ハングル
ハングルとは、韓国語・朝鮮語を筆記するのに用いる文字である。
概要[編集]
韓国語・朝鮮語の音韻を記載するための表音文字である。朝鮮4代世宗が解説書「訓民正音」によって創製した。
従来、朝鮮半島では漢字が用いられていたが、漢字は中国語を筆記するための文字であり、朝鮮半島古来の単語には対応しない。その様な背景もあり、発音に即した文字、即ち表音文字を作ることで、容易に韓国語を書ける様にしたのがハングルである。
文字の構造[編集]
現在使用されているハングルは、合計11,172文字である。文字数は多いが、子音を表す14パーツ、母音を表す10パーツの組み合わせであり、覚えやすさはアルファベットと大差無い。
日本語のひらがな・カタカナと同様、一つの文字で、一つの音節を表す。韓国語では漢字の音読みが全て一音節なので(中国語・ベトナム語も同様)、漢字の音読みをハングル一文字で表すことができる。ハングル文字は、次の3つの部分に分かれる。
- 子音 - 文字の上部または左。漢字に例えると「へん」または「かんむり」に近い。
- 母音 - 文字の下部または右。パッチムがある場合はその上になる。漢字に例えると「つくり」または「あし」に近い。
- パッチム - 文字の下部。パッチムが無い文字もある。漢字に例えると「あし」に近い。
例えば、「엔」という文字は「エン」と読むが、左上の「ㅇ」が子音、右上の「ㅔ」が母音、下の「ㄴ」がパッチムである。
子音[編集]
音節の頭の子音。14個のパーツを組み合わせ、全部で19種類が存在する。以下に一覧と、韓国語での読みを示す(実際の文字順ではなく、あいうえお順に近くしている)。なお、ヤ行とワ行の子音(半母音)は母音字で表す。
文字 | 発音(母音が「ア」の時) | 備考 |
---|---|---|
ㅇ | ア | 子音無し |
ㄱ | カ、ガ | カとガの中間で、語頭ではカ、語中ではガに近い |
ㄲ | カ | 息を出さずに発音(濃音) |
ㅋ | カ | 息を強く吐く(激音) |
ㅅ | サ | 普通の「サ」 |
ㅆ | サ | 息を出さずに発音(濃音) |
ㅈ | チャ、ジャ | チャとジャの中間で、語頭ではチャ、語中ではジャに近い |
ㅉ | チャ | 息を出さずに発音(濃音) |
ㅊ | チャ | 息を強く吐く(激音) |
ㄷ | タ、ダ | タとダの中間で、語頭ではタ、語中ではダに近い |
ㄸ | タ | 息を出さずに発音(濃音) |
ㅌ | タ | 息を強く吐く(激音) |
ㄴ | ナ | |
ㅎ | ハ | |
ㅂ | パ、バ | パとバの中間で、語頭ではパ、語中ではバに近い |
ㅃ | パ | 息を出さずに発音(濃音) |
ㅍ | パ | 息を強く吐く(激音) |
ㅁ | マ | |
ㄹ | ラ |
母音[編集]
10個のパーツを組み合わせ、全部で21種類が存在する。以下に一覧と、韓国語での読みを示す(実際の文字順ではなく、字形順で書いている)。
文字 | 位置 | 発音 | 備考 |
---|---|---|---|
ㅡ | 下 | ウ | 「イ」の口の形で「ウ」と発音 |
ㅗ | 下 | オ | 普通の「オ」 |
ㅛ | 下 | ヨ | 普通の「ヨ」 |
ㅜ | 下 | ウ | 普通の「ウ」 |
ㅠ | 下 | ユ | 普通の「ユ」 |
ㅣ | 右 | イ | |
ㅓ | 右 | オ | 「ア」の口の形で「オ」と発音 |
ㅕ | 右 | ヨ | 「ヤ」の口の形で「ヨ」と発音 |
ㅏ | 右 | ア | |
ㅑ | 右 | ヤ |
文字 | 位置 | 発音 | 備考 |
---|---|---|---|
ㅔ | 右 | エ | 普通の「エ」 |
ㅖ | 右 | イェ | 普通の「イェ」 |
ㅐ | 右 | エ | やや「ア」に近い「エ」 |
ㅒ | 右 | イェ | やや「ヤ」に近い「イェ」 |
ㅢ | 下・右 | ウイ | |
ㅚ | 下・右 | ォエ | 「オ」の口の形で「エ」と発音 |
ㅘ | 下・右 | ワ | |
ㅙ | 下・右 | ウェ | やや「ワ」に近い「ウェ」 |
ㅟ | 下・右 | ウィ | |
ㅝ | 下・右 | ウォ | |
ㅞ | 下・右 | ウェ | 普通の「ウェ」 |
パッチム[編集]
音節末の子音。母音の直後に、単独で発音される子音で、つかないケースも多い。全部で27種類がある。発音は頭子音とほぼ共通だが、違うものもある。また、ㄸ、ㅃ、ㅉはパッチムに用いられない。以下に、子音と共通の16種類のパッチムを示す。
文字 | 発音 | 備考 |
---|---|---|
ㅇ | ング | 頭子音の時と異なるので注意 |
ㄱ | ク | |
ㄲ | ク | |
ㅋ | ク | |
ㅅ | ッ | 頭子音の時と異なるので注意 |
ㅆ | ッ | 頭子音の時と異なるので注意 |
ㅈ | ッ | 頭子音の時と異なるので注意 |
ㅊ | ッ | 頭子音の時と異なるので注意 |
ㄷ | ッ | |
ㅌ | ッ | |
ㄴ | ン | |
ㅎ | ッ | 頭子音の時と異なるので注意 |
ㅂ | プ | |
ㅍ | プ | |
ㅁ | ム | |
ㄹ | ル |
子音字を並べて書くパッチムが、11種類存在する。通常は2パーツのうち1個分しか発音しないが、後に他の言葉が続いた時などに2文字分の発音が出現する。
文字 | 発音 | 備考 |
---|---|---|
ㄳ | ク | |
ㄵ | ン | |
ㄶ | ン | |
ㅄ | プ | |
ㄺ | ク | |
ㄽ | ル | |
ㄾ | ル | |
ㅀ | ル | |
ㄼ | ル | |
ㄿ | プ | |
ㄻ | ム |
例[編集]
- 엔페디아 - 「エンペディア」と読む。
漢字との対応[編集]
ハングルの読み方を知っていると、漢語由来の韓国語はかなりの割合で読むことができる。漢字の音読みは、日本語(特に歴史的仮名遣い)と韓国語の間でかなり規則正しく対応しているため、その規則を知っていると読めることが多い。例えば、대한민국は「テハンミングク」と読むが、日本語だと대が「たい」、한が「かん」、민が「みん」か「びん」、국が「くく(こく?)」に対応する確率が高いことを知っていると、なんとなく「たいかんみんこく」と読めてしまう。
ハングルから漢字を推定する方法については、例えばこちらのサイトに記されている。