燗酒
燗酒(かんざけ)とは、加熱した日本酒や焼酎を指す言葉である。いわゆる「熱燗」はこの燗酒の一種であり、50℃程度に加熱した燗酒を指すものである。「お燗(かん)」とも呼ばれる。
概要[編集]
日本において、酒を温めて飲む行為は古くから見られており、平安時代に書かれた宇津保物語にその期限を求めることができるとされている[1]。現在のような燗酒は江戸時代中期以降に定着したといわれている。
日本酒は温めると香りの開き方や味わいが大きく変わるものであり、燗酒に向いている酒は「燗映えする酒」と評される。
現代の日本においては徳利やちろりに日本酒を入れ、湯煎して温めるものが一般であるほか、専用の容器に入れて電熱式で温めるものが一般的である。こういった燗酒用の器具は「酒燗器」とよばれる。なお、酒燗器には業務用のものもあり、一升瓶を装着できるタイプの物も販売されている[2]。
焼酎においても燗酒は親しまれており、特に九州地方の南部で伝統的に利用されてきたといわれている。日本酒と違い、「黒ぢょか」と呼ばれる土瓶を利用し、直火で加熱するものである。また、日本酒に比べてアルコール度数も高く、事前に水で割ったものを燗につけることもある。この水割りは燗につける直前ではなく、一晩ほど置いたほうが味が良く馴染むともいわれている[3]。
燗酒の作り方[編集]
江戸時代に定着した手法としては錫などで出来たちろりを湯煎して加熱するタイプの物である。これは現在でもアルミ製のちろりなどが利用されることもあるものである。徳利を湯煎するタイプもあり、燗徳利と呼ばれる燗酒用の徳利も存在している。
現在は家庭用の酒燗器もあり、湯煎式に比べて手軽に燗酒を楽しむことが可能である。こちらは設定した温度まで加熱し、それ以降は保温することもできる製品も販売されている。それ以外にも徳利に日本酒を入れ、ラップをして電子レンジで温めることでも燗酒を作ることが可能であり、電子レンジによっては燗酒用のメニューが設定されていることもある。一方で狙った温度を出すのが難しいともされている。
日本酒の燗酒は温度帯によって特定の呼び名がつけられている[4]。
- 日向燗(ひなたかん)
- 30℃前後
- 人肌よりも温度が低いため暖かさはあまり感じない。
- 冷酒に比べると滑らかな味わいとなる。
夏場の常温- 人肌燗
- 35℃前後
- ぬる燗の一歩手前。香りが立ち始める。
- ぬる燗
- 40℃前後
- 暖かく、香りがよい。味わいも広がり、万人におすすめされる温度である。
- 上燗
- 45℃前後
- 湯気が立ち始める程度。味わいと香りがシャープになり始める。
- 熱燗
- 50℃前後
- 香りが非常に立ち、味わいも辛口になってくる。
- 飛び切り燗
- 55℃以上
- とても熱く、香りもたつどころか飛び立ちそうなほどである。寒い冬には立ち上がる湯気も相まってとても美味しい。
味わい的には上燗のほうが良いかもしれない
燗酒に向いている酒[編集]
日本酒において、お燗に向く(燗映えする)酒というのはある程度傾向がみられている。もちろんそれ以外の日本酒を燗酒にしても問題ないが、まずは王道から嗜んでみてはいかがだろうか。
一般的には純米酒や醸造酒が合うとされており、その中でも山廃仕込や生酛造りの日本酒が合うとされている。これらの製法で醸造された日本酒はうまみ成分が豊富であり、40℃でうまみ成分が活性化されるためと言われている。また、酸度の高い日本酒はコクが強く、加熱しても味わいのバランスが崩れにくいため燗映えするともいわれている。
とはいえ、自宅で自分の酒を飲む場合、他人の迷惑になるような飲み方でなければすべて自由である。呑みたいように呑めばいいのだ。