バーニングとホールの定理
バーニングとホールの定理(ばーにんぐとほーるのていり)とは、正確にいうと「原始ピタゴラス数に関する、バーニングとホールと亀井の定理」である。お互いの成果を知らず、それぞれ独立にこの証明を行なったのがオランダのバーニングとアメリカのホール(および日本の亀井)であったために、このように命名された。日本人としてはちょっと残念な気がするので、個人的にはBHK定理と呼んでいる。
概要[編集]
話は中学生にも解る程度に簡単である。数学的帰納法を理解しているかどうかの話だ。
ここで木構造を考える。根は原始ピタゴラス数 {3, 4, 5} である(これを e としよう。なんとなく「根っこ」な感じがするからだ)。根は節でもあって、
- 節からは U, D, A という三本の枝が出て、その先もそれぞれが別の節になる。
こう考えると、eの次の節は三つあって、eU・eD・eA となる(一般的な数学の形式。「海軍式」というeを横ベクトルにしておいて、向かって左から行列を掛けるスタイルもある)。で、これもまた原始ピタゴラス数なので、この木には「無数の原始ピタゴラス数がそれぞれの節に対応して存在する」ということが分かっている。ここまでが前提だ。
ある原始ピタゴラス数があるとして、それがどの節に相当するかを考えると、「ただ一箇所あって、それは必ず存在する」というのが BHK 定理だ。
ただし、細矢治夫によれば「この定理が正しいとしても二つの原始ピタゴラス数の共通の節を見つける簡単な方法がなかった」のが泣きどころだったという。なぜかというと、普通に数学をやっているひとは、「{x, y, z}という原始ピタゴラス数」を「横に並んでいる」とみなさず、「T{x, y, z}というという転置行列(この場合は横ベクトルだから縦ベクトルにしてから)向かって右から変換行列 U, D, A をそれぞれ掛ける」という形で証明していたからである、
素朴な証明[編集]
現在、小学校・中学校、高校の教育指導要綱には行列は入っていない。だから大学に入ってからでないと証明自体が理解できない。ましてや「泣きどころ」である逆問題の解決なんかに手を出そうというのはよっぽどのバカである[1]。
さて。原始ピタゴラス数の生成公式は変数を二つしか持っていない。つまり数は三つあっても自由度は2だ。つまり分数みたいなものを考えればいい。
で、二つある公式の条件は
- 互いに素であり偶奇の異なる m, n (ただし m < n)
- 互いに素である二つの奇数 p, q (ただし p < q)
なので、分数 n/m も q/p ほ既約分数になる。この既約分数をいじってやると、前者は 1/2、後者は1/3 に落ちてゆく。
なんか偉そうなことを書いているように見えろが、いまから三千八百年前の古代バビロニアの数学粘土板であるプリンプトン322とYBC7289に書いてあった値はコレである。YBC7289に書いてあった値の計算法を示したのは数学家ピエール・ド・フェルマー(本職は裁判官)だから、こちらは三千四百遅れの再発見である。
「数学なんか日常生活では何の役にも立たない」とボヤく方々へ。役に立ちそうなものは、もうあらかた掘りつくされちゃって、数学教師のうちの何割かは「日常生活で実際の役に立つ数学」は正直なところ馬鹿にされております。これはNHKや朝日を筆頭としたマスゴミの影響が大であるので、用心されたい。
参考文献[編集]
- 細矢治夫『三角形の七不思議 ― 単純だけど、奥が深い』
- 細矢治夫『四角形の七不思議 ― いちばん身近な図形の深遠な世界』