桜林誠
桜林 誠(さくらばやし まこと、1921年1月2日[1] - 2018年4月30日[2])は、労働経済学者。元上智大学経済学部経営学科教授[2]。専門は労働経済論、社会政策[3]。
経歴・人物[編集]
横浜市生まれ。1940年旧制静岡高等学校文科乙類卒業。1942年東京帝国大学経済学部経済学科卒業[1]。大河内一男ゼミに所属[4]。1942年東京芝浦電気入社。1943年退職。1944年横須賀海兵団に応召。1945年応召解除。日米社会福祉協会主事。1946年関東学院経済専門学校教授。1949年専修大学商経学部助教授。退職後、1949-1951年クローザー神学校およびペンシルベニア大学ウォートン・スクールにて研究(オリエンタル・スカラーシップ)。1951年関東学院大学経済学部助教授。1955年上智大学経済学部助教授、1960年教授[1]。1963-1964年コロンビア大学およびハーバード大学にて人事管理を研究(フルブライト・スカラーシップ)[1][5]。1965年「賃金制度 : アメリカの経営労働に関する理論的実証的研究」で経営学博士(神戸大学)[6]。1970年テキサス大学にて研究と講義(フルブライト・スカラーシップ)。1977年労働省幹部の保谷六郎、中島秀夫、笹島秀雄と発起人となり労働経済研究会を創設。1981年帝京大学経済学部教授。1983年大学院経済学研究科教授を兼任[1]。1996年停年退職[3]。
産業報国会の研究で知られる。『産業報国会の組織と機能』(御茶の水書房、1985年)などで産業報国会の衰退過程を考察し、単位産業報国会と戦後企業別組合の連続性を強調した大河内一男を批判した[7][4]。フォード財団の委託研究Documentary Japanese Labor History Projectの一環として産業報国会の資料編集を担当した[3]。産業報国会の資料を精力的に収集し、一部はマイクロフィルム化されて東京大学社会科学研究所等に所蔵され、原本は法政大学大原社会問題研究所に寄贈された[8]。『労働経済学序説』(有斐閣、1957年)で隅谷三喜男に次いで日本における労働経済学の理論を体系化した[3]。
著書[編集]
単著[編集]
- 『労働経済学序説』(有斐閣、1957年)
- 『賃金制度』(東京都労働局、1961年)[9]
- 『賃金の経済理論』(東洋経済新報社、1969年)
- 『労働経済学入門』(ダイヤモンド社[ダイヤモンド全書]、1977年)
- 『実務に役立つ賃金ハンドブック』(中央経済社、1979年)
- 『産業報国会の組織と機能』(御茶の水書房、1985年)
- 『石油ショック以後の企業別組合と単産』(国際産業・労働研究センター[教育シリーズ]、1986年)
- 『民間大企業の福利厚生と組織活性化』(公企労センター[調査研究資料]、1987年)
- 『女子社員・定年到達者・身体障害者・派遣社員の賃金と労務』(中央経済社、1988年)
- 『マイノリティー・グループの賃金と均等待遇・均等雇用』(帝京大学経済研究所[研究資料]、1987年)[9]
- 『民間事業所のメンタルヘルスケアと自己評価マニュアル』(帝京大学経済研究所[研究資料]、1987年)[9]
- 『産業報国会に対する官僚統制の時期区分』(帝京大学経済研究所[研究資料]、1996年)[9]
- 『鉄鋼大手N社の賃金』(帝京大学経済研究所[研究資料]、1996年)[9]
- 『労働者派遣業の原則自由化の条件』(帝京大学経済研究所[研究資料]、1996年)[9]
共著[編集]
- 『英米の労働組合』(有泉亨共著、日本労働協会[JIL文庫]、1959年、改訂1965年)
- 『賃金構造論・近代経済学と賃金理論』(永沢越郎共著、大石泰彦著、日本労務研究会[賃金実務入門講座]、1963年)
- 『企業間賃金格差の理論的実証的研究』(永沢越郎共著、日本労働協会[調査研究資料]、1964年)
- 『民間大企業における賃金構造とこれをめぐる基本的理念――工場部門の労働生産性と要員管理との関連を中心として』(居樹伸雄共著、公共企業体等労働問題研究センター[調査研究資料]、1983年)
編著[編集]
- 『賃金実態調査結果――従業員100人以上の企業におけるブルーカラーの賃金制度の特徴』(編著、上智大学社会経済研究所、1966年)[9]
- 『現代日本の賃金制度』(編著、日本労働協会[調査研究資料]、1967年)[9]
- 『昇給制度と企業内賃金構造の特色』(編著、日本労働協会[調査研究資料]、1968年)[9]
- 『賃金制度の未来展望』(編著、日本総合研究所、1974年)[9]
- 『身体障害者の賃金管理をめぐる諸問題とその対応(Ⅱ)』(編著、労働省・身体障害者雇用促進協会[昭和58年度 研究調査報告書]、1984年)[9]
訳書[編集]
- J・T・ダンロップ『団体交渉下の賃金決定』(宇田川璋仁、石原孝一共訳、東洋経済新報社、1956年)
外国語の著書[編集]
- Labor Unions in Postwar Japan(Sophia University、1960年)
- Personnel administration in modern Japan : historical development(Robert J. Ballon共著、Sophia University、1962年)
- Interfirm Wage Differentials in Postwar Japan(Etsurō Nagasawa共著、Sophia University、1963年)
- Interfirm wage differentials in present-day Japan : theoretical framework(Sophia University、1966年)
- Wage Survey of Male Blue-Collar Workers(Robert J. Ballon、Ichiro Tsunekawa共著、Sophia University、1967年)
- Japan’s Enterprise Unionism and Wage Increases(Sophia University、1968年)
- Japanese salary system : grade system for clerical employees : case study of the Jūjō Paper Mfg. Co., Ltd.(Sophia University、1970年)
- Japan's "basic salary"(Robert J. Ballon共著、Sophia University、1972年)
- Wage Administration in Japan(East Asian Institute,Free University of Berlin、1979年)
- Wages in Japan Today(Studienverlag Brockmeyer、1982年)
出典[編集]
- ↑ a b c d e 桜林誠「特別寄稿 大日本産業報国会資料の表と裏(PDF)」『大原社会問題研究所雑誌』No.577、2006年12月
- ↑ a b 上智大学元経済学部経営学科教授の桜林誠先生が、4月30日逝去されました 上智大学ソフィア会、2018年5月2日
- ↑ a b c d 大塚恒雄「桜林誠先生の御退職に際しての辞」『帝京経済学研究』第30第1号(通巻38号)、1992年12月
- ↑ a b 小池和男「戦前昭和期の労働組合 : 厚い中堅層の形成(6)6.戦争と労働組合 7.ひとつの理論 :「協力的な団体交渉」モデル(PDF)」『経営志林』第48第2号、2011年7月
- ↑ 桜林誠『産業報国会の組織と機能』御茶の水書房、1985年
- ↑ CiNii 博士論文
- ↑ 西成田豊「日本ファシズムと労資関係 : 産業報国会史論(PDF)」『一橋大学研究年報. 社会学研究』第25号、1987年7月
- ↑ 榎一江「産業報国会研究の可能性(PDF)」『大原社会問題研究所雑誌』No.664、2014年2月
- ↑ a b c d e f g h i j k 「桜林誠著作目録(PDF)」『大原社会問題研究所雑誌』No.537、2003年8月