ユダヤ教

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ユダヤ教とは、古代のユダヤ人の間で始まった唯一神ヤハウェを神とする宗派である。ユダヤ教の起源は旧約聖書より歴史的に古く、新約聖書はユダヤ教の経典ではない。

歴史[編集]

ユダヤ教の起源は紀元前13世紀とするのが一般的である[1]。ユダヤ教の前期は「古代イスラエルの宗教」といわれ、他の宗教と比べて際立った特徴はなかった。紀元前6世紀頃のバビロン捕囚の時期から、ユダヤ教の特徴が表れたが、それ以前の段階もユダヤ教と呼ぶ人も多い。

紀元前13世紀とは「出エジプト記」に書かれている通り、指導者(預言者)モーセに率いられたユダヤ人が奴隷状態から脱出した時期である。このことはユダヤの神ヤハウェが救い出したと考え、ヤハウェ信仰が確立した。ヤハウェを神とすることの認識が一致したのは、紀元前13世紀である。

紀元前のユダヤ教には3つの分派があった。パリサイ派サドカイ派エッセネ派である。

正規の経典[編集]

ユダヤ教の経典は「ユダヤ教聖書」と呼ばれ、旧約聖書とは言わない。「旧約聖書」の呼び名はキリスト教からの一方的な呼び名とされる。「ユダヤ教聖書」には、3区分がある。 どこまで「ユダヤ教聖書」というかは諸説がある。キリスト教の「旧約聖書」とは順番が異なる。

  • 律法(トーラー、Torah)
    • 創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記の五書を指す。
  • 預言書
    • 前預言者は次の順である:ヨシュア記、士師記、サムエル記上下、列王記上下
    • 後預言者は次の順である:イザヤ書、エレミヤ書、エゼキエル書、十二預言書
    • 十二預言書は次の順である:ホセア書、ヨエル書、アモス書、オバデヤ書、ヨナ書、ミカ書、ナホム書、ハバクク書、ゼファニヤ書、ハガイ書、ゼカリヤ書、マラキ書
  • 諸書
    • 詩編、ヨブ記、箴言、メギロート:ルツ記、雅歌、コヘレトの言葉、哀歌、エステル記ダニエル書、エズラ記、ネヘミヤ記、歴代誌上下

タルムード[編集]

タルムード(ヘブライ語: תלמוד‎、英語:Talmud)は、モーセの律法に関する口伝や解説である。「教育」「労働」「食事」「死生観」「性」「婚姻」「商法」など数多くのラビの問答を集めたもの。旧約聖書には収められていない。

タルムードの構成[編集]

  • ズライーム(種子)の巻  農業と農産物の暦、犠牲、祈祷
    • 1:ベラホート(祈りについて)
    • 2:ペアー(畑について)
    • 3:デマイ(穀物について)
    • 4:キルアイム(交配について)
    • 5:シュヴィイート(休耕の年について)
    • 6:テルモート(祭司への贈物について)
    • 7:マアスロート(十分の一税について)
    • 8:マアセルシェニ(神殿への捧物について)
    • 9:ハッラー(供物について)
    • 10:オルラー(果樹の扱いについて)
    • 11:ビックリーム(初物の果樹について)
  • モエード(季節)の巻  安息日、祝日、断食日等
    • 1:シャバット(安息日について)
    • 2:エルヴィーン(安息日の諸制限について)
    • 3:ペサヒーム(祭の規制について)
    • 4:シュカリーム(供物の額について)
    • 5:ヨーマ(贖罪日とその祭について)
    • 6:スッカー(仮庵の祭について)
    • 7:ベーツァー(祭日の規則について)
    • 8:ローシュハシャナー(新年祭の祝について)
    • 9:タアニート(断食について)
    • 10:メギラー(エステル記の朗読について)
    • 11:モエードカタン(半祭日の規定について)
    • 12:ハギガー(三つの巡礼祭について)
  • ナシーム(婦人)の巻 結婚、離婚、夫婦関係等
    • 1:イェヴァモート(レヴィラート婚について)
    • 2:ケトゥーボート(結婚契約について)
    • 3:ネダリーム(誓いについて)
    • 4:ナズィール(ナジル誓願について)
    • 5:ソーター(女の不倫について)
    • 6:ギッティーン(離婚について)
    • 7:キドゥシーン(婚約について)
  • ネズィキーン(損害)の巻 民法、刑法の手続きと口伝律法の歴史的権威等
    • 1:バヴァカマ(市民法・刑法について-1)
    • 2:バヴァメツィア(市民法・刑法について-2)
    • 3:バヴァバトラ(市民法・刑法について-3)
    • 4:サンヘドリン(法廷・裁判機構について)
    • 5:マッコート(体罰について)
    • 6:シュヴオート(法律上の誓言について)
    • 7:エドゥヨート(証言について)
    • 8:アヴォーダーザラー(偶像崇拝について)
    • 9:アヴォート(父祖の遺訓について)
    • 10:ホーラヨート(訓示・指導について)
  • コダシーム(聖物)の巻 神殿、祭司の職務等
    • 1:ゼヴァヒーム(生贄について)
    • 2:メナホート(供物について)
    • 3:フリーン(食物の規定について)
    • 4:ベホーロート(家畜の初子について)
    • 5:アラヒーン(誓言の実行について)
    • 6:テムラー(生贄の交換について)
    • 7:ケリトート(追放罰について)
    • 8:メイラー(聖物の誤用について)
    • 9:タミード(日々の捧物について)
    • 10:ミッドート(神殿の仕組について)
    • 11:キンニーム (鳥の捧物について)
  • トホロート(清潔)の巻
    • (祭儀的な潔・不潔等)
    • 1:ケリーム(物の不浄について)
    • 2:オホロート(死者の天幕退去について)
    • 3:ネガイーム(らい病への清めについて)
    • 4:パラー(死への清めについて)
    • 5:トホロート(儀礼的な清浄について)
    • 6:ミクヴァオート(儀礼用水槽について)
    • 7:ニッダー(女の生理の不浄について)
    • 8:マクシリーン(不浄の液体について)
    • 9:ザヴィーム(不浄な男について)
    • 10:デヴールヨーム(一日の浸礼について)
    • 11:ヤダイム(手の清め方について)
    • 12:ウクツィーン(茎の長さの不浄について)
  • その他の小篇
    • アヴォートデラビナタン、スマホート他

新約聖書[編集]

  • 新約聖書はユダヤ教の経典ではない。ユダヤ教は、新約聖書がユダヤ教徒に宗教的権威を持っているとは考えていない。もともとイエスキリストはユダヤ人であり、ユダヤ教徒であった。キリスト教はユダヤ教の一分派として始まったからである[1]
  • マタイによる福音書によれば、イエス・キリストは当時のユダヤ教の一派のパリサイ派には特に恨みを買っていたようで、復活も無かったことにされている[2]

脚注[編集]

  1. a b 加藤隆『一神教の誕生』講談社
  2. マタイによる福音書(口語訳)27章62節から28章15節”. ウィキソース (2018年5月29日). 2018年11月20日確認。

関連項目[編集]