労災保険
労災保険(ろうさいほけん)とは、労働者が仕事中や通勤途中の病気や怪我、事故など「仕事がそもそもの原因で発生した災害」、すなわち労働災害によって労働者が受けた災害をサポートするための国家が運営する保険のことである[1]。労働法に守られず、実績も責任も自分次第である[1]。正式には労働者災害補償保険(ろうどうしゃさいがいほしょうほけん)という[1]。会社が普段から保険料を国に収めておき、そこから労働者に給付金が支払われる仕組みとなっている[1]。労災保険は「労働者全員のための保険」であり、正社員以外にもアルバイトやパートタイマー、派遣社員や契約社員、あるいは不法就労の外国人であった場合でも、仕事がそもそもの原因で発生した災害である場合には労災保険は適用される[1]。
概要[編集]
労災保険の請求は労働基準監督署長に対し、労働者本人が行なう[2]。ただし、請求を行なう前に労働者が死去している場合などは、遺族が行なう[2]。ただし、請求すれば必ずしも労災保険が支払われるわけではない[2]。支払われるのは労働基準監督署長が「この災害が仕事が原因で起きたものかどうか」を認めたケースである[2]。もし労災と認められなかった場合には再審査を訴えたり、裁判を起こすことも可能である。労災かどうかの判断の物差しとなるのが「仕事中あるいは作業中、作業の準備や後始末中、休憩時間中、出張中も含む形で起こった病気や怪我、事故かどうか」「その病気や怪我、事故が仕事そもものが原因で起こったものかどうか」の2点である[2]。
例えば、トラックで荷物を配達中に交通事故に遭って入院した場合などは労働災害だと認められる。しかし勤務中に仕事をさぼってラーメン店などに行ってそこでラーメンのスープをこぼして火傷をしたなどの場合は怪我の原因が仕事そのものと関係ないため、労働災害とは認められない[2]。
通勤災害[編集]
労働者が通勤中に負った怪我、病気、事故などを通勤災害(つうきんさいがい)という[2]。通勤災害も労働災害の一種であり、労災保険が支払われる[2]。
ただしこの場合の通勤とは言えと仕事場の間を合理的な行き方や方法で往復することを指す。つまり会社から自宅に帰る途中、駅の階段で転んで骨折したなどの場合は通勤災害と認められるが[2]、会社から自宅に帰る途中、映画館に行って映画館の階段で転んで骨折したという場合は労災保険は認められない。映画館に行ったのは明らかな寄り道であり、仕事そのものが原因で起こった災害とは言えないためである[3]。
労災保険の種類[編集]
- 療養(補償)給付 - 仕事中、あるいは通勤中に怪我を負ったり、病気になったりした場合、完全に治るまで無料で診察や治療を受けることができる[3]。
- 休業(補償)給付 - 療養のために労働者が仕事を休み、そのために賃金をもらえない場合、働けなくなった日の4日目から平均賃金の6割が支払われる[3]。
- 傷病(補償)年金 - 療養してから1年6ヶ月が過ぎても怪我や病気が治らない場合、休業補償給付は打ち切られ、代わりに傷病(補償)年金が支払われる[3]。
- 障害(補償)給付 - 怪我や病気が治っても障害が残った場合は、障害(補償)年金か障害(補償)一時金、さらに障害の程度に応じて障害特別支給金などが支払われる[3]。
- 遺族(補償)給付 - 労働者が死亡した場合は、遺族に対して遺族(補償)年金や遺族(補償)一時金、さらに遺族特別支給金などが支払われる[4]。
脚注[編集]
参考文献[編集]
外部リンク[編集]
- 労働者災害補償保険法(法令データ提供システム)
- 労働者災害補償保険特別支給金支給規則(法令データ提供システム)
- 労働基準行政関係リーフレット等一覧<労災補償関係>(厚生労働省)
- 労働者健康福祉機構
- 労災保険情報センター
- 労災保険のメリット制について(厚生労働省)