睡眠不足
睡眠不足(すいみんぶそく)とは、人間の健康状態の一つである。人間の生理的欲求のうち、睡眠欲が満たされていない状態を言う。睡眠負債(すいみんふさい)とも言われる場合がある。これはわずかな睡眠不足を毎日積み重ねてゆくと、借金のように増えていくことを指すためである。
概要[編集]
慢性的な睡眠不足に陥った場合、食欲を抑制するレプチンというホルモンが減少し、食欲を増進させるグレリンが増加する場合がある。睡眠をつかさどる生物時計は脳の視床下部にあり、ここは食欲などの摂食にも深く関与している。睡眠が不足することで生体リズムが崩れ、太りやすくなると考えられている。「寝てばかりいると太る」といわれるが、最近の研究ではむしろ逆の可能性が指摘されている。
ただし、だからといって寝すぎが良いわけではない。過剰な睡眠は脳を弛緩させ、働きを鈍くさせる可能性も高まる。健康維持のためには程よい適度な睡眠が良いのである。
個体への影響[編集]
夜中を朝まで起きて過ごすことを、オールするというが、そのまま、翌日の学校や仕事に向かう人がいる。何かしら、授業なり仕事に影響があると思われる。漫画家などは、描いている椅子の上で仮眠をとることも珍しくないらしいが、いずれも短命になる恐れがある。
また、睡眠不足を重ねると癌細胞が増殖しやすくなる。本来なら癌細胞を攻撃するはずの免疫細胞が、睡眠不足の場合には癌細胞の増殖を手助けするようになる可能性があるという[1]。
睡眠負債は免疫システムの働きに影響を及ぼし、結果として癌のリスクを高めているという。
日本では睡眠時間と乳癌の発症リスクの関係を調査した研究で、平均睡眠時間が6時間以下の女性は、7時間寝ている人に対して乳癌のリスクがおよそ1.6倍になることが判明している[2]。
また、睡眠中にはアミロイドベータと呼ばれる脳のゴミが排出される。このアミロイドベータとは認知症の最大の原因であるアルツハイマー病の原因物質とも言われており、発症の20年前から30年前にかけて蓄積されるとされている。つまり、働き盛りの人間は十分な睡眠をとっていない場合、数十年先に認知症になるリスクを高める恐れがあるということになる[3]。
社会への影響[編集]
慢性的な睡眠不足の人が社会人の中に少なくない数いると思われる。社会全体が、寝不足を許容していることで、寝不足による能力減退が見えにくくなっている。あるシンクタンクによると、日本の2016年度の経済的損失は14兆円とも言われている。
解決法[編集]
睡眠不足・睡眠負債は単純にこれまでより長く寝ること、平日の睡眠時間を現在より少しだけ多めにして、週末も同じ時間をキープする、だけで解決される。逆に週末だからと寝だめしたりすると、かえって生活リズムを乱して平日の睡眠時間に支障が出て、かえって睡眠不足や睡眠負債を増やすことになる。
脚注[編集]
関連項目[編集]
- 正義中毒 - もしかして睡眠不足が原因なんじゃ…?
外部リンク[編集]
- "How Much Sleep Do You Really Need?", U.S. National Sleep Foundation
- National Sleep Foundation 2005 Sleep in America Poll
- Why Do Humans and Many Other Animals Sleep?
- Effects of Sleep and Sleep Deprivation on Catecholamine And Interleukin-2 Levels in Humans: Clinical Implications
- Effects of Sleep and Sleep Deprivation on Interleukin-6, Growth Hormone, Cortisol, and Melatonin Levels in Humans
- Sleep Deprivation Julian Lim and David F. Dinges, Scholarpedia, 2(8):2433. doi:10.4249/scholarpedia.2433