ドグラ・マグラ
『ドグラ・マグラ』は、夢野久作の小説作品。
ジャンルは幻想文学、ホラー、変格ミステリ。『黒死館殺人事件』『虚無への供物』と並び、「三大奇書」(日本推理小説三大奇書)と称される。
タイトル[編集]
- 謎めいたタイトル「ドグラ・マグラ」という言葉は、九州地方の方言で「切支丹伴天連」(キリシタンバテレン)を意味するものと作中で解説されている。詳しいことは明らかになっていない部分が多い。
- 『死霊』で有名な埴谷雄高氏は、以下のようなコメントを残している。
それからこの「ドグラ・マグラ」という言葉については本の中にちゃんと説明が出ていて、九州にはああいう言葉があるらしいけども、どうもほんとうにそうなのかという気がちょっとするんですけどね。(・・・中略・・・)そういうアナグラムというのが向うにあるらしいけど、「ドグラ・マグラ」にもなんとなくアナグラムみたいなものがあるんじゃないかという気がするんですがね。それでぼくも考えたが、解いてみると、どうもラ・グラン・ドグマ(大ドグマ)というふうに思えるわけですね。ただしドグマというのは調べてみたら男性名詞なんですね。だからラ・グラン・ドグマとなるんじゃちょっと変なんですけれど、しかしドグマがAで終わるから無理矢理ラにしてもいいとこじつけられる。ぼくの感じではなんとなくそういう風に解けちゃったんですけどね。アルセーヌ・ルパン式に解けば(笑)。
— 三一書房版『夢野久作全集』第6巻・巻末解説対談から引用
豆解説、という名の独自研究[編集]
作中の「胎児の夢」が、ドイツの生物学者エルンスト・ヘッケルの「系統発生説」に類似していることはつとに有名である。ヘッケルが過激な進歩史観に基づいて、(進化の最終形態たる)人間を最上のものと考えた(進化=進歩)のに比べると、夢野久作は、進化した結果の人間をむしろ悲哀に満ちて残酷なもの(進化≠進歩)と捉えている節がある。その思想内容は類似しているように見えて実は真逆であり、夢野のほうが思想史的に一歩進んでいる。夢野の文明批判は、ドグラ・マグラ全体の筋立てや、アンポンタンポカン君の大演説、彼のその他の作品などを見れば、随所に明らかであろう。
影響を受けた作品[編集]
『ドグラ・マグラ』は多くの作品に影響を与えている。以下は、影響を受けている(と思われる)作品の一覧。
- 『虚無への供物』(中井英夫の小説。『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』を強く意識して書かれている。)
- 『匣の中の失楽』(竹本健治の小説。三大奇書を強く意識して書かれている。)
- 『奇偶』(山口雅也の小説。三大奇書+『匣の中の失楽』(「四大奇書」と呼ばれる事もある)を強く意識して書かれている。)
- 『QJKJQ』 (佐藤究の江戸川乱歩賞受賞作。作者は夢野久作のファンであり、賞の選者である有栖川有栖は「平成の『ドグラ・マグラ』である」と評している。断章「投資家のための殺人人類学」の始まりと終わりに挿入されている「……ゴオォゥン――ゴオォゥン……」という空調の音からも、その影響が伺える。)
- 『きみとぼくの壊れた世界』(西尾維新の小説。)
- 『レジンキャストミルク』(藤原祐・椋本夏夜の小説。)
- 『都会のトム&ソーヤ』(はやみねかおるの小説。)
- 『ジサツのための101の方法』(公爵のアダルトゲーム。)
- 『終ノ空』(ケロQのアダルトゲーム。『ジサツのための101の方法』・『終ノ空』は、『さよならを教えて』と並べて「三大電波ゲーム」と呼ばれることもあるとかないとか。)
- 『素晴らしき日々 〜不連続存在〜』(同じくケロQのアダルトゲーム。)
- 『School Days』(オーバーフローのアダルトゲーム。狂気的ルートに進んでいる時は、学校の国語の授業が「ドグラ・マグラ」の読み合わせになっている。)
- 『マジンガーZ』(永井豪の漫画。)
- 『レベルE』(冨樫義博の漫画。「ドグラ星」と「マグラ星」が舞台。「夢野九四郎」なる人物も登場。)
- 『魔神冒険譚ランプ・ランプ』(泉藤進・小畑健の漫画。ラスボスの名前になっている。)
- 『(有) 椎名百貨店』『GS美神 極楽大作戦!!』(ともに椎名高志の漫画。)
- 『The Soul Taker 〜魂狩〜』(竜の子プロダクションのアニメ。)
- 『ダブルスポイラー 〜 東方文花帖』(同人シューティングゲーム。「胎児の夢」というスペルカードは、ドグラ・マグラから着想を得て命名されたと思われる。)
- 『ファイナルファンタジーIV』(RPGゲーム。魔法使いのメーガス三姉妹の名前が「ドグ」「マグ」「ラグ」。ファミ通掲載の設定情報によれば語感がよいから参考にしただけで、それ以上の深い意味はないという。)
- 『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』(倉阪鬼一郎の推理小説。「土蔵まぐろ」なる架空のお店が登場する。)
- 『あるYの悲劇』(有栖川有栖の推理小説。「ユメノ・ドグラ・マグロ」なる音楽バンドが登場する。)
- 『ドグラQ』(制作進行中のアダルトゲーム。発売日未定。)
- 『真剣で私に恋しなさい!』(みなとそふとのアダルトゲーム。パロディネタ程度でそこまで深い関連はない。)
- 『機神飛翔デモンベイン』(ニトロプラスのPCゲーム。パロディネタ程度でそこまで深い関連はない・・・・・と思う。内容ちゃんと確認してないから、よく分からないけど(汗)。知ってる人情報よろ。)
ネタ[編集]
ドグラ・マグラ関連でいえば、Yahoo!知恵袋のこの名回答もけっこう有名である。
アニメ[編集]
2012年にはアニメDVDが制作された。CGを使用しており、設定が近未来風でSFチックに改変されている。
- 監督: 奇志戒聖
- 声の出演 : 小原雅一、松本保典、西田紘二、上村友二、儀武ゆう子
評判はあまり宜しくない。。。
関連書籍[編集]
- 漫画
- 『ドグラ・マグラ』(まんがで読破シリーズ)ISBN 978-4-7816-0012-3
- 解説本
- 『ドグラマグラ幻戯』編・東雅夫 ISBN 978-4-0590-0236-9
関連項目[編集]
関連リンク[編集]
- 青空文庫 - ネット上で全文を読みたい奇特な方へ...。
- やる夫系AA紙芝居 ドグラ・マグラ 第一話 - アスキーアートでドグラマグラ全編を表現するという超力作。