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五度圏
五度圏(ごどけん、英:circle of fifth)とは、平行調関係の長調と短調の各調の主音・調号・トニックコードといった音列を完全5度ずつ上げ下げするように並べて、12種類の調号を円環、円形、環状の表にしたもの。
基本概念[編集]
五度圏は、途中で異名同音関係を利用し、環を形成している。調号#が1つ増えるごとに、主音は完全5度上の音へと移り、調号♭の数が1つ増えるごとに、主音は完全5度下の音へと移る。角度で表すと、30°ずつ進んで行くことになる。5度音程を12回繰り返すことにより、途中で異名同音を含んで合流し、響きの上で存在する12の調号・全ての調号を経由して一回り・一周し、元に戻り、循環図ができ、円になる。
調性との関係[編集]
12の各長短調は、ダイアトニックコードなどの和音の構成音の共通性や和音機能の関連性を持って、属調と下属調を主音とする調と近親関係にある。この関係が連鎖したものが「五度圏」となる。
五度圏の位置が同じ調号の長調・短調は、平行調と呼ばれる。平行調同士の場合、五度圏では外側が長調、内側が短調に配置される。
五度圏の向きの配置は、左右が逆さまになっているタイプのものもあり、左回りか右回りかの決まりはない場合があるので要注意。右回りに一つ進むと5度「下がる?上がる?どっち?」ということになる。調号無しの調を基準に、右に進んだときに♭系になるものは、右回りに進むと5度下がり、左回りに進むと5度上がり、左回りに5度ずつの上昇で進んで回るという意味である。属調の関係にある調を左隣に並べたもの。右隣りは下属調、左隣は属調となる。これは時計に見立てた「調性」の進行や、ドミナントコード(Vの和音)→トニックコード(Iの和音)のコード進行「全終止、ドミナント終止」のように、バスが5度下行=4度上行して平行移動する「強進行」に相当するものと関係している。下属調が5度下の調という解釈や、「4度上がる」の転回音程が「5度下がる」という解釈になぞられたものである。音列が左回りに5度ずつ上がり、右回りは5度ずつ下がっていることから、五度圏と呼ばれる。
五度圏で、ハ長調から♭系の調に3つ進むと、ハ長調から右回りに3つ移動し、変ホ長調になる。半音単位だとなので、ハ音から低い方に9音進む、即ち変ホ音になることに相当する。
余談として、四度圏は誤表記で、通常の表記ではない。五度の転回音程が四度だからである。通常の表記なら「五度圏」と書かれる。上記の内容は、左右反転型の五度圏といえる。
ある主音が♭系に進むものは、強進行ずつ進むことである。
属調、下属調[編集]
ある調から左右を見ると、五度圏で隣り合った調同士はお互いに、「主調」に対して、「属調」との関係、「下属調」との関係になっている。これを近親調という。五度圏の特定のキーをトニックとし、隣接する音は、♯系に1つ進んだ調を「属調」、♭系に1つ進んだ調を「下属調」といい、それぞれ、ダイアトニックコードのドミナント、サブドミナントの役割を果たす。
例えば、ハ長調(C)の属調はト長調(G)、下属調はへ長調(F)である。
テトラコードとの関連[編集]
ハ長調の音階では、「ド.レ.ミ.ファ」と「ソ.ラ.シ.ド」の2つが、同じ形(同型)のテトラコードで構成されている。テトラコードは、もう1つあり、「ミ.ファ.ソ.ラ」と「シ.ド.レ.ミ」の2つも同じ形である。
ハ長調の後半のテトラコード「ソ.ラ.シ.ド」を、前半のテトラコードに置き換えると、レから同型のテトラコードが組み立てられ、調号♯1個のト長調になる。ハ長調の前半のテトラコード「ド.レ.ミ.ファ」を、後半のテトラコードに置き換えると、調号♭1個のヘ長調になる。ハ長調の「ド.レ.ミ.ファ」は、ヘ長調の一部でもあり、ハ長調の「ソ.ラ.シ.ド」は、ト長調の一部でもある。テトラコードが2つとは、長調の音階は、2つの音列の重心を持っている音階である。テトラコードは、4つの音による音列でできている。
五度圏では、調の仕組みは、メジャーコードの長3度の音程が調や調号の決定を表す音として重要で、長3度のうち、フラット系は長3度の下側の音が進み、シャープ系は長3度の上側の音が進む。♭系では、長3度の下側の音がサブドミナントの影響を受け、♯系では長3度の上側の音がドミナントの影響を受ける。長3度の上側の音が導音になるからである。
異名同音との合流[編集]
調号無しの調性「ハ長調・イ短調」と対角線の位置にある調は、調号♯6個「嬰ヘ長調・嬰ニ短調」またはその異名同音、調号♭6個「変ト長調・変ホ短調」となり、異名同音関係が見られる調となる。五度圏の円の対角線の位置で、トニックコード(主和音)に置き換えた場合、「裏コード」になる。五度圏の底辺部には1つの異名同音調が配置される。
♭系に進めていくと、C→F→B♭→E♭→A♭→D♭→G♭となる。♯系に進めていくと、C→G→D→A→E→B→F♯となる。♯系に6つ進むと、♭系に6つ進んだ調と異名同音関係が見られ、異名同音処理され、♯系と♭系の調が異名同音関係で合流することがわかる。
五度圏の右回りには、完全5度下行する順序で、♭系の調で、調号♭の数が6個に達するまでの調が並ぶ。五度圏の左回りには、完全5度上行する順序で、#系の調で、調号#の数が6個に達するまでの調が並ぶ。調号の付けられる音の順序は、♯系では、♯の調号はファ.ド.ソ.レ.ラ.ミという5度上の順に、♭の調号はシ.ミ.ラ.レ.ソ.ドという5度下の順に付き、ここにも上行5度と下行5度の区分ができており、♯と♭でちょうど同じ音を逆にたどっている。
主音を5度ずつ下げていくと、調号♭が増え、そのまま繰り返すと、異名同音変換で♯系の調に入り、一周回る。
音の高さの調が半音違いで近いと、五度圏では五度×5個分離れた遠隔調になる。調号無しのハ長調から見て、半音上下にずれるだけで、♯や♭がたくさん付く。五度圏の調が1つ違いで近いと、音の高さは遠くなる。五度圏はある調から他の調への「遠隔度」を分析するのに用いられる。
音程的特徴[編集]
五度圏のできかたは、オクターブから分析し、1オクターブの中には12個の半音があり、音程を12回繰り返すとオクターブの同じ音名になるのは、半音と4度と5度の連続である。完全5度の周波数比は、純正律の2:3とほぼ一致し、2:3にすごく近く、平均律では2:2.997の関係にあるので、一番調和する音程である。平均律の5度音程を12回繰り返すと元の音に戻る。ただし、純正律の2:3を12回繰り返すと、正確に計測した場合は完全には元には戻らず、ピッチに+23セントのズレが発生する。
5度上昇の音程は、オクターブ変えると、4度下降の音程になる。5度上昇の音程をそのまま繰り返しただけでは、とてつもなく高い音になるので、ところどころでオクターブ下げて、オクターブを変えて、同じオクターブ番号の範囲内で高さを合わせている。オクターブ表記は、例として、真ん中のド(C3)~B3までのアルトオクターブの範囲に合わせて見ると、C3を起点とした場合、C3→G3→D3→A3→E3→B3→F#3→C#3→A♭3→E♭3→B♭3→F3→C3となり、C3→G3までは5度上昇し、G3→D3までは4度下降することになる。これを音階として並べると半音音階ができ上がる。
音名では、例として、「ド」を起点として、異名同音変換無しで♭系に進み=5度下降すると、ド→ファ→シb→ミb→ラb→レb→ソb→ドb→ファb→シbb→ミbb→ラbb→レbbとなり、ドの異名同音関係にあるレbbが得られ、ダブルフラットを使用しなければならず、複雑な記譜となってわかりにくくなる。
鍵盤との関係[編集]
ピアノの鍵盤で、ある音から隣の鍵盤、鍵盤での隣同士の音程を「半音」と呼ぶ理由は、黒鍵を挟んだ2つの白鍵間の音程を「全音」としていて、その半分の音程を半音としているからである。例として、シとドの音程は、調性を表す五度圏では、ドはシから♭系の調性に5つ進んだ音で、シはドから数えて#系の調性に5つ進んだ音で、音の高さが半音違いだと、調性感が遠く、遠隔調の関係になる。
全音は、ピアノの鍵盤で、ある音から2つ離れた距離の音程である。例として、ドとレの音程は、調性を表す五度圏では、ドはレから♭系の調性に2つ進んだ音で、レはドから#系の調性に2つ進んだ調で、音の高さが全音違いでは、近親調の関係にある。周波数比は概ねで、簡単な整数比に近い。
円環グラフ[編集]
五度圏