霞提
霞提(かすみてい)とは、堤防に意図的に開口部を設け、洪水時には開口部から水が逆流し、提内地に水を引き込んで本流の越水を防ぐ治水方式である。
概要[編集]
開口部に堤防が全くないわけではなく。上流部の堤防の提内地側に下流部の堤防が伸び、ある程度重複するようになっている。そのため、本流の流れがそのままに流出するわけではなく、下流部の堤体で勢いが弱められて流出するようになっている。
古くは戦国時代の武田信玄が考案したといわれており、歴史のある治水方式である。ダムに頼らない治水方法であるとして国が推進しているほか、環境団体からも評価が高い。
問題点[編集]
最大の問題点は補償問題である。ダムによらない治水としてもてはやされる「田んぼダム」も同様の問題点を持っており、共に農地を遊水地として利用しようとする治水であるが、その農地に対する補償が明確にならないまま推進されているという問題がある。霞提においては集団防災移転との兼ね合いもあるが、住み慣れた土地を下流の住民のために離れるのはおかしいという声もある。特に今まで災害もなかった土地であり、または生活が再建できないほどの被害があるわけでもないために理解が得られないという声も聞かれている。
補償問題についても集団移転や公共施設の移転など、ダムの水没と変わらない補償が予想されるほか、農地の場合は被害が出るたびに補償する場合は相当な額になってしまう。また、農地の補償についても土地を借り受けて農業を営む人には補償されず、土地の持ち主にのみ補償されてしまったり、そもそも土地が荒れてしまうため、従来の農作ができなくなってしまうなどの根本的な問題も多く残っている。
霞提は氾濫を前提にしているため、指定河川洪水予報の運用外となり、現に氾濫が発生したとしても氾濫発生情報(レベル5情報)が発令されないという問題もある。現に2023年6月に愛知県などで発生した記録的豪雨において、愛知県の豊川流域の霞提がある下条地区では車の水没により一人が亡くなっている[注 1][1]。
関連項目[編集]
脚注[編集]
- ↑ 別の地区の住民であり、豪雨時の霞提の役割などを理解していなかったのではないかという指摘もある