地上げ
地上げ(じあげ)とは、こま切れの狭い土地を買い集めて一つの大きな土地にまとめ上げるために買収することをいう。まとめた土地は利用価値が大きくなるので、高く転売できるが、失敗する事も多い。「地揚げ」あるいは「底地買い」とも表記する。1986年の流行語部門不快語追放応援賞を受賞した。なおもともとの地上げの意味は、地面を盛り上げて、物理的に高くすることである。「地面師」のような詐欺は行わないが、不法スレスレもある。
地上げ[編集]
バブル期に一部のものが、強要や脅迫で強引に売却させる手法を使ったため、「地上げ」に悪のイメージが付きまとった。その頃、地上げの対象は東京の中心部で特に千代田区、中央区、港区であった。住民は普通の市民生活を営むことさえ困難になる例も見られた。地上げ屋は一軒ずつ処理しながら、次第に大きな土地にしていき、最後に大手企業が何事もなかったようにまとまった土地を高値で手に入れ、当初計画通りの建物を建てる。
「官」が行うものは類似行為であるが、法律に基づくものである。地上げとはいわず「買い上げ」または「土地収用」という。買収価格は用地補償基準に従って決められた価格で行われる。強制力のある場合は、強制執行を経て、最終的に土地収用に至る。
地上げの事例[編集]
1986年の流行語部門不快語追放応援賞は女優の馬渕晴子が受賞した。馬渕晴子は、強引な追い出しを図る不動産業者に対して、庶民の側から「地揚げ・底地買い」に立ち向かい、テレビのワイドショーに出演し、時の人となった。
馬淵は1969年の結婚時に赤坂にライオンズマンションを購入した。1985年頃、突然見知らぬ中年男性が馬渕晴子さんの家を訪ね、住んでいるマンションを売ってほしいといった。馬淵は売る気がなかったので、丁重に断った。その後、無言電話がかかるようになり、それが3ヵ月続いた。馬淵は住民からマンションが地上げの対象になっており、マンションの土地の地価はかっての2倍になっていると知らされた。地上げの目的は住人の部屋をすべて買い取り、マンションを取り壊して更地にして土地をより高く転売しようとしたことである。他の住戸にも無言電話があり、売却した住人も出てきた。当時の法律ではマンション住人の5分の4以上の賛成があれば、建物を取り壊すことが可能であった。
無人の部屋から深夜まで続く騒音があり、停電などの電気供給の妨害、脅迫が続き、住人は「生活と権利と自治を守る会」を結成し、知名度のある馬淵は代表となった。住民有志10人は不動産業者を相手取り、生活権の侵害を理由に2200万円の損害賠償請求訴訟を提起した。管理組合メンバーが大幅に変わり、乗っ取られてしまった。
裁判所は業者らの行動は不法行為ではないとして、裁判は敗訴した。しかし、その後バブルが崩壊し、不動産業界は総崩れとなり、地上げは中止となって解決した。
近年では地上げを装い、「地面師」が暗躍することもある。地上げとの違いは詐欺行為を行うかどうかである。