珠算

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珠算(しゅざん)とは、計算具としての「そろばん」を用いた計算及びその方法。「算盤(そろばん)」と表記すると、算木とともに用いる板(紙の場合もある)「算盤(さんばん)」を指すこともあるため「十露盤(そろばん)」とも書く。

概要[編集]

シュメール(チグリス=ユーフラテス文明)において用いられていたことは確実視されている。その後インド・中国を経て日本に伝来した。
マイクロプロセッサの普及により電卓が小型化されて急速に広まり、さらにスプレッドシート筆算等の発達した計算方法が存在するため、風習は薄れてつつあるが、現在では教具として、計数感覚鍛えることに用いられる。
ただし加減算および乗算に限っていえば計算速度は手計算(筆算)よりも珠算の方が圧倒的に高速である(筆算で4桁の計算100問を全て解くのに1時間掛かったとして、珠算を用いると熟練者でない初心者でも5分程度で解き終わる──当たり前だが数字を筆記用具で考えながら書くよりも、指を動かして入力するだけで「そろばんの上に答えが勝手に出て来る」(脳内計算しているわけではない)という根本的な違いにより計算速度に差が出る)。まあ、覚えるのが難しい特殊技能だから仕方ないね。実際の計算の様子は外部リンクを参照。

現在でも日本では算数の教科書に掲載されているので、今のところ絶滅する心配はない。また、2013年には無形文化遺産に登録された。

なお英語圏では日本式(計五玉)の「そろばん」(五珠一+一珠四)を「soroban」、(五珠二+一珠四の七つ玉の中国やギリシャ・中東形式のものを「abacus」(アバカス)と呼ぶ。歴史的にはアバカス(西洋式算盤)の方が古い単語であり、そのため日本式そろばんはsorobanだけではなく「Japanese abacus」とも呼ばれる。
「プセーポイ数学」(石ころ数学)という言葉もあり、日本も当初は十玉であったらしい。「そろばん」は「十露盤」なので「そ」は訓読み、「ろ」は漢読みなので「湯桶読み」だからである。

人間生活との関わり・利用[編集]

練習法は大きく分けて

がある。

トリビア[編集]

計算形式がコンピュータと一緒[編集]

電卓は「アナログ計算式」で、珠算は「デジタル計算式」。どういうことかってーと、電卓で入力する1*5(1かける5)は1+1+1+1+1の計算を内部処理しているのだが、珠算は「玉の移動という形でビット計算している」という違いがある。

つまり、図解すると

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 ◇
──
◆◆
 ◆
◆ 
◆◆
◆◆
──
05
─
12

この図は「17」を表す(右は数値変換したもの)。これをデジタルとして考えるならば「(右の)桁内がMAXになって隣の桁に数字の一部が移った状態」である。

馴染みの深い10進数で考えるならば「9より大きい1桁数字の設定がなくて(1桁のみでは)表記不能なので『10』という2桁単位を追加し、移動した数値分を右の1桁から減らした状態」で、これを玉の上下で表しているのが珠算、つまり「2進数の1/0フラグと考え方が全く同じもの」。

考え方としては「常に1桁(最右端の1列)内に数値が収まるかどうか」以外のことを全く考えなくていい = 出っ張った分はどんどん左の桁へ移して行くだけで良い = 計算に要する思考内容が極度に単純化する、ということであり、「熟練すると筆算の数倍から数十倍以上の計算速度を得られる」という利点がある(ただし、これは加減算式など限定的な計算内容に限る)。

おまけ[編集]

加算式:1937+284
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1937
+200 ⇒
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 ◆◆ 
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◆◆◆◆
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2137
+80 ⇒
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   ◇
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◆◆ ◆
  ◆ 
◆◆◆◆
◆◆◆◆
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2217
+4 ⇒
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◆◆◆
   ◆
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2221
2221
0505
──
1432
0005
──
2132
0005
──
2212
0000
──
2221

補足説明:そもそも人間が脳内計算をしているのではなく、ただ各桁に(人間が最適な使用法を考えた上で)数値を入力しているだけで計算そのものはそろばん自身が行っている(電卓と一緒)。

減算、除算、乗算については「wp:ja:そろばん#計算法」を参照

5玉(4玉)のそろばんは日本独自[編集]

中国古来のそろばんは上の玉が2つ、下の玉が5つで、一列で16まで数えられる(16進数)のが主流。理由は中国で発祥した計量単位尺貫法(の一部)が16進数基準だから。なお余談ながらヤード・ポンド法も16進数基準なので、もしかしたら中国式そろばんを愛用している・していた西洋人が居たかもしれない。
…… と書くと信じて」しまう人もいそうだが、眉唾である。最初は一珠が十のスタイルであったらしい(だから十露盤だ)。上の五珠が二つ、下の一珠が五つになったのは、繰り上がりを処理するのにワンクッション置くと初学者が理解しやすいからで、桁上がりと一珠から五珠への繰り上がりが身につくと五珠一+一珠が四が取り回しがよいからである。

電卓に勝ったそろばん使いがいる[編集]

戦後にアメリカ人の電卓使いと日本のそろばん使いが計算速度5番勝負をして、そろばん使いが4勝したことがあるそうな。

発明したのは中国人ではない説[編集]

同様の計算形式はギリシャメソポタミア中東)にも存在しており、貿易などを通じて中国経由で珠算が日本に伝わった、という説がある。

珠算経験者の達人は脳内そろばんを使用する[編集]

実際にその「脳内のそろばん」を動かして速く計算して計算時間を競う競技、というのが実在する。

2001年宇宙の旅に登場する[編集]

SF小説の金字塔、映画化もされた「2001年宇宙の旅」で「コンピュータが壊れたので乗組員の中の日本人がたまたま持っていたそろばんで軌道計算を行う」というシーンが存在する。なお、そろばんを使用したのは「珠算はコンピュータと同じ計算形式を使っていて人間が紙と鉛筆で行う筆記計算の数十倍以上高速」という理由による。
これは単なる勘違いだろう。ただし諸星大二郎の「ティラノサウルス号の帰還」のネタに、確かにあった。

平成初期まで現役だった[編集]

簿記と並んで銀行員税理士などの必修課目であり、「これさえ覚えていれば一生食いっぱぐれない」とまで言われた。──が、簿記はMicrosoft Officeの普及で廃れ、珠算は太陽電池式電卓の普及で廃れた。
誰でも覚えられる簡単な入力方法を持つ電卓と違って、珠算は「習熟に際し熟練者に習う必要がある伝統的技能スキル」だからだと思われる。このため、各種学校認可を受けた珠算教室は実務より脳トレ的なものに移行させるべきであろう。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]