邦題

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邦題とは、外国の作品につける日本語のタイトル。日本題とも言う。

概要[編集]

邦題の付け方には直訳タイプと意訳タイプとがある。意訳タイプのなかには「名訳」、あるいは「迷訳」といわれるものがあり、しばしば人々の関心を引く。

洋画においてはシリーズものに「腰抜け〜」(ボブ・ホープ)や「底抜け〜」マーチン&ルイス)、「沈黙の〜」(スティーヴン・セガール)をつけて主演俳優の一連ものであることを明瞭にし、例えば西部劇ならば「荒野の〜」、恋愛映画ならば「愛と○○の〜」をつけるなど符丁的な役割もはたした。また、チャップリンの初期の短編作品にはタイトルに「アルコール先生〜」と付いていた。音楽ではフランク・ザッパ作品にはその音楽性の多彩さとユニークさから珍妙な邦題が付けられていた。

作品に邦題を付けるのは日本特有の慣習と思われがちだが、例えば坂本九の「上を向いて歩こう」がアメリカでは「SUKIYAKI」として発売されるなど、国外の作品が直訳ではなく、その国で親しまれるような言葉に改題されるのは日本特有の現象ではない。

邦題の変化[編集]

洋画[編集]

時代が進むにつれていわゆる横文字への抵抗がなくなり、いわゆる「大作」と呼ばれるもの、その方向での広報を意図する作品には独自の邦題を付けず、原題を単にカタカナ表記にしたものが登場するようになった。また、製作会社によっては邦題を付けることを禁止することを前提として上映契約を締結している場合もある。ただし、原題の複数形が単数形になっていたり、定冠詞副詞が省かれたりするなど、あくまでも日本人が読みやすい形に整形されるので必ずしも原題そのままではない。これに関しては、題そのものの意味が失われるため批判も多い(a littleやa kind ofなどはaのあるなしで全く意味が変わるなど単語の有無は大きいため)。

ただし、原題を使う邦題の場合、日本人が認識する意味で読み取った場合に、例えば『プライベート・ライアン』の場合、"private"が軍隊の階級である二等兵として解釈されず、一般的に知られる意味で「私的なライアン」のように本来の意味とは違う形で解釈されてしまうことがある。そのため、原題のイメージを損なわないまでも、意味が分かる邦題をつけるべきとも考えられる。ただ、現在でもナンセンスコメディーホラー映画(特に「スプラッター・ムービー」と呼ばれるもの)のようなストーリーの芸術性よりもエンターテイメント性を重視した作品においては、日本独自のタイトルが付けられる場合が多い。

また、最近では(おもに1990年代後半以降)、「一見外国語表記だが、原題とは全く違う」邦題が付けられることも増えてきている[1]

なお、近年「イメージが合わない」「別の意味に取られる」「ダサい」などの理由で邦題を消去するケースが増えてきている。例として、クイーンの『ドント・トライ・スイサイド』(本来は「自殺なんてするんじゃない」という意味だが、「自殺志願」というまったく逆の意味の邦題が付いていたため)・『ナウ・アイム・ヒア(誘惑のロックンロール)』や、シンディ・ローパーの『ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン』(「ハイスクールはダンステリア」という歌詞とはまったく関係ない曲のイメージのみで付けられた邦題に本人から「本来の歌詞のイメージと違う」とクレームが付いたため)などが挙げられる。また、ストーン・ローゼズのアルバム『ストーン・ローゼズ』は『石と薔薇』という邦題があったが、現在ではほとんど使われていない例がある。 他には原題を日本人が言いやすいように一部省略する場合もある(『Indiana Jones』(インディアナ・ジョーンズ)→『インディ・ジョーンズ』)。

韓流[編集]

近年、日本国内での放送が激増している韓流ドラマでも、洋画と同様のことが起きている。韓国のテレビドラマがCSなどの衛星テレビで初放送される場合、(原題)と付けて、直訳のタイトルのまま放送する。その後、BSや地上波で放送されたりインターネットテレビで配信されるに当たって、邦題のタイトルがつけられる。

『冬のソナタ(原題:冬の恋歌)』や『宮廷女官チャングムの誓い(原題:大長今)』のような名訳もあれば、『今日、妻やめます〜偽りの家族〜(原題:料理を整える男子)[注釈 1]』のように迷訳の邦題のために、主軸のストーリー(食堂のオーナーの後継者の青年とヒロインのラブストーリー)と邦題がズレてしまったのもある。

関連項目[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. このドラマではオープニングの漢字ハングル交じりのタイトルで「男子」と漢字で出ながら、邦題のどこにもそれがないので、ますます迷訳さを増している。

出典[編集]

  1. 「原題? いいえ、日本だけ 外国映画、配給元が『日本オリジナル』」『朝日新聞』2000年8月30日付朝刊、27面。