鹿児島老夫婦殺害事件

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鹿児島老夫婦殺害事件(かごしまろうふうふさつがいじけん)とは、2009年6月19日に鹿児島県鹿児島市で発生した、夫婦二人が亡くなった強盗殺人事件である。

概要[編集]

2009年6月18日から19日にかけて、鹿児島市下福元町に住んでいた老夫婦が殺害された。鹿児島南警察署は、外部からの侵入の形跡があったことから、殺人事件として捜査を開始。司法解剖の結果から、何回にもわたってスコップで殴打したことによる、脳障害が原因と断定。室内整理ダンス等からSの指紋が検出されたことから、Sを逮捕。被告は犯行を一貫して否認したものの、検察は7月20日にSを住宅侵入罪及び強盗殺人罪起訴した。

裁判経過[編集]

裁判では、弁護側は犯行を一貫して否認。スコップで何度も殴打しているうえに現金が残されていたことなどから強盗ではなく怨恨が目的の犯行だと主張。被告は現場に立ち入ったことはなく、被告と一致したとする指紋については、汚染や粘着シートから転写した可能性があると主張した。検察側は、破れた窓ガラスの網戸や整理ダンス、ガラス片から指紋が発見されたことを犯行の証拠と主張。Sが金銭面で生活苦に陥っていたため、強盗目的で犯行に及んだと主張した。本件は、状況証拠しかなく、被告が無罪を主張したことから、当時の裁判員裁判としては最も長い審理期間がかかり、裁判は40日間にわたった。

2010年12月10日に鹿児島地裁平島正道裁判長)は、無罪判決(求刑死刑)を言い渡した。判決では、現場から発見された指紋やDNAの採取時の写真がないなどの立証の甘さがあるものの、窓ガラスや整理ダンスから見つかった指紋が被告の者と一致したという結果については信用ができるとして、弁護側の転写や汚染の可能性の指摘を否定。しかし、それだけではSが過去に被害者宅に行ったことがあるという推測しかできず、殺害にかかわったとは言えないとした。整理ダンスの他の引きだされた跡のある場所や凶器になったスコップからは指紋が見つかっていないことから、第三者がこの状況を作り出した可能性を指摘。また、スコップで何十回にもわたって殴打されているうえに分かりやすい場所にある貴重品が手つかずだったことから強盗ではなく怨恨を目的としていた可能性があること、当時70歳と高齢だった被告がスコップで何十回にもわたって殴打することができるのか疑問があることを判決理由に挙げた。また、検察側の不審な第三者の痕跡はなかったという主張に対しても、発見されたDNA868点、指掌紋446点の中で不明な指紋が多かったことなどから、第三者の関わった痕跡がないとはいえないとした。

検察側はこの判決を不服として控訴。しかし、福岡高裁宮崎支部で審理中に、Sが死去。刑事訴訟法により、2012年3月27日に公訴棄却された。

その他[編集]

  • 裁判員裁判において審理日数40日は当時最長だったが、現在は結婚詐欺・連続不審死事件の100日が最長となっている。
  • 今回の事件は、裁判員裁判として初となる死刑求刑事件に対する無罪判決となった。再審無罪判決となった例を除けば、最高裁に記録の残る1958年以降は、本事件より前に死刑求刑事件において一審で無罪判決が言い渡された例は9件のみとかなりレアなケースである。

参考文献[編集]