日産・スカイラインクーペ CV36

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スカイラインクーペ CV36[1](SKYLINE COUPE CV36)は、日産自動車が製造し、日本国内で販売していたクーペ型普通乗用車である。

概要[編集]

2003年に発売されたCV35型スカイラインクーペの後継車として、2006年11月に発売されたV36型セダンより1年近く遅れ、2007年10月にフルモデルチェンジされた。スカイラインのクーペボディとしては歴代11代目であり、トランク室を分離した2ドアの伝統的スタイルを受け継いでいるが、欧州におけるセダンベースクーペやC10型スカイライン・ハードトップに見られる後席フットスペースの前後長を短縮してショートホイールベースにする手法は採られていない。

CV36型は2007年4月にニューヨーク国際オートショーにおいて発表され、同年8月には北米市場にインフィニティブランドのG37クーペとして先行投入された[2]

なお、製造はG37クーペも含め、すべて日産自動車栃木工場で行われていた。

メカニズム[編集]

パワートレイン[編集]

エンジンは、V36型セダンに採用されるVQ35HR型から35%の部品が新たに開発された[3]VQ37VHR型エンジンが初めて搭載された。また、このエンジンにはバルブ作動角・リフト量連続可変機構、VVELが初採用されている。先代CV35型クーペのエンジンから200cc排気量が増加しているが、VVELの採用などにより、燃費性能は10%程度向上している。

このモデルはアメリカでもインフィニティブランドでGクーペとして販売されているが、販売は好調で、その市場においてライバルとされているBMW・3シリーズクーペの2倍以上が販売されているほどである。そういったこともあり、北米における新型への期待は大きく、それに対応するために新開発のエンジンを搭載したという。また、当初は先代モデルと同排気量の3.5Lとすることも考えられていたが、BMWのモデルに走行性能で劣るわけにはいかないという思いがあったために排気量を200cc増加させたという[4]

トランスミッションにはATMTの2種が用意された。ATについては当初、フーガから採用されたものとほぼ同一のジヤトコ[5]JR507E型マニュアルモード付フルレンジ電子制御5速ATが採用されていた[6]が、2008年12月の一部改良により、先にフェアレディZに採用されていた同じくジヤトコ製[5]JR710E/JR711E型マニュアルモード付フルレンジ電子制御7速ATに変更された[7]。MTについては先代モデルと同一の愛知機械工業製MRA70型[8]6速MTが採用されているが、軽量化などが施されている[6]

ボディ・シャシ[編集]

プラットフォームにはセダンと共通のEプラットフォームが採用される。基本的なレイアウトはセダンと共有するが、エンジン搭載位置を15mm低くして重心を下げるなどして走行性能の向上も図られている[6]。前後重量配分は55:45となった[9]

ボディ剛性については、静的剛性ではなく実際の走行を見据えて剛性が高められたために、軽量化を図りながらも、結果として静的捩り剛性が先代比で36%向上している。なお、横曲げ剛性では先代でも十分と判断されたため、ほぼ同一となった[6]

サスペンションについては、セダン同様フロントがダブルウィッシュボーン式、リアがマルチリンク式サスペンションとなる。セダンのものをベースとしているが、ワイドトレッド化が行われ、ショックアブソーバーも専用チューニングが施されている[10]。サスペンション横剛性は先代比でフロント55%、リア40%向上されている[6]

ブレーキには4輪ベンチレーテッドディスクが採用され、「Type S」には曙ブレーキ工業[10]の4輪アルミキャリパー対向ピストンブレーキが採用された。

デザイン[編集]

エクステリアパーツではサイドターンランプスカイラインクロスオーバーを含むV36型スカイラインシリーズと、ドアハンドルをセダンと共有するのみで、他は先代に引き続き、完全な新設計となっている[3]。ただし、2008年11月のセダンの一部改良時には、ドアミラーもクーペと共通のものに変更された。

デザインの向上のために低いボンネットが採用されたが、エンジンとエンジンフードの隙間が十分にないと歩行者保護の性能を十分に得られないため、デザインと安全性の両立のために新技術、ポップアップエンジンフードが採用された[4]。ほかにも、ヘッドランプの位置をエンジンフードから離して生産工程を手作業とするなど、スタイリングのために多くのコストが掛けられている[11]

V36型セダンはモデルチェンジにあたり、サイズを大幅に変更したが、スカイラインクーペはCV35型からすでにセダンよりもワイド&ローであったために、サイズの変更は全長+15mm、全幅+5mm、全高-5mmにとどまった。

インテリアについては基本的にセダンと共通となっているが、ドアが長いため、そこには専用の素材が用いられ、新設計されている[12]。また、ヒップポイントについては先代モデル比で17mm、セダン比で20mm低下されている[6]

ラインアップ[編集]

Type S/Type SP
2007年10月-2010年11月
370GT Type S
2010年11月-

グレード構成は下から「370GT」、「370GT Type P」、「370GT Type S」、「370GT Type SP」の4グレードが用意される。

「Type P」はベースの370GTに本革シートや各種快適装備を装備したグレード、「Type S」はパドルシフト、19インチアルミホイール(標準車は18インチ)、4輪アクティブステアビスカスLSDなどを装備した走行性能重視のグレードである。最上級グレードの「Type SP」は「Type P」および「Type S」の装備を両立している。また、「Type S」および「Type SP」には当初専用スポーツバンパー・サイドシルスポイラーが装着されていたが、2010年11月の仕様向上以降のモデルでは全車にスポーツフロントバンパーおよびサイドシルスポイラーが標準装備される。また、この仕様向上では18インチホイールおよび19インチホイールのデザインも変更された。

なお、6速MT車は「Type S」および「Type SP」のみにラインアップされる。

2010年1月のマイナーチェンジ時にはそれまで全車オプション設定であったHDDカーウイングスナビゲーションシステムが全車標準装備となったため、新たにナビレスの廉価グレード「370GT A Package」が追加された。

特別仕様車[編集]

55th Limited
2011年12月に発売されたセダンに続き、2012年2月にはクーペにも生誕55周年記念期間・台数限定車の「55th Limited」が設定された。2013年4月30日受注分までの期間限定販売だが、期間内に限定台数の55台に到達した時点で受注終了となる。「370GT Type P」および「370GT Type SP」をベースに、55周年記念刺繍付きのアニバーサリーブリリアントレッド本革シートが装備され、専用色も設定された。

年表[編集]

2006年11月20日
スカイラインセダンの新車発表会の席上で、2007年秋の発売とアナウンスされた。
2007年4月4日
ニューヨーク国際オートショーにおいてインフィニティ・G37クーペを発表。
2007年4月24日
東京ミッドタウンで行われたスカイライン生誕50周年イベントで、参考出品。
2007年8月
北米市場においてG37クーペを先行発売。
2007年10月2日
販売開始。
2008年12月2日
一部改良。7速ATが採用されたほか、装備内容が一部変更された。
2009年6月19日
米国においてクーペとフロント部分を共有する[13]オープンカーモデル、インフィニティ・G37コンバーチブルが発売。
2010年1月6日
マイナーチェンジ。装備内容変更および内装の小変更が行われた。
2010年11月15日
一部仕様向上。
2012年2月10日
期間限定車「55th Limited」が発売。
2016年1月
販売終了。

脚注[編集]

  1. 実際の型式はCKV36だが、先代モデルがCPV35型であるため、通称型式はCV36となる。CM情報でもCV36型とされている。
  2. All-New 2008 Infiniti G37 Coupe Sets New Standards For Style, Performance and Luxury英語
  3. a b 新型スカイラインクーペのすべて アウトライン
  4. a b 新型スカイラインクーペのすべて 開発ストーリー
  5. a b 製品情報 > ラインナップ > ステップAT ジヤトコ株式会社
  6. a b c d e f 新型スカイラインのすべて メカニズム詳密解説
  7. 「スカイライン セダン」、「スカイライン クーペ」を一部改良 NISSAN PRESS ROOM
  8. トランスミッションの主な搭載車両一覧 愛知機械工業株式会社
  9. “新車試乗記 第485回 日産 スカイライン クーペ 370GT Type P”. MOTOR DAYS. (2007年11月2日. http://www.motordays.com/newcar/articles/skyline_coupe_nissan_imp_20071102/ 
  10. a b “【日産 スカイラインクーペ 新型発表】進化したシャシー性能”. Response.. (2007年10月19日. http://response.jp/issue/2007/1019/article100534_1.html 
  11. 新型スカイラインクーペのすべて もうひとつの開発ストーリー
  12. 新型スカイラインクーペのすべて デザイン・インタビュー
  13. “日産 スカイライン コンバーチブル…米国発売”. Response.. (2009年6月5日. http://response.jp/issue/2009/0605/article125615_1.html 

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]