環 (天体)
環(わ、英: planetary ring)は、惑星の周囲を公転する塵やその他の小さな粒子が平らな円盤状の領域に分布しているリング状の構造である。最も壮大で有名な惑星の環は土星の環であるが、太陽系に4つ存在する巨大ガス惑星、すなわち木星・土星・天王星・海王星は全て環を持っている。
また小惑星のうちカリクローにも環があることが、カリクローによる恒星の掩蔽の観測より確認されている。宇宙探査機カッシーニの撮影結果から、土星の第5衛星レアにも環がある可能性があるとみられていたが、撮影結果の精査の結果、結局環はなかったとされている。
概説[編集]
惑星の環の起源は正確には分かっていないが、一般に環は不安定で、数千万年から数億年の間には散逸するものと考えられている。従って、現在見られる環は比較的新しい起源を持つはずであり、おそらくは衛星が大衝突を受けたり、あるいは惑星のロッシュ限界の内側に入った衛星が重力によって破壊された破片からできていると見られている。
環の粒子の組成は様々で、ケイ酸塩かもしくは氷を含む塵であると考えられる。また、もっと大きな岩石や巨石が存在する可能性もある。
環には羊飼い衛星 (shepherd moon) と呼ばれる小さな衛星が環の外縁や空隙の中に存在する場合がある。羊飼い衛星の重力は環の縁をくっきりと保つ役割を果たす。羊飼い衛星の軌道に近づく物質は環の本体に弾き返されるか、あるいは系から放り出されたり、衛星自身に降着したりする。
木星の衛星のうち最も内側にあるメティスやアドラステアといった小さな衛星は、木星の環やロッシュ限界の内側を公転している。木星の環は、木星の潮汐力によってこれらの衛星から放出された物質から構成されている可能性がある。またこれらの物質放出は環の物質がこれらの衛星の表面に衝突することでさらに促進されているとも考えられる。ロッシュ限界の内側にある衛星には自己重力よりも強い潮汐力が働くため、衛星本体は衛星の構成物質の力学的な強度のみで一体に保たれている。従って衛星表面に弱く積もっているだけの物質は簡単に引き剥がされて環の一部となる。
土星の環のうち、B環にはスポークと呼ばれる放射状の暗い部分が観測されている。これは環を構成する粒子と土星の磁場の相互作用によって発生したという説があるが、はっきりとは判っていない。
海王星の環は非常に変わっていて、最初の地球からの観測では切れ切れの円弧(「リング・アーク」または単に「アーク」)からできていると見られていたが、ボイジャー2号が撮影した画像によって、所々に明るいこぶを持つ完全な環であることが明らかになった。これについては、羊飼い衛星であるガラテアや、未発見の別の羊飼い衛星からの重力の影響によってこのこぶ(リング・アーク)が作られていると考えられている。