後に流と鬼の封印が解かれたことで覚醒する。眠りから覚めた直後は400年前と同様、流の命を狙うものの、彼を倒した後、自分が生きる目的を失うのではないかと言う葛藤に苛まれる。
水際 茅乃(みぎわ かやの)
水際神社の巫女。数え年で15歳。水際家の養子となった兄・流を誰よりも慕っており、将来は流を婿に迎えるはずだったが流が鬼と共に封印されたことで侍大将・吉岡又衛門の次男・又吉と結婚。一女を儲けたものの、流のことを諦め切れないまま失意の内に早逝した。
吉岡 又衛門(よしおか またえもん)
流の物の怪退治には常に随行していた侍大将。黒海山荒れ野の鬼との戦いで流の意を受けて鬼と共に流を封印した後、茅乃が亡くなった直後に逝去。その理由は狩り出掛けた歳の事故であるとも、人間と超常種の対立を煽った領主の謀略を知った為に暗殺されたとも伝えられているが真偽は定かではない。
黒海山荒れ野の鬼(こくかいさんあれののおに)
巨大な体躯と無尽蔵に分身を造り出す能力で破壊の限りを尽くす凶暴な鬼。黒海山から降り立つことは稀であったが、妖狐の長が流に討たれた直後に人里へ降り立ち村を破壊し尽くした後、鬼を倒すだけの武装を整えるまでの時間を稼ぐ為に流と共に封印される。400年後に封印が解かれた直後、高圧電流で動きを封じられ反撃する間も無く機関砲の掃射を浴びて絶命したかに思われた。ところが、その驚異的な再生能力を以て森の中で小動物を喰らって肉体を取り戻し、400年前と同じように街へ降り立ち人々を恐怖に陥れる。

現在[編集]

吉岡 圭介(よしおか けいすけ)
高校生。剣道部に所属しているが大会ではいつも2位に甘んじているため、400年の時を超えて蘇った伝説の剣士である流に教えを請いたいと願っている。
水際 春乃(みぎわ はるの)
圭介の幼馴染みで、茅乃の末裔に当たる少女。自分の祖先の1人で、地元では伝説の剣士として語り継がれる流を理想の男性像として思い描いていた。亡くなった母より受け継いだ水際神社伝来の奉納演舞が400年の間に不完全なものとなっていることを流より指摘され、本来の演舞を再現すべく流に教示を請う。
水際 孝治(みぎわ たかはる)
水際神社の宮司で、春乃の父。妻を亡くした後、男手一つで娘を育てて来た。400年前に施された封印が経年劣化により間もなく解けることを察知し、先手を打って封印を解き厚生労働省の協力を得て近代兵器で鬼を撃退する。
高杉 幸一(たかすぎ こういち)
厚生労働省特殊病害獣対策担当官。人間社会に害を及ぼす超常種の捕縛・駆除を職務としているが、近年は超常種が人間に害を及ぼすことも稀になっており、水際神社の鬼退治に際しては久々の大仕事とばかりに張り切っていた。

書誌情報[編集]

  • 2007年8月1日初版 ISBN 978-4-89425-590-6

外部リンク[編集]