越境乗務
越境乗務は、鉄道乗務員が会社や乗務区の管轄範囲の外の区間でも乗務を行うこと。
実施の理由[編集]
基本的に鉄道乗務員は会社や乗務区の管轄範囲内でしか乗務しない。運転手も車掌も人間であり、覚えられる量に限界があるからである。
だがやむを得ない理由がある場合、越境乗務を行うことがある。その理由としては
- 相手先の会社にその車両を運転できる人間が居ない
- 会社・乗務区の境界駅に列車が止まらない
- 長距離列車において車内トラブルを迅速に解決するため
の3つが挙げられる。
以前は夜行列車を中心に車掌の越境乗務が多数実施されていたが、夜行列車の廃止と東日本大震災後、国土交通省から「なるべく土地勘のある人間を乗務させるように」という通達が成された関係で、越境乗務は激減している。
主な事例[編集]
道南いさりび鉄道・JR北海道[編集]
JR函館本線函館-五稜郭間において、道南いさりび鉄道線の直通列車に限り道南いさりび鉄道の乗務員が越境乗務する。
なお、道南いさりび鉄道線は北海道新幹線開業前において、JR江差線であった。
青い森鉄道・JR東日本[編集]
青い森鉄道線八戸-青森間において、JR大湊線の直通列車に限りJR東日本の乗務員が越境乗務する。
なお、青い森鉄道線は東北新幹線開業前において、JR東北本線であった。
青い森鉄道・IGRいわて銀河鉄道[編集]
青い森鉄道線目時-八戸間、IGRいわて銀河鉄道線盛岡-目時間において、両社の乗務員が互いに越境乗務する。
なお、両社の路線は東北新幹線開業前において、JR東北本線であった。
IGRいわて銀河鉄道・JR東日本[編集]
IGRいわて銀河鉄道線盛岡-好摩間において、JR花輪線の直通列車に限りJR東日本の乗務員が越境乗務する。
なお、IGRいわて銀河鉄道線は東北新幹線開業前において、JR東北本線であった。
JR東日本・仙台空港鉄道[編集]
両社の乗務員が互いに越境乗務する。車両と乗務員の所属は必ずしも一致しない。
北越急行・JR東日本[編集]
JR東日本線の区間になる直江津-犀潟間と六日町-越後湯沢間も北越急行の乗務員が乗務する。これは該当する区間の距離が短く、交代させると効率が悪化するためと思われる。
なお、北陸新幹線金沢開業前に運転されていた「特急はくたか」の北越急行線内における担当乗務員は、全てJR東日本の担当であった。
JR東日本・JR西日本[編集]
北陸新幹線において長野-上越妙高間はJR東日本の管轄となっているが、西日本との境界駅になる上越妙高駅に最速列車のかがやきが停車しないため、全列車が停車する長野駅で東西の乗務員が交代する。 ただし上越妙高始発長野方面行きの列車に関してはJR東日本の乗務員が担当する。
JR東日本・鹿島臨海鉄道[編集]
JR鹿島線と大洗鹿島線の境界駅である鹿島サッカースタジアム駅は臨時駅であり通常はすべての列車が通過するため、1駅先の鹿島神宮駅が実質的な境界駅となっている。そのため、JR鹿島線の鹿島神宮-鹿島サッカースタジアム間は大洗鹿島線の乗務員が乗務している。
東武鉄道・野岩鉄道・会津鉄道・JR東日本[編集]
会津鉄道から野岩鉄道・東武鉄道へ乗り入れる気動車列車快速AIZUマウントエクスプレス、トロッコ列車湯めぐり号は野岩・東武に気動車の運転免許を持った運転士が在籍していないため、会津鉄道の乗務員が両社の区間内および片乗り入れのJR只見線区間も運転する。
一方、会津鉄道は電車の運転免許を持った運転士が在籍していないため、野岩鉄道の乗務員が会津鉄道線内でも乗務する。
東急電鉄・横浜高速鉄道[編集]
横浜高速鉄道は運転業務を東急電鉄に委託しており、東急東横線の乗務員がみなとみらい線内も乗務している。
京成電鉄・芝山鉄道[編集]
芝山鉄道は運転業務を京成電鉄に委託しており、京成電鉄の乗務員が芝山鉄道線内も乗務している。
小田急電鉄・箱根登山鉄道[編集]
箱根登山鉄道の小田原-箱根湯本間において、小田急の乗務員が箱根登山鉄道線内も乗務している。
名古屋市交通局・名古屋鉄道[編集]
小牧線と直通運転している上飯田線は開業当初は境界駅となる上飯田駅で交通局と名鉄の乗務員が交代していたが、上飯田線の距離が1kmにも満たないために効率が悪く、2007年から名鉄の乗務員が上飯田線内も乗務している。
JR東海・伊勢鉄道[編集]
名古屋から松阪、伊勢、南紀方面を結ぶ快速みえや特急南紀は名古屋側の境界駅である河原田駅を通過するためにJR東海の乗務員が伊勢鉄道線内も通しで乗務している。
伊勢鉄道線内完結の普通列車は四日市-河原田間はJR東海の区間を走行するが、河原田駅で交代せず、JR東海区間も伊勢鉄道の乗務員がそのまま乗務していて、乗務員も相互乗入れとなっている。
なお、伊勢鉄道線は国鉄時代において、国鉄伊勢線であった。
あいの風とやま鉄道・えちごトキめき鉄道[編集]
あいの風とやま鉄道線の泊-市振間において、えちごトキめき鉄道の車両が乗り入れ、同社乗務員もそのまま乗務する。あいの風とやま鉄道線は一部列車を除いて、泊駅で系統分離されていることに起因する。
また、ラッシュ時間帯には、えちごトキめき鉄道日本海ひすいラインの市振-糸魚川間において、あいの風とやま鉄道の車両が乗り入れ、同社乗務員もそのまま乗務する。
なお、両社の路線は北陸新幹線開業前において、JR北陸本線であり、泊駅での系統分離も無かった。
IRいしかわ鉄道・あいの風とやま鉄道[編集]
IRいしかわ鉄道線の金沢-倶利伽羅間、あいの風とやま鉄道線の倶利伽羅-富山間において、両社の車両が相互に乗り入れ、両社乗務員もそのまま乗務する。
車両と乗務員の所属は必ず一致するように行路が組まれている。
なお、両社の路線は北陸新幹線開業前において、JR北陸本線であった。
IRいしかわ鉄道・JR西日本[編集]
IRいしかわ鉄道線の金沢-津幡間、JR七尾線の津幡-和倉温泉間において、両社の車両が相互に乗り入れる。
JR七尾線直通列車の乗務員は特急列車のみ、全てJR西日本が担当する。
普通列車に関しては2024年3月16日より津幡駅でそれぞれの会社の乗務員へ交代する。
2024年3月15日までは特急列車含めIRいしかわ鉄道線と七尾線へ直通するすべての列車がIRいしかわ鉄道保有車両による運用を含め、全てJR西日本が担当していた。
なお、IRいしかわ鉄道線は北陸新幹線開業前において、JR北陸本線であった。
IRいしかわ鉄道・ハピラインふくい[編集]
IRいしかわ鉄道線の金沢-大聖寺、ハピラインふくい線の大聖寺-敦賀間において、両社の車両が相互に乗り入れ、両社乗務員もそのまま乗務する。
車両と乗務員の所属は必ず一致するように行路が組まれている。
なお、両社の路線は北陸新幹線敦賀延伸開業前において、JR北陸本線であった。
近畿日本鉄道・阪神電気鉄道[編集]
近鉄難波線と阪神なんば線の境界駅は大阪難波駅だが、乗務員交代は1駅先の阪神なんば線桜川駅で行われる。
これは、近鉄の列車が使用する引き上げ線が桜川駅に設置されているためであり、大阪難波-桜川間は営業上は阪神、運行上(列車番号、スマホアプリでの在線位置表示など)は近鉄という扱いになっている。
阪神電気鉄道・阪急電鉄・山陽電気鉄道 (神戸高速線)[編集]
阪神神戸高速線と山陽本線の境界駅は西代駅だが、乗務員交代は4駅手前の阪神神戸高速線 高速神戸駅で行われる。 これは、通過タイプの直通特急が西代駅を通過するためである。なお、大阪梅田方面から新開地で折り返す阪神の列車は、新開地まで阪神の乗務員が、阪神神戸三宮および、阪急神戸三宮まで直通する山陽の列車は、阪神・阪急の神戸三宮まで山陽の乗務員が乗務する。
JR西日本・智頭急行[編集]
特急スーパーはくと号のうち、JR因美線の智頭-鳥取間、JR山陰線の鳥取-倉吉間において、智頭急行の車掌が担当する場合がある。
特急スーパーいなば号は、智頭急行線の上郡-智頭間を含め、全区間をJR西日本の車掌が担当する。
普通列車の全部と特急列車の運転士はそれぞれの会社の境界駅において交代する。
JR四国・土佐くろしお鉄道[編集]
土佐くろしお鉄道中村線窪川-若井間において、JR予土線の直通列車に限りJR四国の乗務員が越境乗務する。
なお、土佐くろしお鉄道中村線は国鉄時代において、国鉄中村線であった。
JR土讃線・土佐くろしお鉄道中村線と直通運転する特急「あしずり」は境界駅である窪川駅において、乗務員は交代する。