原田橋
原田橋(はらだばし)は、静岡県浜松市天竜区(旧佐久間町)にある、天竜川に架かる国道473号線[注釈 1]の橋。
概要[編集]
佐久間ダムと新豊根ダムを直結する県道が未開通のため、浜松市北部と愛知県を結ぶ広域幹線道路の役目を負う。また、天竜川上流の飛龍橋では取付け堤防道路を欠き、大千瀬川上流の川合橋では取付け堤防道路や東西連絡の道路を欠くため、佐久間地域にとって重要な生活道路、緊急輸送路にもなっている。
現在の橋は、2020年に開通した4代目橋梁。2015年、斜面土砂崩壊により、2代目橋梁が崩落して仮設道路が建設され、建設途上であった3代目橋梁も倒壊して、完工を放棄して下流に作り直した。
初代[編集]
1915/4/22開通の、木造トラス橋。長さ111.8m、幅2.4mであった。佐久間ダムの建設に伴い、2代原田橋へと架け替えられた。
2代[編集]
1953年に東京鐵骨橋梁製作所と間組により設計・製作された吊橋。1956年5月開通。鋼製トラス吊橋で、両岸に建てられた2つの鉄塔間をケーブルで吊る。鋼重150.284トン。長さ138.8m、幅5.5m、鉄塔の間隔は137.6m。
補強工事[編集]
2012年4月、橋を吊る主ケーブルの一部に破断が見つかり、通行止めとなった。すぐに河川敷に緊急通行路を設け、補強工事を実施。ケーブルを増設するとともに、ひずみセンサーや監視カメラを設け、異常発生時にはすぐに通行を取り止める態勢をとった。6月から片側相互通行による暫定供用となったが、8トン車以上の大型車の通行は禁止された。片側相互通行のためもあり、常時警備員が監視していた。
今後とも同橋を維持し続けるのは難しいと判断され、3代原田橋を建設することを決定、10mほど下流の位置に建設が開始された。
2代原田橋の崩落[編集]
2015年1月31日午後5時8分ころ、付近の斜面が崩落。原田橋と、建設中であった新原田橋(3代)を巻き込み、原田橋は片方の鉄塔が折れ倒壊した。斜面はモルタルでの覆工、落石防止ネットが施されていたが、現場では2日前より小規模から中規模な崩落が複数回発生しており、その調査に浜松市天竜土木整備事務所の職員5名があたっていた。そのうち橋の上にいた技監・主任の2名が10m下の川へと橋桁ごと転落、帰らぬ人となった。小規模な崩落のため橋は通行止めになっており、そのほかに巻き込まれた人はいなかった。
事故後のボーリング調査により、斜面の岩盤が経年劣化により緩んでおり、崩落が起きやすい状態であったことが分かった。しかし、豪雨もない中、落石だけを根拠にこの規模の崩落を予測することは難しく、特異なケースであったとみられている。
崩落の規模は、市のヘリコプターによるレーザーを使った測定で、崩落土砂8,000m3と推測されている。崩落の高さは70m、幅は30mの、大規模なものであった。
崩落後の通行[編集]
原田橋の崩落により、ふだん15分程度で往来できた佐久間町の浦川地区と佐久間地区が分断され、JR飯田線を利用するか、車だと2時間30分を要して迂回する事態になった。そこで、住民の大きな生活上の負担を軽減するため、2月4日、天竜川の河川敷に長さ1.8km、幅4mの仮設道路の建設に着手。直径1mのコンクリート製土管5本を並べ、その上に盛り土をすることで川を渡る簡易な構造であった。ダムの放流、大雨もしくは洪水警報の発令で通行止めとなり、増水するとよく損壊したが、同年4月27日に、より堅牢な潜水橋を着工、舗装も行った。
片側相互通行であり、ドカジェネによる照明付き。ただし潜水橋であり増水時には水に覆われるため、使用期間中の5年間で66回の通行止めがあるなど、通行不能となる場合も多かった[1]。 従前はブログにて、2019年9月現在は専用のTwitterアカウントにより通行規制情報が伝えられていた。
2代原田橋崩壊前に新橋梁を含む佐久間水窪道路の基本計画は決定済だったが、現在地での再建を望む住民意見が多かったため、上流等の既存橋梁の活用は行われず、新々原田橋の開通まで仮設道路を使っていた。
3代原田橋(仮称・新原田橋、未成)[編集]
#補強工事にあるように、2代原田橋が老朽化し、新たに大型車の通行が可能な橋梁が必要となったため、単弦ローゼ橋という種類のアーチ橋として設計、2013年11月に着工された。位置は2代原田橋から10mほど下流であった。
上述の土砂崩れによって、建設中だった橋げたの一部がずれ、また仮橋脚6本中3本が壊れ、残り3本も傾きが発生。地盤が緩み、再度土砂崩れが発生する可能性があることから、この場所での工事続行は諦め、未成のまま2015年8月中に撤去工事に入った。
4代原田橋(仮称・新々原田橋)[編集]
土砂崩れにより、2代原田橋と、建設中であった3代(新)原田橋を失った浜松市は
- 従前の原田橋と同じ場所に再び建設
- 従前の原田橋より200m下流に新橋を建設し安全を確保する
- 従前の原田橋より500m下流に新設し国道の線形を直線的にする
の3案より検討を進めたが、安全性と経済性から2.案が採用され、2016年10月に着工した。 2019年4月11日、橋げたがつながり、約3年4ヶ月後の2020年2月29日に開通した。2020年3月下旬までは、片側相互通行を続け、橋と道路をつなぐ部分の整備を実施する。
全長284mの箱桁橋である。歩道は車道の路肩部分に設けられ、分離施設はない。
別の橋[編集]
三遠南信自動車道の佐久間川合インターチェンジから水窪インターチェンジまで自動車専用道路(水窪佐久間道路)が事業化されることになったため、国費で天竜川に新たな橋が架設される予定である。
出典[編集]
- 日経BP社「日経コンストラクション」
- 2015年5月11日刊より「時事 崩落した原田橋の仮設道、上流のダム放流で流失」
- 2015年7月27日刊より「原田橋の倒壊 静岡県 落石を観察しても崩落は予知できず」
- 土木学会 鋼構造委員会歴史的鋼橋調査小委員会「歴史的鋼橋集覧 第1集 下巻」より「原田橋」
- 朝日新聞 2015/2/1 朝刊 33面
- 朝日新聞静岡版(聞蔵IIより)
- 2012/6/22 朝刊 33面
- 2012/6/27 朝刊 29面
- 2015/2/4 朝刊 21面
- 2015/2/5 朝刊 21面
- 2015/2/10 朝刊 25面
- 2015/2/13 朝刊 25面
- 2015/4/28 朝刊 29面
- 2015/7/30 朝刊 29面
- 2016/1/28 朝刊 29面
- 中日新聞
- 2013/1/7 朝刊 2面
- 2019/4/20 朝刊静岡県内版 16面
- 毎日新聞 2013/11/20 朝刊静岡地方版 25面
脚注[編集]
- 注釈
- ↑ 長野県道・愛知県道・静岡県道1号飯田富山佐久間線の重複区間でもある。
- 出典