市松人形
市松人形(いちまつにんぎょう)は、着せ替えのできる日本人形、伝統工芸品。別名はやまと人形、東人形、京人形。関西地方ではいちまさんと呼ばれている。
概要[編集]
市松人形のモデルは5歳から6歳の幼い子供であり、女の子はおかっぱ頭で着物を身につけており、男の子は羽織りと袴を身につけているのが一般的。また男の子タイプは明治時代から登場するようになった。主な産地は愛知県。
1955年のパリ万博博覧会に出品されたビクス・ドールは市松人形の影響されて作ったものだと言われている。
必要なくなった市松人形は、神社で供養するのが基本である。また人形感謝サービスに供養してもらうのが人形にとっても嬉しいため。他の方法としては寄付、リサイクルショップ、オークションサイトなどで引き取ってもらうのも一つの手である。
歴史[編集]
前身は平安時代からあったとされる。室町時代に「抱き人形」として公家の子供が遊ぶための人形が登場した。
名前の由来は、諸説あるが、江戸時代の歌舞伎役者・佐野川市松に似せた人形が作られていたことから「市松人形」として名付けられた。他の説として当時「市松」と言う名前の子供が多いかったため、親孝行な姿の子供の姿を模したことから「市松人形」と名付けられた。もう一つは市松模様の衣装を着せていたから。
明治時代になると、笑顔の表情が笑顔のものや顔が赤ちゃんのような市松人形が作られるようになる。大正時代にはレベルが上がり、顔に特徴があるものが作られた。この時代は嫁入り品として縫製練習用として使われていた。
1927年の春に日米親善の一環としてアメリカ合衆国から一万体以上もの「青い目の人形(友情人気)」が日本全国の幼稚園や小学校に送られていた(ビクス・ドールも少数あった)。お礼として日本からは「答礼人形」として大型の市松人形(約81センチ)58体をアメリカ合衆国の各州に送った。コンクール形式として送られるものであるため答礼人形制作のために多くの人形師が参加した。100体の中から一等を獲得したのは平田郷陽によって制作された市松人形。これによりアメリカ合衆国では一時期人気を得ていたがおもちゃとして復旧はされなかった。
江戸時代から昭和時代までは裸の人形を購入し、着物は購入者が縫って着せ替えする風習が主だった。
主な材料と構造[編集]
材料[編集]
主な材料として頭部に桐塑や木、手足に胡粉(蛤粉)を塗り、胴体はおがくずを詰め込んだ布で作られている。市販用のものは頭部が石膏で胴体がポリウレタンでできているものが多い。また古い市松人形は、顔の胡粉が何十年も硬化して、白磁のような艶を生み出し、普通の人間のように生きているかのような表情になっている。
構造[編集]
昭和時代初期までは着せ替えができるタイプもあり、「三つ折れ市松人形」とも言い、手足、首、肘、膝が自由に動くよう作られているものが多く、正座できる市松人形も多かった。現在で言うと、フィギュアやリカちゃん人形のようなものである。そのようなタイプは人形師が制作しているため、伝統工芸品として現在販売されている。しかし、現在は観賞用として関節が動かせないものが多く、台に固定され、ガラスケースに入っている市松人形が市販で販売されている。
髪が伸びる理由[編集]
よく市松人形はホラー作品などに使用されたりして怖がられたりする。その中で一番怖いと言われているのは「髪が伸びる」という現象である。髪が伸びる原因としてこれは粗悪品、経年劣化による髪のよれなどが挙げられている。
市松人形の髪の毛は主に絹糸や合繊が使用されている。絹糸や合繊を頭上に麩糊で植え込んで作られる。また長い期間による収納や触り続けたりすると、麩糊が剥がれて何本か抜け落ちたり、髪の毛が途中で引っかかったりすると髪が伸びているように見えてしまう。
江戸時代に作られた初期の市松人形は、髪の材料として人毛が使われていた。しかし、戦後になってから絹糸や合繊が使えるようになっため、人毛は使われなくなった。
北海道岩見沢に所在する萬念寺に髪が伸び続けている人形「お菊人形」が保管されている。
またホラー作品や心霊関連で怖がられる市松人形だが、リカちゃんやフランス人形また用途は違うがラブドール感覚で見ると怖い印象は薄くなる。なぜなら市松人形も綺麗な人形であるからだ。恐る心を忘れて購入するのが良いだろう。
用途と目的[編集]
ひな祭り[編集]
3月3日のひな祭りに女の子の成長をお祝いするためにひな人形と一緒に飾られる。ひな人形と同じく、炎厄と病気や怪我から守るためである。また次女からひな人形が購入することが厳しい場合に購入される。地域によって異なるが、ひな人形は母親が購入し、市松人形は父親が購入するのが風習。
観賞用[編集]
市松人形は行事のための人形ではなく、日本人形の一種であるため、インテリアや観賞用として飾るのも可能である。ただし、直射日光が当たりやすい所に飾るのは色が褪せてしまい、人形がかわいそうなのでNG。またプレゼン用として購入されることも多い。
現在の市松人形[編集]
材料に拘っている10万円代からの高級品や手のひらサイズの可愛いもの、安価で自分で組み立てる木目込みの手芸キット品などがある。
時代の流れによって、市松人形は昔から馴染みのあるおかっぱ頭以外にも茶髪などの現代的なヘアスタイルの人形が作られている。また圧倒的なビジュアルを誇る市松人形は久月の「愛ちゃん」である。動物の市松人形なども販売されている。