京都府立与謝の海支援学校

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京都府立与謝の海支援学校(きょうとふりつ よさのうみしえんがっこう)は、京都府与謝郡与謝野町(旧・岩滝町)にある特別支援学校。1969年4月に京都府立与謝の海養護学校として開校し、2011年4月に現校名に変更した。10年以上にわたる地域の住民運動により生まれた学校で[1]全障研運動の成果ともいわれる[2]。平成30年(2018年)度の生徒数は、小学部40名、中学部35名、高等部48名[3]

概要[編集]

1979年4月の養護学校義務化実施まで重度の知的障害や肢体不自由のある子どもは「就学猶予・免除」措置が取られ、学校に通うことが出来なかった。このような状況の中、与謝地方で知的障害児の施設をつくる運動が行われていたが、1962年に施設をつくる運動から養護学校をつくる運動へと転換を遂げた[1]。10年以上にわたる父母・教職員を中心とした地域ぐるみの運動の結果、1968年に革新府政蜷川虎三知事が養護学校建設を約束し、1969年4月に与謝の海支援学校が高等部別科として仮開校、1970年4月に小・中・高等部で構成される養護学校として本格開校した[4]。向日が丘養護学校(現・向日が丘支援学校)に次ぐ京都府立の2番目の養護学校、最初の知的障害養護学校として開校し[5]、その後の養護学校義務化実施や重い障害のある子どもの就学にも大きな影響を与えた[6]

『この子らの生命輝く日』(新日本新書、1974年)によると、当時の養護学校案内には次のような理念が書かれていた[7]

  • 「Ⅰ すべての子どもに等しく教育を保障する学校をつくり、重度重複障害児の教育を追求する。」
  • 「Ⅱ 子供にあった学校づくりを追求し、集団における教育労働についての教育、科学的認識を育てる教育を重視する。」
  • 「Ⅲ “子ども”・”父母”から学び、障害児者の権利と生活を守る運動を民主的地域づくりと共にすすめる。」

この基本理念にもとづき地域の高校との討論集会への参加、小学校との共同教育、卒業後の働く場を作る運動なども進められた[6]。これらの取り組みは「権利としての障害児教育」にもとづく学校・地域づくりのモデルとして注目を集めた[8]。また学校の理念や取り組みを通して次のような「発達の4原則」の思想が生み出された[9]

  • 「①発達は権利である。」
  • 「②発達は無限の可能性をもつ。」
  • 「③発達は要求から始まる。」
  • 「④発達には集団が必要である。」

関連人物[編集]

  • 青木嗣夫 - 学校の創設・運営の中心的役割を果たした。全国障害者問題研究会(全障研)結成時からの会員で[9]日本共産党[10]。教育学者の清水寛は青木について「その実践・思想には発達権保障の真髄があります」と評している[9]
  • 品川文雄 - 元全障研委員長。学生時代、青木嗣夫の著書を読んで感動し、与謝の海養護学校で実習をした[11]
  • 清水寛 - 発達保障論の立場にたつ教育学者。開設を求める運動のときから訪問し、与謝の海養護学校から学び続けたと語っている[9]
  • 杉田美代子 - 元与謝の海養護学校教諭。著書『三本足で踏むミシン――与謝の海養護学校から成人教室へ』(文理閣、1986年)など。
  • 橋本まり子 - 日本共産党所属の京丹後市議。元与謝の海養護学校教諭[12]

脚注[編集]

  1. a b 河添邦俊、清水寛、藤本文朗『この子らの生命輝く日――障害児に学校を』新日本出版社(新日本新書)、1974年、135-136頁
  2. 北村小夜『一緒がいいならなぜ分けた――特殊学級の中から』現代書館、1987年、210頁
  3. リンク先(学校教育目標)のPDFより
  4. 玉村公二彦、山崎由可里「京都府立与謝の海養護学校の開校と『障害児のとりで』」『和歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要』No.24、2014年
  5. 与謝の海養護学校50周年 カナリア倶楽部(2018年11月8日)
  6. a b 時代を読む23-京都・与謝の海の学校づくり 障害保健福祉研究情報システム
  7. 河添邦俊、清水寛、藤本文朗『この子らの生命輝く日――障害児に学校を』新日本出版社(新日本新書)、1974年、22頁
  8. 河合隆平『発達保障の道――歴史をつなぐ、社会をつくる』全国障害者問題研究会出版部、2018年、10頁
  9. a b c d 「編集部が迫る! 発達保障ってなんですか? 清水 寛さん(全障研顧問)その②」『みんなのねがい』2016年2月号
  10. 久米祐子「梅根悟の障害児教育論の相克」『教育基礎学研究』10号、2013年
  11. 品川文雄「発達保障のために学びたい本(第3回)青木嗣夫著『未来をひらく教育と福祉 : 地域に発達保障のネットワークを築く』」『障害者問題研究』42巻3号、2014年
  12. 市会議員の紹介 日本共産党丹後地区委員会

外部リンク[編集]

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