走破性

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走破性(そうはせい)とは自動車の性能の一つであり、未舗装道などの悪路を走りとおせる性能を示すものである。悪路走破性とも呼ばれる。

概要[編集]

走破とは「走りとおす」という意味があり、舗装路(オンロード)に比べて条件が悪い未舗装道などの悪路を走りとおすことができる自動車は「走破性がある車」として評価される。特にクロスカントリー車などの本格SUVにおいては重要な指標の一つとされており、どのような悪路でも走ることができるという走破性の良さは他車やカテゴリとの差別化になり、顧客へのセールスポイントになりうるものである。

走破性の指標[編集]

走破性を評価するうえでの指標はいくつかあり、代表的なものにアプローチアングル、デパーチャーアングル、ランプブレークオーバーアングルの3つが挙げられる。そのほか、駆動方式やフレーム構造、またはエンジンの吸気口の高さなどが重要視される。

確認される指標[編集]

アプローチアングル(接近角)
車両前端部(フロントバンパー)と前輪タイヤの前側外周線を結ぶ線と地面の角度
この角度が大きいほどより急な斜面に対して前進で進入できるようになる
デパーチャーアングル(背離角)
車両後端部(リアバンパー)と後輪タイヤの後ろ側外周線を結ぶ線と地面の角度。
アプローチアングル同様、この角度が大きいほど急な斜面に対して後退して進入できるようになる。また、バンパーの張り出しが少なく車高が高いほどアプローチアングル・デパーチャーアングルが大きくなりやすい。
ランプブレークオーバーアングル(斜路走破角)
前後輪の接地点からホイールベース中心にある車体底部までを結んだ角度
この角度が大きいほど障害物を乗り越えたり通過した際に車体底部を当てる可能性が減る。
ホイールベースが短く、タイヤが大径になるほど角度を稼ぎやすい。
駆動方式
基本的には四輪駆動が有利である。また、四輪駆動なかでもパートタイム式であり、センターデフ直結やデフロック機構を有していることが望ましいとされている。次点でフルタイム四輪駆動でLSDを装備しているものが挙げられる。
フレーム構造
本格的なオフロード走行を目的とした自動車は頑丈なラダーフレーム構造のシャーシを有していることが多い。現代の一般的な乗用車のモノコック構造はボディ全体で剛性を確保しており、一部の車体の歪みが走行性能に悪影響を及ぼすことも珍しくない。ラダーフレームであれば頑丈なうえ、ボディの歪みがシャーシに影響することは無いため、フレーム構造も走破性の指標としては重要となる。
タイヤ
一般的な街乗りタイヤやサーキット用のタイヤは舗装路におけるグリップ力を重視しているため、摩擦係数の低い砂利道や泥濘地においてはそのグリップ力が発揮できない。そのため、ブロックタイヤマッドテレーンタイヤが純正で装着されたり、後から装着できる点が重要視される。大径タイヤでも扁平率の低いタイヤではなく、接地圧で地面にタイヤを押し付けてグリップを稼げる扁平率の高いタイヤであることも重要である。
サスペンション
オフロードにおける走破性に着目した場合、乗用自動車であれば古典的であるリジッドアクスル(車軸懸架)方式が好まれることが多い。リジッドアクスルは独立懸架方式とは異なり、左右のタイヤが一つの車軸でつながっているため片側が押し上げられるともう片方が地面に対して押し付けられるという特性がある。そのため、悪路における接地性が上がるほか、頑丈であることから悪路走行の面で有利となる。
その他
これらの他、渡河を想定しているのであればシュノーケルが装備可能であるかどうかも大きな判断材料になるほか、走破性を後から高めることができるか(リフトアップやアフターパーツの装着など)なども重要視される。

走破性はこれらの要素を総合的に勘案して評価されるものである。そのため、市販状態でもそれなりの走破性を持つもの、改造によって走破性が明るみになるものなど、単にどれかが優れているから、どれかの要素を有しているからといって走破性が高いということにはならない点に注意は必要である。例えば大型で重いSUVは制約が少なく悪路走行性に振り切った設計がなされているため走破性は高いものの、障害物に乗り上げた際のダメージは小型で軽いSUVに比べて大きく、車重が軽いほうが走行性能に与える影響は少なくなるということもあり、一概にどちらが優れているとは言い切れないものである。また、タイヤについても単に径の大きさで走破性が左右されることは少なく、地面を確実に捉えて泥の排出性に優れるトレッドパターンと適切に接地圧を掛けられるタイヤ幅、そして適切な空気圧が重要である。

余談[編集]

なお、これらのすべてを満たしたような本格的SUVの場合、舗装路面や高速走行における燃費性や快適性と走破性がトレードオフの関係にあることが多い。頑丈な構造に複雑な四輪駆動システムが加わり、車重は重くなることで燃費性能は悪化する。また、ランプブレークオーバーアングルを稼ごうとするとホイールベースは短くなるため直進安定性が低くなり、高速巡航性は低下するほか、車高を上げると乗降性も悪くなってしまう。全高が高いため、コーナリング時の安定性も優れていると言い難いものである。

モノコック構造のクロスオーバーSUVはここまで走破性を重視することは無く、基本的には乗用車と同じコンポーネントの流用で設計されている。そのため限られた範囲で走破性を高める工夫が各メーカーでなされており、路面状況をコンピュータにフィードバックして四輪を制御する電子システムなどが独自に開発されている。

関連項目[編集]