愛宕神社 (東京都港区)

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愛宕神社

愛宕神社(あたごじんじゃ)は東京都港区愛宕一丁目に鎮座する神社である。江戸時代は『天下取りの神』、『勝利の神』とされた。

概要[編集]

愛宕神社は、標高26mの愛宕山の山頂にある神社である。愛宕山は東京23区内では自然地形としては標高の最も高い山である[1]。江戸時代には、見晴らしのよい名所であった。

1603年(慶長8年)、徳川家康の命により防火の神として祀られた。1610年(慶長15年)、庚戊本社、末社仁王門、坂下総門、別当所等が将軍家の寄進により、建立された。江戸の大火で全焼したが、明治10年9月に本殿、幣殿拝殿、社務所が再建された。しかし1923年(大正12年)9月1日の関東大震災、1945年(昭和20年)5月24日の帝都大空襲により太郎坊神社以外は全焼した。1958年(昭和33年)9月、氏子中の寄付により、御本殿、幣殿、拝殿などが再建された。家康が信仰した勝軍地蔵菩薩が祀られる。

現在は『防火』、『防災』、『開運』、『縁結び』のご利益があるとされる。また『出世の石段』を登ると仕事運・出世運のご利益があると言われる。

愛宕神社境内に『三角点』がある。標高25.7メートル。山の上であるが湧水があり、境内に「児盤水」(小判水)と呼ばれる水量の多い池がある。

出世の石段[編集]

愛宕神社(出世の石段)

愛宕神社に上がる石段(男坂)を「出世の石段」という。1634年(寛永11年)、三代将軍徳川家光が芝増上寺の参詣帰途に、愛宕神社の下を通った。愛宕山の源平の満開の梅を目にして 家光は「誰か、馬にてあの梅を取って参れ!」と命じた。愛宕山の86段ある石段の急勾配に居並ぶ臣下は恐れをなした。そこへ石段を馬で登りはじめた者がいた。四国丸亀藩の家臣・曲垣平九郎である。急勾配の石段を騎乗のまま上下し、家光に山上の梅を献上した。家光は『この泰平の世に馬術の稽古怠りなきこと、まことにあっぱれである』と称賛し、曲垣平九郎は「日本一の馬術の名人」と讃えられた。曲垣平九郎の名は一日にして全国に鳴り響いた。後に尾張藩で900石を得たとされる。献上した梅の木は、「将軍梅」として現存する。2年に1回の例大祭では、みこしが急勾配の石段を登る。

男坂(出世の石)を登ると出世のご利益があるとされるが、帰りに同じ道を通ると得たご利益がなくなるので、参拝者は隣の「女坂」を下るのがよいとされる。

桜田烈士愛宕山遺蹟碑[編集]

1941年(昭和16年)に建立された「桜田烈士愛宕山遺蹟碑」が境内に建てられている。「桜田門外の変」で襲撃者の関鉄之介ら水戸藩浪士17名と薩摩藩浪士・有村次左衛門(海江田信義の弟)の計18名は、その前夜、品川宿土蔵相模で宴を催して、その翌早朝に宿を出発し、この愛宕神社で祈願した。その後、江戸城桜田門前に向かった。愛宕神社から江戸城の桜田門まで約2km、徒歩で20~30分の距離である。愛宕神社は火伏の神を祀り神社であるが、戦さにも霊験があることで知られていた。

碑の裏面に桜田門外の変のいきさつが書かれている。

此ノ地ハ萬延元年三月三日昧爽水戸藩士斎藤監物 関鐵之介 佐野竹之介 黒澤忠三郎 大関和七郎 廣岡子之次郎 山口辰之介 森五六郎 岡部三十郎 鯉淵要人 稲田重蔵 杉山彌一郎 蓮田市五郎 森山繁之介 廣木松之介 増子金八 海後磋磯之介 薩摩藩士有村次左衛門等天下ノ為ニ幕閣ノ大老井伊直弼ヲ斃サントシテ勢揃ヲ為セル處ナリ。抑々櫻田事變ナルモノハ水薩ノ志士協力シテ井伊大老ヲ斃シ後直チニ京都ニ結集シ 至尊ヲ奉シテ天下ニ大義ヲ唱ヘントシタルモノナリ金子孫次郎 高橋多一郎ノ二領首ハ機ヲ逸セス京阪ニ赴キシモ事ハ齟齬シテ薩兵来ラス終ニ金子ハ京都伏見ニ捕ヘラレ高橋ハ其ノ子庄左衛門ト共ニ大阪四天王寺ニ居腹ス。然リト雖モ斯ノ一擧遂ニ克ク三百年ノ幕府政治ヲ倒壊セシメ以テ皇政維新皇国興隆ノ新體制ヲ招来スベキ導火線タルノ偉功ヲ樹タリ。然ルニ世人櫻田門ノ史蹟ヲ知ルモ事前ニ於ケル烈士愛宕山上勢揃ノ事蹟ニ至ツテハ■乎トシテ之ヲ識ル者ハ殆ト殊ナリ吾人其ノ遺蹟ノ湮滅ニ歸セントスルヲ慨シ此ニ碑ヲ建テ来者ニ諗クルアラントス。

さらに櫻田18烈士の名が刻まれている。櫻田18烈士とは関鉄之介、岡部三十郎忠吉、稲田重蔵正辰、山口辰之介正、鯉淵要人珍陳、広岡子之次郎則頼、黒澤忠三郎勝算、斎藤監物一徳、佐野竹之助光明、大関和七増美、森五六郎直長、蓮田市五郎正実、森山繁之介政徳、海後磋磯之介、杉山弥一郎当人、広木松之介有良、増子金八、有村次左衛門の18名である。題字を揮毫したのは、当時の東京市長の大久保留次郎であった。

諸元[編集]

  • 名称:愛宕神社
  • 創建:1603年(慶長8年)
  • 境内地:1750坪(愛宕山の面積は6千坪)
  • 主祭神:火産霊命
  • 配祀:罔象女命、大山祇命、日本武尊、将軍地蔵尊・普賢大菩薩
  • 境内末社:太郎坊神社、福寿稲荷神社、弁財天舎、恵比寿大黒社
  • 所在地:東京都港区愛宕一丁目5番3号
  • 交通:東京メトロ日比谷線「神谷町駅」より徒歩5分、東京メトロ銀座線「虎ノ門駅」より徒歩8分

外部リンク[編集]

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  1. 人工の山では都立戸山公園にある『箱根山』が標高44.6mである。