ピアノ騒音殺人事件
ピアノ騒音殺人事件(ピアノそうおんさつじんじけん)は、1974年(昭和49年)8月28日の朝に神奈川県平塚市で発生した殺人事件である。ピアノの騒音を理由として母子3人が殺害された。
概要[編集]
神奈川県平塚市の県営団地で、ピアノを弾いていた小学2年の少女と、その妹4歳を上の階の男性が刺殺。部屋に戻ってきた母親も刺殺した。
事件の背景[編集]
男性は以前、東京都内のアパートで暮らしていたとき、ステレオの音がうるさいと苦情を言われたことがある。それ以降は騒音に敏感な神経質な性格になった。
男性は、騒音を立てぬよう気を付けて生活していた。騒音に過敏な性格となっており、近所のよく吠える犬を殺す事件を起こしたことがあった。
後に移り住んだ平塚市の県営住宅では、階下の家族の生活音に悩まされるようになる。父親は日曜大工が趣味であったし、長女はピアノを習い始めた。
丁度この頃失職し、妻との離婚話も持ち上がった。これらのことから男は更に騒音に過敏になった。
度々苦情を言いに出向いたが効果がなく、この一家がわざと騒音を立てているように感じ、犯行に及んだのであった。
コンクリート住宅における騒音問題[編集]
コンクリート住宅の場合、木造住宅とは違い、音がコンクリートを伝わって上下左右方向に流れるという特性がある。そのため、騒音の発生源の特定が難しく、身に覚えのない騒音の苦情を受けるケースがあり、トラブルの元になっている。
ピアノの音は二階下にも伝わるとまでいわれており、壁に接触させて設置した場合、簡単な防音設備程度では、隣家および直下階には筒抜けになる。また、弱音装置を使用した場合、鍵盤を叩く際の振動が周囲の部屋に伝わり、音がする時よりもうるさいという苦情が出るケースもある。
防音性の高い床材や壁材を使用したマンションでも、施工不良から音が筒抜けになっているケースや、太鼓現象によって音が増幅されるケース、住人の防音性に対する期待が高すぎるために、些細な音が騒音として受け取られるケースなどがあるため、建材の防音性の高さがそのまま騒音対策にはならないところに難しさがある。
その後[編集]
その後バブル経済下での更なる人口密集化が進むと、ピアノだけでなく家電製品の作動音も問題になるようになった。代表的なものは洗濯機と掃除機である。特に前者は、二槽式から全自動への主流の変遷によって、夜間の運転が多くなった。この為1980年代末頃になると、家電メーカー各社はこぞって静音化に乗りだすが、その各社とも基準としたのは40ホン未満であり、官と民で隔たりがあることが浮き彫りになった。
この事件の教訓にもかかわらず、2010年に川崎一家殺害事件が起きる。この事件も、アパートの隣人の騒音が原因だったが、犯人はA同様騒音に過敏で、やはり死刑判決に対する控訴を自ら取り下げている。