地元集中 (大阪府)

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このページではかつて存在した一部の公立中学校が公立高校の入学試験を受ける際に志願校を地元にある特定の1校を選ぶように地元集中(じもとしゅうちゅう)の進路指導を推進していた教育運動について記載する。

概要[編集]

地元集中受験運動、特に盛んに行われていた大阪府高槻市枚方市の名前を取って高槻方式高槻・枚方方式集中受験などとも呼ぶ。

地元集中を行っていた動機として「地域の子供は地域で育て、高校間の学力格差を解消する」ということが挙げられ、制度上は通学区域内のどこの学校でも志願し、合格すれば遠方であっても入学することが出来るのに、地元集中運動を行っていた地域・学校では地元の公立高校を目指す進路指導が徹底され、学校が指定した高校しか受験させてもらえず、逆に地元集中高校へ学区内の他の地域から進学することも困難になっていた。

その背景には「15の春を泣かすな」のスローガンの下、学校間格差の是正を目的として高校全入運動と表裏一体の運動として地元集中が進められていたというものもある。当時は2000年代よりも子供の数が多く、過熱する受験戦争が問題視され、メディア・国民にもある程度理解されるものであった。

地元集中における高校の選定先は原則、地元にある特定の全日制普通科を持つ学校1校のみ、その中学校至近に所在する学校の受験を強く勧奨していた。ただし中学校の所在地によっては生徒の居住する地区によって進学先として勧める学校をいくつかに振り分けている場合もあった。

生徒への非公式な圧力[編集]

地元集中運動実施校・地域では進路指導を「同じ中学の生徒はみんな同じ地元の公立高校へ」の理念に基づいて行い、全校集会やホームルームで取り組まれた一方、学習塾に通って予習復習の密度を高め、模擬試験を受けて実力を把握し、地元の学校へ進学するよりも地元から離れたレベルに見合った学校への進学を希望する生徒も多くなった。

こうした動きから地元集中運動を緩和・撤廃していく地域・学校もあったが、強硬に地元集中を継続する道を選び、不正な進路指導を行う事例もあった。主なものとして

  • 親も学校に呼び出して担任或いは学年主任の教師から「何故指導に従わないのか」と脅迫めいた親子指導を行う
  • 地元高校に行ける成績で地元以外の高校への進学の意思を示すとロングホームルーム学年集会の場で「皆を裏切って◯◯高校を受験します」と晒し上げるか、強制的に書かせた作文を自ら読み上げさせる
  • 普段の授業でも地元の高校への進学を希望しない生徒へ教師が暴言を吐く
  • 地元以外の高校へ進学を希望した生徒の調査書を三者面談会で開示希望を出しても開示しない
  • 3年次に学級委員や生徒会役員に選ばれた生徒には特に進学先の選択の自由を与えない
  • 地元の公立学校ではなく、私立学校への進学を選んだ事を快く思わない教師が私立受験を希望する生徒に対し、私立受験用の調査書の発行を拒否または出し渋る[1]
  • 私立受験を快く思わない教師が私立進学の意思を示した生徒の調査書の評価を意図的に貶めて記入する

など。

地元集中指導の結果、かかる指導を憂慮して私立中学を受験・進学させたり、地元集中を行っていない地域へ転居したりする事例も相次いだ。中には地元集中運動の行われている地域に住んだまま子供を地元集中を行っていない地域に住む親戚に預けた事にして子供の住民票のみを親戚宅に移動させて不正に越境通学させる事もあった。[2]
更に不本意な進学をさせられた末に非行に走るケースや公立中学校や学区の荒廃も進み、他方では生徒・卒業生が集団で問題行動に走り、それが原因となって近隣私立高校から荒廃した学校が嫌忌されて受験に不利になる、顧客から地域の荒廃に関する情報を寄せられた不動産業などからも地元集中実施地域が忌避されて家賃・不動産価格の下落を招くなど、学校内外の荒廃の悪循環が波及していく状況も少なくなかった。

地元集中に対する高校の反応[編集]

地元集中の進路指導で進学先とされた地元公立高校は「あくまでも中学校の教員が勝手にやっていること」と関与及び賛同しない立場が主流だった。

しかし高槻市内などの高校を中心に、地元集中運動に賛同・連携するところや、公立高校の教員が個人的に賛同する場合もあった。

地元集中の終焉[編集]

地元集中は1980年代中頃から低調になり、2000年代前半頃には以下のような理由からほぼ終息したと見られている

  • 地元集中に対する批判の高まり
  • 生徒・保護者が調査書の開示を求めた場合にその請求を容認するよう求める判決が裁判で下され、調査書を不当に低く書く事ができなくなった。
  • 教育制度の変化
  • 少子化に伴う高校の統廃合

尤も、地元集中の理念を持つ一部の教職員がホームルーム・個人面談で生徒や保護者に地元の学校への進学を勧奨している事例が今もないとは言い切れないが、以前のような強要的な性格は薄くなっているとされる。

脚注[編集]

  1. 学校が行う受験妨害の横行に対する窮余の策として、一部の私立学校は通っている学習塾の発行した資料を提出しての受験や調査書無しでの受験を認める特例措置を行っていたことがある。
  2. しかし大阪府内に関しては不正越境通学に厳しい目を光らせており、この手段はほぼ使用できなかった。