人工痴脳

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人工痴脳とは、「SCHOLAR」を祖とする「意味表現」に踏みこんだ自然言語による対話システムである。

概要[編集]

元祖「SCHOLAR」は「意味フレーム理論」に基いている。これに対して人工無能は、(一応は意味表現のひとつである)プロダクション・システムによる。これはELIZAを踏襲していて、「対話する」という目的に特化している。
これに対して「実用的な汎用の自然言語対話システムを構築するには、どのような意味表現データ構造が望ましいか」「実用的な知識ベースを構築するためのデータを蒐集するための自然言語対話システムはどのようなものであるか」といった点から生まれたのが人工痴脳である。
この意味では「語彙蒐集機能を持った IME」の一種ともいえ、プロトタイプは「おばあちゃんの知恵袋」に対する検索・応答・構築システムである「婆ちゃんリアリティ」[1]がある。

人間生活との関わり・利用[編集]

「そんなものが商売になるわけがないだろう」「儲かりそうだったらおいしそうなところだけ抓んで持ってっちゃおう」という果樹園を狙うカラスやハクビシンみたいな連中がわさわさ集まってきて食い荒らされたため、絶滅寸前まで追い込まれた。現在は ChatGPT の登場によって再注目されているが、害獣・害鳥・害虫のような果実主義者が大勢いるので油断がならない。つーてもブドウのベト病に効く硫酸ボルドー液は当初果物泥棒対策であったので、どっかで何かに効いているのかもしれない。

理論[編集]

とにかく、人間にとっての意味をどう扱うかの話であるため、「『データ構造としての意味表現』としては、どのようなもの望ましいか」という話になる。
人工無能の場合、そもそも「刺激 → 反応」というものがあるのだから、その総体として「智能(インテリジェンス)」があるという、わりと即物的な解釈がプロダクション・システムである。人工無能や、いわゆる「エキスパート・システム」などに用いられる。

フレーム表現[編集]

シソーラスの拡張系こそが知識フレームである」というアプローチである。とはいえシソーラスは樹形データを想定して構築されるものなので、「カモノハシやハリモグラは哺乳類だけど玉子を産む」みたいなややこしい話を扱おうとすると困ったことになる。

言語的アプローチ[編集]

「要するに、言語として表現できなかったら意味もクソもないじゃん。『私にとって意味があるかないか』は、応用上の意味がないだろ?」という話である。「だから自閉は ……」みたいな話はあるんだが、このあたりを深掘りするとややこしくなるので「自閉」の項を参照されたい。

外延主義[編集]

集合の定義には、内包的な定義と外延的な定義がある。
たとえば、「十以下の素数」には

  • {十以下の素数|10 以下の素数} (内包的な定義)
  • {十以下の素数|2, 3, 5, 7} (外延的な定義)

というふたつの定義があり、「十以下の素数」「八未満の素数」「七以下の素数」は「同じ意味」ということになる。
そうすると、「外延が同じであれば、それは同じ意味である」かどうかが問題になる。この立場だと、 「明けの明星は宵の明星である」は「金星は金星である」と同義となる。このとき、

  • 「彼は明けの明星は宵の明星が違う星だと思っていた」
  • 「彼は金星は金星が違う星だと思っていた」

の表現が同じ意味であるということになり、「彼は明けの明星は宵の明星が違う星だと思っていた」ならば、彼は「間違っていた」のではなく「正しかった」ことになる。そのため「外延主義は矛盾をひき起こすため、外延主義は間違っていた」と一度は結論された。
ところが内包主義は「意味は意味である」ことになり、「十以下の素数」と「八未満の素数」と「七以下の素数」は「別の意味」ということにな、「ライスカレーとカレーライスは別物だしサンライズとメロンパンは別物だ」という話になってしまう。こういった事情があるため、「日本語を話す人工痴脳は原理的に不可能である」と一度は結論づけられた。これに対して「じゃあ外延ってなんだ?」という話が浮上した。アドルフ・ヒトラーが「ユダヤ人問題の最終的解決」は「ユダヤ人を絶滅させる」ことで達成されるのか? そんな AI が存在したら厭だろう?
そこで、外延というものを、「意味(内包)を引っかけるための釘」と考えたらどうだろうか、という話が出た。つまり、ある釘に「夏目金之助」「夏目漱石」が引っ掛かっていて、夏目漱石が死ぬと「存命中の人物」という内包が外れる、という発想である。この発想はリレーショナル・データベース向きであり、「それは、どのアドレスに紐づけられているか?」という「紐づけ」の問題の話になって、基本的に人間のことなんか知ったこっちゃないコンピューター様は「紐づけの管理」だけをやっていればいいという話になった。ただし、これを理解できるソフトウェア開発者もいなければ金を出そうというスポンサーもいないので事態は動いていない。

脚注[編集]

  1. ニッポン放送の『KERAと犬子の四次元ラヂオテクノスケ』で紹介された。有楽町のホールを見る機会があって、隣の金魚鉢で「オールナイト・ニッポン」の収録をしていた。たしか「ちびまる子ちゃん」のさくらももこさんだったと思う。

関連作品[編集]

  • 佐藤史緒『ワン・ゼロ』
  • アーサー・C・クラーク/ピーター・ハイアムズ『2010』(映画)

関連項目[編集]