酸性雨

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酸性雨(さんせいう、英:acid rain)とは、pH5.6以下の強い酸性を示すが降ること、またその雨のことである。

概要[編集]

一般的な雨には空気中の二酸化炭素(CO2)が溶け、弱酸性を示すが、化石燃料の燃焼などで発生する硫黄酸化物(SOx)や、自動車の排ガスなどで発生する窒素酸化物(NOx)が大気に放出された際には、それらが空気中の(H2O)などと反応し、それにより生じた強い酸性の物質が雨に溶け、強い酸性の雨が降る。これが酸性雨であり、地球上の生物などに様々な被害をもたらすので現在の地球における環境問題の一つとして問題視されている。

被害とその被害に対する対策[編集]

森林や湖沼の場合[編集]

  • 森林に酸性雨が降った場合、その森または林のが枯れる。
  • 土壌に酸性雨がしみこんだ場合、その土の中の微生物が生きてゆけなくなる。あるいは、植物のがダメージを受け、その植物が枯れる。
  • 湖沼に酸性雨が降った場合、その湖沼の水が酸性を示し、その湖沼で植物が生きてゆけなくなる。

この場合、その土地や湖沼にアルカリ性の物質を撒き、中和させることで被害を抑えることができる。

街に降った場合[編集]

  • コンクリートは、強度が弱まる。割れ目などから直接内部の鉄骨を腐食し、橋梁などの劣化につながる。
  • 大理石及び石灰質の岩石は溶ける。すなわち、大理石でできた彫刻などが破壊される。

これらは再建や再制作など、回復により大きな手間がかかる。それらを酸性雨にさらさないようにするしかない。

酸性雨を降らせない対策[編集]

国際的な対策[編集]

1979年に国連欧州経済委員会でヨーロッパにおける長距離越境大気汚染条約が採択された。これは、国際連合欧州経済委員会の加盟国に対して大気汚染防止に対する政策や、酸性雨の研究を求めたものである。この条約は1983年に発効された。これにより、1985年にヘルシンキ議定書、1988年にソフィア議定書が作られ、硫黄酸化物・窒素酸化物の排出削減が実施された。他にもEMEP議定書VOC規制議定書オスロ議定書重金属議定書POPs議定書、酸性化・富栄養化・地上レベルオゾン低減議定書により、補完されている。国際連合欧州経済委員会で批准されたこともあり、欧州中心の条約だが、国際連合欧州経済委員会には欧州以外の国である先進国も加盟しているため、ソフィア議定書は、米国、カナダなどの日本を除いた加盟国49カ国が批准している(日本は批准していない)。

日本における対策[編集]

日本においては、酸性雨対策などが盛り込まれた大気浄化法が改正を繰り返しながら、存続している。

個人でもできる対策[編集]

それぞれが自家用車をあまり利用せず、バス鉄道などの公共交通機関を利用することは、排ガス排出量削減、すなわち窒素酸化物排出量削減につながる。

参考文献[編集]

  • 室田明『河川工学』技報堂出版2001年1月31日1版10刷発行
  • 渡嘉敷哲ほか『新ひとりで学べる11地学ⅠB』清水書院2003年8月20日第16刷発行