脳
脳(のう、英:Brain)とは、生物に備わっている情報処理装置。進化の過程で徐々に高度になってきたと考えられている。
概要[編集]
動物の脳の構造を調べると、一定の共通している部位が確認できる。
解剖学的には、その「外見上の特徴」により、各部位にまず最初に名前が付けられている。左脳、右脳、小脳、海馬など。「大脳基底核」という名前も「外見上の特徴」。つまり脳の構成要素についての名前はほぼ「外見上の特徴」であり、どのような動作をしているのかを表してはいない場合が多い。
海馬は、短期記憶で使う箇所。メインメモリに近い役割を感じる。ちなみに長期記憶は大脳皮質。ストレージに近い役割を感じる。名前は見た目が海馬(タツノオトシゴ類)のような形をしているところから。
例え[編集]
- コンピューターで例えるなら、各PCに置いて各部位のパーツに少々違いはあっても、電源ユニットや冷却システムのCPUクーラーなど、進化の初期の過程から求められる役割が変わらない部位もある。そういえばデータセンターに例えている記述もあった。
- PCの各内部パーツに「外見上の特徴」で名前を付けると「大基板(マザーボード)」「小基板(拡張ボード)」みたいな感じか。
- 「古い脳」と「新しい脳」に二分して考える考え方もある。
ヒトの脳[編集]
ヒトの脳は頭部の中に存在し、頭のおよそ上半分を占めている器官である。丈夫な頭蓋骨の中に保護されている。
ヒトの脳は、約140億個の神経細胞とそれを支持するグリア細胞から成り、平均的には1.2~1.5キログラムである。これは人体の質量の2%程度に過ぎないが、それでも脊椎動物の脳としては著しく発達している。
脳は運動・知覚など神経を介する情報伝達の最上位中枢である。また、感情・情緒・理性など人間の精神活動においても重要な役割を果たしている。幾つかの精神活動に関してはポジトロン断層法などにより、脳の活動との間に密接な関係があることが確かめられている。
人間の精神やその活動が脳の物質的な活動だけによって成立していると考える人もいるが、一方では身体の他の部分の活動も精神を構成する一部であると考える人や、魂のようなものが存在してその働きが関連していると考える人もいる。
構造[編集]
ヒトの脳は、外側(頭側)から順に、大脳、小脳、脳幹の部分に分かれている。脳幹は、中脳、橋、延髄、をあわせていう。右の図で見えている部分の大部分は大脳であり、一部は橋、延髄、小脳である。
大脳[編集]
大脳は人間の脳の大部分を占める組織でひだ(脳溝)に富んだ半球状をしており、大脳半球と間脳に分かれている。大脳半球は、左右に分かれて脳梁で繋がっている。脳溝を谷とすると、山にあたる部分は脳回と呼ばれる。形状はほぼ左右対称で、前下部から水平に入るシルビウス裂より尾側を側頭葉、頭頂部からシルビウス裂に至る中心溝より腹側を前頭葉、背側を頭頂葉と呼ぶ。後頭葉は最後方にあり、境界は曖昧である。両大脳半球の内部には側脳室と呼ばれる脳室があり、脳梁以下で第三脳室に交通している大脳からは脳神経のうち嗅神経が出ている。大脳の表層部分(厚さ数mm)を大脳皮質と呼び、細胞が6層構造になっており様々な情報処理がここで行われる。皮質より中心部分は白質と呼ばれ、ほとんど神経線維で成り立っている。
小脳[編集]
小脳は後頭部にあり、正中の小脳虫部、左右の小脳半球、尾側の小脳扁桃に分けられる。
脳幹[編集]
脳幹は頭側で大脳と、背側で小脳と、尾側で脊髄と連絡する神経組織で、頭側から間脳、中脳、橋、延髄の順で分けられる。小脳と橋に挟まれた空間は第四脳室となっている。
- 間脳は視床と視床下部からなる。視床は、大脳皮質や下位の脳・脊髄との連絡が多く、感覚の中継、運動制御など多彩な機能に関わる。視床下部は、身体の恒常性(ホメオスタシス)を保つ働き、自律神経系の制御、感情などに関与している。
- 中脳は上丘(視覚処理に関与)、下丘(聴覚処理に関与)、セロトニンやドパミン、ノルアドレナリン系などの神経核が散在している。中脳には眼球運動・視覚に関わる諸神経核があり、脳神経として視神経、動眼神経、滑車神経を出す。また背側には第三脳室と第四脳室を交通する中脳水道が通っている。
性差[編集]
人間を含む脊椎動物の脳はその性別により異なった構造を持つ。これは大脳解剖学による直接的な観察や、ラットに対して脳の形成期に性ホルモンを投与する実験により確かめられている。
人間の場合、男女は精神的・文化的に異なった傾向を示す(ジェンダー参照)が、脳の性差がその一因であると考えられている(一般的な支持は集めていないが、一因ではなく原因の全てだと考える人もいる)。
容積[編集]
まず、明らかに観察される点として、男性の脳は女性よりも大きく重い。出生時は性別による有意差は無く、男女ともに370~400グラムである。成人では、男性は1350~1400グラム、女性では1200~1250グラムである。
これをもって男性が女性よりも知的に優れているという説も存在した。しかし現在では、この説はほとんど支持されていない。夏目漱石 やアルバート・アインシュタインを初めとする天才と呼ばれた人々の脳の重量を調べるとまちまちであることから、脳の重さや体積が即、知性の度合いに反映されるわけではないと考えられている。
また、平均して男性の方が女性よりも体格が大きいことを考慮し、体重に占める脳重量の割合を求めると女性の方が大きいという指摘もあるが、正確には不明である。
活動[編集]
陽電子断層法によって様々な精神活動の際に脳が働く様子を調べると、男性では左脳の活動が右脳よりも優位であることが分かる。これに対し、女性では脳の左右に有意差は見られない。
周期性[編集]
月経に代表されるように女性は身体的な周期変動を持っている。またそれに伴って精神的にも周期的に変動すると指摘される。この周期性を支配しているのが下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンである。
男性の脳ではこのような活動の周期性はない。胎生期に、精巣から分泌された大量のテストステロンに曝されること(アンドロゲン・シャワーと呼ばれる)によって男性の脳は周期性を失う。