ディスクブレーキ
ディスクブレーキとは自動車や自転車などおけるブレーキの一種であり、車輪と一緒に回転する円盤(ディスクローター)をブレーキパッドで押さえつけることによって減速させる仕組みになっている。
歴史[編集]
回転するディスクに制動をかけようとする試みは1900年代から始まっており、1903年には世界初のディスクブレーキの特許がイギリスにおいて登録された。その後、主に航空機・鉄道車両用として発展していき、自動車用として普及するまではさらに50年ほど経ったころである。なお、鉄道車両のディスクブレーキは構造的な制約が自動車や航空機とは異なっているため、原理こそ同じであるものの構造的には独自の発展を遂げているといわれている。
自動車用ブレーキとしてはドラムブレーキが広く普及しており、量産車への純正採用は1960年代からであった。それでも採用されたのはスポーツカーや高級車などに留まっていたうえ、フロントのみの採用に留まっていた。なお、日本で初めて四輪ディスクブレーキが設定されたのは1967年に発売されたトヨタ・2000GTであり、量産車としては1972年のスバル・レオーネの初代RXであった。
1990年代には前輪ディスクブレーキ、後輪ドラムブレーキが低コスト車に、余裕のある車やスポーツカーには四輪ディスクブレーキという構成が一般化しており、2024年年現在もそのスタイルはあまり変わっていない。
自転車用としてはシマノが1971年に子供用自転車にディスクブレーキを搭載したものを発売。他社も追随し、ジュニアスポーツ自転車と呼ばれるジャンルにおいて少年の憧れともなっていた。当時の自転車用ディスクブレーキは大型であり、重量もかさむことから長続きせず、スポーツ用として採用されることもなかった。
時代は下り、MTBのジャンルの一つであるダウンヒルバイクにおいて2000年代に採用され始めていた。ダウンヒルバイクは山を自転車で下るために開発されており、通常のロードバイクのような軽量バイクではなく、重量が増しても衝撃に耐えうるサスペンションや頑丈なフレームが選定されており、従来はその重さから採用されなかったディスクブレーキも採用され始めた。その後、ダウンヒル以外のMTBにも採用され始め、2000年代後半にはエントリーモデル以外ではほぼディスクブレーキが採用されるようになっていった。
2010年代後半からはロードバイクでの採用例も増え始め、2018年のツール・ド・フランスではディスクブレーキ搭載車がステージ優勝wを飾るなど、徐々にMTB以外へのディスクブレーキ採用が一般化しつつある。
特徴[編集]
一般にディスクブレーキは制動のコントロールがしやすく、かつ高い耐フェード性を有していることがメリットといわれている。また、パッドとローターの間に水が浸入してもドラムブレーキのように滞留しないことから安定した制動力を発揮しやすいなどの利点もあるほか、自転車の場合はリムの振れによる影響を受けないという特徴もある。
放熱性の高いディスクブレーキではあるが、より放熱性を高めるために二枚のディスクの間に放熱用のフィンを挟み込んで1枚のディスクローターとしたベンチレーテッドディスクが採用されるほか、制動時に発生するダストやガスを効率よく排出するためのスリットが入っているものもあり、高性能車を中心に採用されることも多い。
一方で同じ径であれば絶対的な制動力はドラムブレーキのほうが勝っているとされ、前後ブレーキディスク装着車でもパーキングブレーキとして後輪にドラムブレーキが採用されることも多い。また、ドラムブレーキのような自己サーボ効果もなく、満足な制動を発揮するためにはエンジンの負圧などを利用した倍力装置が必要となる。そのためコスト面で不利になることも多い。また、高性能化に伴いディスクローターの大径化が避けられず、ホイールの選択に制限が出ることもある。